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却々
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なかなか
ふりがな文庫
“
却々
(
なかなか
)” の例文
第四人称の問題は別として、らしい、とか、何々のやうであつた、やうに見えた、といふ言ひ方は、
却々
(
なかなか
)
面白い手段ではあるまいか。
文章の一形式
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
「ハハ……、あんたも
却々
(
なかなか
)
隅へ置けない。いや、あんたが先の人物さえ保証して下さりゃ、娘をさし上げまいものでもありませんよ」
黒手組
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
「併し一概に山賊などと云っても中には
却々
(
なかなか
)
い儀深い奴もいるものですよ。」と医師は
周章
(
あわて
)
て眼を
外
(
そ
)
らし
乍
(
なが
)
らそんなことを云い出した。
薔薇の女
(新字新仮名)
/
渡辺温
(著)
薬鑵に水を入れかへたり、きふすを洗つたり、其の他、一々は云はないけれど、男一人でゐるとなると、
却々
(
なかなか
)
忙しいものである。
散歩生活
(新字旧仮名)
/
中原中也
(著)
『いや、今も雀部さんのお話だつたが、食ひたければ食ひ、言ひたければ言ふといふ事は、これで
却々
(
なかなか
)
出来ない事でしてねえ。』
道
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
▼ もっと見る
鷲尾はいつの間にかさっきの明るさを失い、また軽くも返事出来なくなっている自分を発見したが、
却々
(
なかなか
)
簡単にナオらなかった。
冬枯れ
(新字新仮名)
/
徳永直
(著)
画は
却々
(
なかなか
)
うまい。
優
(
ゆう
)
に初子さんの小説と
対峙
(
たいじ
)
するに足るくらいだ。——だから、辰子さん。僕が
好
(
い
)
い事を教えて上げましょう。
路上
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
わたくしは、きれいな新藁に腰を下して唐の芋を食べ進んでいますと、それは
却々
(
なかなか
)
おいしくって、大概のことを忘れさせます。
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
初めて会った人の人物評も
却々
(
なかなか
)
うがった洞察をし、いつの間に何を見ていたかを、よく私に振り返って考えさせたくらいだ。
我が愛する詩人の伝記
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
おたあちやんのお母さんは『見舞にいつておいで』と云つても、おたあちやんは、いつも気のない返事をして、
却々
(
なかなか
)
行きさうにもしませんでした。
虹の橋
(新字旧仮名)
/
野口雨情
(著)
これではつまらぬ、今まで自分の
抱
(
いだ
)
いていた、志望が達せられぬことになるから、是非
廃
(
よ
)
そうという考を起したのであるが、
却々
(
なかなか
)
親が承知して
呉
(
く
)
れぬ。
私の経過した学生時代
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
当時としては一回一円は
却々
(
なかなか
)
よい相場であったらしい、大抵新聞小説などは赤本式に売り飛ばしてしまったらしい
生前身後の事
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
午後になってからも、
却々
(
なかなか
)
来る様子はなかった。瑠璃子は絶えずいら/\しながら厭な呪わしい来客を待っていた。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
けれども、一週間の他の三日、火、水、土の昼間は、R夫人も
却々
(
なかなか
)
多忙で家事の多くを弁じなければなりません。
男女交際より家庭生活へ
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
満眸
(
まんぼう
)
の秋色
蕭条
(
しょうじょう
)
として
却々
(
なかなか
)
春のきおいに似るべくも無いが、シカシさびた
眺望
(
ながめ
)
で、また一種の趣味が有る。
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
絵も
却々
(
なかなか
)
上手で、私の処にある下絵の中でも良いのは大抵写して行かれました。けれどもかれこれ半年余りかよって来たと思うとパッタリ見えなくなりました。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
そは君が想像の自由にまかせて、簾のこなたに見えざらんこそ
却々
(
なかなか
)
