天文てんもん)” の例文
この頃、天文てんもんを観ていると、太陰畢星たいいんひっせいに濃密な雨気がある。おそらくここ十年来の大雨がこの月中にあるのではないかと考えられる。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
童子どうじはいつものとおり一間ひとまはいって、天文てんもんほんをしきりにんでいますと、すぐまえにわかきの木に、からすが二、かあかあいってんでました。
葛の葉狐 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
法師丸の元服は天文てんもん二十一年壬子じんし正月十一日、彼が十六歳の春であった。当時法師丸はなお牡鹿山の城にあって一閑斎いっかんさいの小姓を勤めていたのである。
慶滋保胤かものやすたね賀茂忠行かものただゆきの第二子として生れた。兄の保憲やすのりは累代の家の業をいで、陰陽博士おんようはかせ天文てんもん博士となり、賀茂うじそうとして、其系図に輝いている。
連環記 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
川中島かわなかじま合戦」といわれる両家のあらそいは天文てんもん二十二年(一五五三)から永禄えいろく七年(一五六四)まで、十年余日にわたってくりかえされたものであるが
城を守る者 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
はじめ朝日島あさひじまづるとき櫻木大佐さくらぎたいさ天文てんもん觀測くわんそくして、多分たぶんこの三四あひだは、風位ふうゐ激變げきへんからうとはれたが、てん仕業しわざほど豫知よちがたいものはない。
寛永かんえい十五年正月、島原しまばららんが片づき、つづいて南蛮鎖国令が出て後、天文てんもん十八年以来百余年の長きにわたり
天文てんもん十八年西班牙スペイン僧ザビエル、この者が日本へ渡来して、吉利支丹きりしたん宗教を拡めようとした。
南蛮秘話森右近丸 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
天文てんもん十六年の事、原美濃守がこの関所を千貫に積って知行ちぎょうしている、もし武田勝頼が天目山で討死をせずに東へ下ったものとすれば、この峠が第一の要害になったのであろうけれど
あかりは禁物だから、逢引に天文てんもんほど結構なものはありませんよ」
天文てんもん十五年のころ、武田信玄たけだしんげんの軍勢が、上杉憲政うえすぎのりまさを攻めて上野乱入こうずけらんにゅうにかかったとき、碓氷峠うすいとうげの陣中でとらえたのがこのわしであった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
元来薬師寺の家と筑摩の家とは数年以来矛盾に及んで双方の間に合戦かっせんが止む時なく、殊に天文てんもん十八年には弾正政高が大軍を率いて牡鹿山の城を囲み
阿倍あべいえむかしからつたわって、だれももののなかった天文てんもん数学すうがくものから、うらないや医学いがくほんまで、なんということなしにみなんでしまって、もう十三のとしには
葛の葉狐 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
そのとしうるう九月、たま/\天文てんもんの変ありて、みことのりを下し直言ちょくげんを求められにければ、山西さんせい葉居升しょうきょしょうというもの、上書して第一には分封のはなはおごれること、第二には刑を用いるはなはしげきこと
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
しかし一層大きいなら、日本の話より五大州の話、ないしは天文てんもん地文ちもんの話、地獄極楽の話などの方が、効能がありはしませんかな。ただし結局そういう話は、面白くないことも確かでござる。
剣侠受難 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
天文てんもん永禄えいろくの世頃から見れば、ずいぶんって来てはいるが、なお少し山間僻地さんかんへきちに入れば、さながら百鬼夜行のごときものと随所に出会うのが常であった。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
仲麻呂なかまろだいからつたえた天文てんもん数学すうがくのむずかしい書物しょもつだけはいえのこっていますが、だれもそれをむものがないので、もうなんねんというあいだふるはこの中にしまいまれたまま
葛の葉狐 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
天文てんもん年中種子たねしまから鉄砲が伝わった時分に、やはり和蘭おらんだ人か葡萄牙ぽるとがる人が輸入した西洋式の武具であって、あたかも桃の実のように真ん中で割れて、その割れ目が高く盛り上り
イヤ、よくよく天文てんもんを観測して、雨気近しと見さだめてから、雨乞い祭りを触れ出すがいい。さすれば、人心をつかむ妙機となろう。兵法とは、そういうものだ。兵法を
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そして、それからの一冬を、木綿布子ぬのこ一枚の彼が、寒空に針など売って、何処をどう彷徨さまよった果てかは知れないが——年も明けて、翌天文てんもんの二十二年、桃の花のさかり頃。
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
折も折、宋朝廷の天文てんもん太史院は、都下の謡言ようげんや北斗を占案うらなって、諸州へ乱のきざしを警報してきたところではあり、この事実なので、奉行蔡九さいきゅうは、たちどころに決断をくだし
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
天文てんもん四年の生れとあるから、彼は今年まだ二十九歳、白面の一軍学書生でしかない。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
何せい、鉄砲が渡来したのも、天文てんもん十二年、つい七、八年前のことだからな。
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)