-
トップ
>
-
團子屋
>
-
だんごや
はま
鍋、あをやぎの
時節でなし、
鰌汁は
可恐しい、せい/″\
門前あたりの
蕎麥屋か、
境内の
團子屋で、
雜煮のぬきで
罎ごと
正宗の
燗であらう。
間拔に
背のたかい
大人のやうな
面をして
居る
團子屋の
頓馬が、
頭もあるものか
尻尾だ
尻尾だ、
豚の
尻尾だなんて
惡口を
言つたとさ、
己らあ
其時千
束樣へねり
込んで
居たもんだから
「
家内安全、まめ、そくさい、
商賣繁昌、……だんご
大切なら
五大力だ。」と、あらう
事か、
團子屋の
老爺さまが、
今時取つて
嵌めた
洒落を
言ふ。
連れ
立ちて
團子屋の
前を
過ぎるに
頓馬は
店より
聲をかけてお
中が
宜しう
御座いますと
仰山な
言葉を
聞くより
美登利は
泣きたいやうな
顏つきして、
正太さん一
處に
來ては
嫌やだよと
ついて
曲ると、
眞晝間の
幕を
衝と
落した、
舞臺横手のやうな、ずらりと
店つきの
長い、
廣い
平屋が、
名代の
團子屋。
但し
御酒肴とも
油障子に
記してある。
正太は
此日日がけの
集めを
休ませ
貰ひて、三五
郎が
大頭の
店を
見舞ふやら、
團子屋の
背高が
愛想氣のない
汁粉やを
音づれて、
何うだ
儲けがあるかえと
言へば、
正さんお
前好い
處へ
來た
親と
親との
許嫁でも、
十年近く
雙方不沙汰と
成ると、
一寸樣子が
分り
兼る。
況や
叔父と
甥とで
腰掛けた
團子屋であるから、
本郷に
住んで
藤村の
買物をするやうな
譯にはゆかぬ。