に興は深かり……と誰やらが口調をそのまま、われらと同じ趣の人々に心づけまいらせておく。
残されたる江戸
(新字新仮名)
/
柴田流星
(著)
汚い素袷、春と言っても、日が暮れかかると
却々
(
なかなか
)
の寒さですが、何も彼も叩き売られた後で、今の妙子には、これ一枚しか着物と言うものが残って居なかったのでしょう。
新奇談クラブ:02 第二夜 匂う踊り子
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
目前の利に
欺
(
あざむ
)
かれて、
却々
(
なかなか
)
売り叩こうともせず、もっともっと値の出るのを待っているらしい。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
其他
(
そのた
)
の所員たちも多勢駈けつけたが、ミチ子ばかりはどうしたものか
却々
(
なかなか
)
影をみせなかった。
階段
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
其割前を貰えるという事だけが、
死水
(
しにみず
)
同様、
末期
(
まつご
)
の望みであるそうな、アワレと云うも
却々
(
なかなか
)
にオロカなりける次第なりけり、近頃の不経済学全集も亦其轍を同うするに到れば
一円本流行の害毒と其裏面談
(新字新仮名)
/
宮武外骨
(著)
だから其中から、似寄つたものをとり出して、一つの見当をつける事は、
却々
(
なかなか
)
困難であるが、先大体、たまとたましひとは、違ふものだと言ふ見当だけをつけて、此話を進めたい。
霊魂の話
(新字旧仮名)
/
折口信夫
(著)
三十六
(
さとむ
)
は
却々
(
なかなか
)
挫
(
くじ
)
けはしないぞ、見ろ。明日の日に栄えあれ。(二五八八、一〇、一三)
青べか日記:――吾が生活 し・さ
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
秋には近いがまだ
却々
(
なかなか
)
に暑かった。奥二階で駒越左内奥野俊良の二人と、朝日川の
鮎
(
あゆ
)
を
肴
(
さかな
)
に散々酒を過した金三郎。独り離れの隠居所にと戻った。蚊いぶしの煙が早や衰えていた。
備前天一坊
(新字新仮名)
/
江見水蔭
(著)
右の趣を
石出帯刀
(
いしでたてわき
)
まで申し出で、
聞済
(
ききず
)
みになりて
草鞋
(
わらじ
)
を下げ渡されたが、その翌日亭主は斬罪に行なわれ、女房は重追放で
落着
(
らくちゃく
)
したそうだ、最も牢内には
却々
(
なかなか
)
お
化種
(
ばけだね
)
は、豊富であると
枯尾花
(新字新仮名)
/
関根黙庵
(著)
……好きな人が出来たら直ぐにお父さんの処に伴れて来るから、その時……むづかしい顔なんてしないで呉れ! なんていふほどの勢ひで……どうも、
却々
(
なかなか
)
それに就いては僕も戦々兢々の……
風媒結婚
(新字旧仮名)
/
牧野信一
(著)
すると鶴子様は
却々
(
なかなか
)
美人になつて居る。
死線を越えて:01 死線を越えて
(新字旧仮名)
/
賀川豊彦
(著)
弁当売りは
却々
(
なかなか
)
やって来ない。
四つの都
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
「お前さん今度が初めてだね。これで一通りの道具はちゃアんと揃ってるもんだろう。これからこの室が長い間のお前さんのアパアトになるわけさ。だから、自分でキチン/\と
綺麗
(
きれい
)
にしておいた方がいゝよ。そしたら
却々
(
なかなか
)
愛着が出るもんだ。」
独房
(新字新仮名)
/
小林多喜二
(著)
第四人称の問題は別として、らしい、とか、何々のようであった、ように見えた、という言い方は、
却々
(
なかなか
)
面白い手段ではあるまいか。
文章の一形式
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
却々
(
なかなか
)
大きな犬らしい足跡だから、人間が四つん這いになって、犬の足を
模
(
も
)
した
型
(
かた
)
で、こんな跡をつけたと考えることは不可能ではない。
何者
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
そこで、ピカピカに爪先を光らして揃えてあった編上靴を穿きかけたのですが、どうしたものか
却々
(
なかなか
)
手間どれるのです。
四月馬鹿
(新字新仮名)
/
渡辺温
(著)
いまもそれが頭脳の大半を占領していて
却々
(
なかなか
)
撃退出来ない。昨夜の夢には昼間きた刑事の顔も加わっていて、ひどく
惨
(
みじ
)
めな敗北的な
己
(
おの
)
れの姿だった——
冬枯れ
(新字新仮名)
/
徳永直
(著)
火に翳した羽織からは湯気が立つてゐる。思つたよりは濡れてゐると見えて
却々
(
なかなか
)
乾せない。
好
(
い
)
い事にして私は三十分の余も内儀相手にお
喋舌
(
しやべり
)
をしてゐた。
札幌
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
