屈託くつたく)” の例文
村落むらはしからはしまでみなどう一の仕事しごと屈託くつたくしてるのだから季節きせつ假令たとひ自分じぶんわすれたとしてもまつたわすることの出來できるものではない。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
疲れては乘り、屈託くつたくしては歩き、十二里の長丁場を樂々と征服して、藤澤へあと五六町といふところまで來たのは、第一日の申刻なゝつ過ぎ——。
二十五といへばやや婚期遅れの方だが、しかし清潔に澄んだ瞳には屈託くつたくのない若さがたたへられてゐて
木の都 (新字旧仮名) / 織田作之助(著)
昨日きのふ晩方ばんがた受取うけとつてから以來いらいこれ跡方あとかたもなしにかたちすのに屈託くつたくして、昨夜ゆうべ一目ひとめねむりません。
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
れだから彼等かれら婚姻こんいん當日たうじつにも仕事しごと割合わりあひにしてはあまりに多人數たにんずぎるので、ひと仕事しごとあつまつては屈託くつたくない容子ようすをして饒舌しやべるのであつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
皓齒しらはえて、口許くちもと婀娜あだたる微笑ほゝゑみ。……かないとこゝろまると、さらりと屈託くつたくけたさま
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「解つたか、八。あの女は馬鹿か豪傑か、でなければ腹の中に容易でない屈託くつたくがあるんだ。それも並大抵のことではない、女が願事が叶ふといふ禁呪まじなひのおコンコン樣を捨てゝ行くのは容易ぢやない」
かれしばらすき煙草たばこ屈託くつたくしてたがやうやあたゝかけたので、まれ生存せいぞんして往年わうねん朋輩ほうばい近所きんじよへの義理ぎりかた/″\かほつもりそとた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
やまには木樵唄きこりうたみづには船唄ふなうた驛路うまやぢには馬子まごうた渠等かれらはこれをもつこゝろなぐさめ、らうやすめ、おのわすれて屈託くつたくなくそのげふふくするので、あたか時計とけいうごごとにセコンドがるやうなものであらう。
三尺角 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
その癖平次は、一向に屈託くつたくのない顏をしてゐるのです。
もし/\と、二聲ふたこゑ三聲みこゑんでたが、ざとい老人らうじん寐入ねいりばな、けて、つみ屈託くつたくも、やままちなんにもないから、ゆきしづまりかへつて一層いつそう寐心ねごころささうに、いびききこえずひツそりしてる。
雪の翼 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
ガラツ八はあまりにも屈託くつたくのない顏です。