しかし、病が癒らないものだという仮定の下に於ては
却々
(
なかなか
)
簡単に少女を納得させる「人間がどうしても生きなければならぬ」理由なぞ、考え出せなかった。
勝ずば
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
代議士の妾宅であつたその家は、
却々
(
なかなか
)
立派であつたので、私は『結構なお住ひです』なぞと、柄にもないことを云つて、又あらたな後悔をするのであつた。
亡弟
(新字旧仮名)
/
中原中也
(著)
が、此女性が、信一郎の心の裡に起した動揺は、お経の声などに
依
(
よ
)
って
却々
(
なかなか
)
静まりそうにも見えなかった。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
真夏真昼の炎天を、どこやらに用達しての帰るさ、路ばたの柳蔭などに荷おろして客を待つ
心太
(
ところてん
)
やの姿を見る時、江戸ッ児にはそを見遁がして通ること
却々
(
なかなか
)
に困難だ。
残されたる江戸
(新字新仮名)
/
柴田流星
(著)
「絵は画こうとしたって
却々
(
なかなか
)
、画けるものではないよ。君から見ると似ているかどうかね。」
蜜のあわれ
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
茶店に休んで、青竹の欄干に
凭
(
よ
)
りながら、紺地に金泥で唐詩を
摺
(
す
)
った扇子で、海からの風の他に
懐中
(
ふところ
)
へ風を
扇
(
あお
)
ぎ入れるのは、
月代
(
さかやき
)
の
痕
(
あと
)
の青い、色の白い、若殿風。
却々
(
なかなか
)
の美男子であった。
悪因縁の怨
(新字新仮名)
/
江見水蔭
(著)
召捕の場の刀を抜かんとして抜き得ざる焦燥の形などは
却々
(
なかなか
)
うまいものであった、ただ芸風に誇張と臭味とが多少つき纏っていることは
素人
(
しろうと
)
出身として無理もないと思われる位のものであった
生前身後の事
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
雑魚
(
ざこ
)
一
疋
(
ぴき
)
懸
(
かか
)
らない、万一や網でも損じてはいぬかと、調べてみたがそうでも無い、
只管
(
ひたすら
)
不思議に思って
水面
(
みなも
)
を
見詰
(
みつめ
)
ていると、何やら大きな魚がドサリと網へ
引掛
(
ひっかか
)
った、その
響
(
ひびき
)
は
却々
(
なかなか
)
尋常で
無
(
なか
)
った
枯尾花
(新字新仮名)
/
関根黙庵
(著)
「いえ、
却々
(
なかなか
)
持ちまして、手前は
後生
(
ごしょう
)
が恐ろしゅうございます。」
邪宗門
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
野性の人だが耽溺派とは趣の違ふ現実家、
却々
(
なかなか
)
もつて勝負事に打ち興じて我を忘れる人物ではない。このことは秀吉がよく知つてゐる。
二流の人
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
まして夜半の一時というのですから、無理もありませんがM医院ではいくら戸を叩いても、何のかんのと云って
却々
(
なかなか
)
開けて呉れなかったらしいのです。
赤い部屋
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
父は
却々
(
なかなか
)
帰って来なかった。ぼつぼつ
凱旋
(
がいせん
)
して、帰って来る人もあったが、叔父も父もまだ帰って来なかった。
戦争雑記
(新字新仮名)
/
徳永直
(著)
瑠璃子に、そう言われても、青年は
却々
(
なかなか
)
話し出そうとはしなかった。沈黙が、二三分間彼等の間に在った。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
その穴の何処か一番高い天井の辺から明るい日の光が洩れてくるようにつくられてあったので、そのベッドが未だ新らしい
却々
(
なかなか
)
上等なものであることが判りました。
イワンとイワンの兄
(新字新仮名)
/
渡辺温
(著)
『ほう。惜い事をしたなあ。
却々
(
なかなか
)
好い帽子だつたが……。もう三十年近く冠つたでせうな?』
道
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
それからと云うものはこの家に
奇
(
あや
)
しい事が
度々
(
たびたび
)
あって
驚
(
おど
)
ろかされた芸人も
却々
(
なかなか
)
多いとの事であるが、
或
(
ある
)
時
素人連
(
しろうとれん
)
の女芝居を興行した際、
座頭
(
ざがしら
)
の
某
(
ぼう
)
が急に腹痛を
起
(
おこ
)
し、
雪隠
(
せっちん
)
へはいっているとも知らず
枯尾花
(新字新仮名)
/
関根黙庵
(著)
却
常用漢字
中学
部首:⼙
7画
々
3画
“却”で始まる語句
却
却説
却而
却〻
却下
却掃
却歩
却売
却後
却退