刎頸ふんけい)” の例文
鶉坂の老人は、五百之進とは、刎頸ふんけい交際まじわりがあった。そして、わが子郁次郎いくじろう許嫁いいなずけである花世を、ほんとの子みたいに可愛がッていた。
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかも、この肝胆かんたんあい照らしたうちとけよう。ふしぎといえばふしぎだが、男子刎頸ふんけいの交わりは表面のへだてがなんであろう。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「軍人はサッパリしています。争奪戦をやった二人が相変らず刎頸ふんけいまじわりを続けているのです。君達も斯うあって欲しい」
求婚三銃士 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
しかも二人は刎頸ふんけいの交わりがあったのに、周防が病床につき、再起おぼつかなし、となっても、みまいにゆかず、臨終にも訪ねなかった、臨終にもだぞ
所が前申す通り榎本釜次郎えのもとかまじろうと私とは刎頸ふんけいまじわりと云うけではなし、何もそんなに力を入れる程の親切のあろう訳けもない、ただ仙台藩士の腰抜けをいきどおったと同じ事で
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
恋愛よりも、親の愛、腹心の味方の愛、刎頸ふんけいの友の愛に近いものになる。そして背き去ることのできない、見捨てることのできない深いきずなにくくられる。そして一つの墓石に名前をつらねる。
それがしは、蒲生がもう浪人の赤壁八十馬あかかべやそま、という者。ごぞんじないか、塙団右衛門ばんだんえもん、あれとは、刎頸ふんけいの友で、共に他日を期している仲。
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
兵隊に行っている間に同年兵の西の男と刎頸ふんけいまじわりを結んで、その妹と縁談が纒まったのである。嫁の遣り取りは稀でない。東から西へ養子に行っているのさえある。
ある温泉の由来 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
いったんのいきどおりはなすであろうと思われる細川藤孝も、わが娘のしゅうとたり、年久しき刎頸ふんけいともでもある。嫌とはいうまい、協力しよう。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「それじゃ先刻同県人だから刎頸ふんけいまじわりを結んで行動を共にしようと言ったのはういう意味です?」
凡人伝 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
と、ここに好漢おとこ同士の刎頸ふんけいの交わりがまた新たに結ばれ、銘酒“玉壺春ぎょっこしゅん”の泥封でいふうをさらに二たかめも開いて談笑飽くなき景色だった。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
これによってこれを見れば文一君は僕を出し抜いて土曜講習へ通うのみならず、一日にとおも玉子を食って黙っているのだ。競争試験となると刎頸ふんけいの友も当てにならない。
親鳥子鳥 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
劉備は強いていなまなかった。そこで三名は、鼎座ていざして、将来の理想をのべ、刎頸ふんけいちかいいをかため、やがて壇をさがって桃下の卓を囲んだ。
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いやしくも刎頸ふんけいまじわりを結んだ以上は、君が退学すると、僕も退学しなければならない」
凡人伝 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
それだけにわば筑前の無二の股肱ここう。いや官兵衛、御辺ごへんとならば、きっと肝胆かんたん相照らすものがあろうぞ。刎頸ふんけいを誓ったがよい
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「赤羽君と二人で蕎麦屋へ行って、刎頸ふんけいまじわりを結んで来た」
凡人伝 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
馬良と孔明とは、刎頸ふんけいまじわりがあったので、その遺族はみな引き取ってねんごろに世話していたが、とりわけ馬謖の才器を彼はいたく鍾愛しょうあいしていた。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かつて呂蒙が陸口にいた時分は、よく彼のほうから密書をとどけ、時来らば提携して、呉を討ち、魏を亡ぼさんと、刎頸ふんけいまじわりを求めてきたものです。
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
おかげで林冲りんちゅうの足はすっかりえ、毎日の食養も充分にとられたから、以前にもます健康に復してきた。しかも道づれは刎頸ふんけいの友、端公は従者のかたち。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そして彼も一味の士と信じて、何もかも打ち明けた。十年の知盟と交わすように、酒杯をかたむけ合い、たとえ半夜ながら、刎頸ふんけいの友をちぎッた仲ではないか。
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「あれも関ヶ原の敗北者の一人、石田治部じぶとは刎頸ふんけいの友だった大谷刑部ぎょうぶの家中で、溝口信濃みぞぐちしなのという人間じゃ」
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
真の、心契しんけいの友、刎頸ふんけいの友というものは、やはり艱苦かんくの中で知りおうた者でなければ生涯をちぎられますまい
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「君を初めて見た時から、ひそかに自分は、君に嘱す思いを抱いていた。将来いつかは、刎頸ふんけいちぎらんと」
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いや、おたがい、日頃は、親友だの、刎頸ふんけいともだのと、云いあっているが、こんな時にでも会さなければ、ついに、真の友も、真の主従も分らないところだった。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
よく見たがよい、朱褒の書中にも、高定と雍闓とは刎頸ふんけいの友ゆえ、油断あるなと、忠言してあろうが。
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「では、誰に? ……。いや、お隠しなさることはない。わしと彼とは刎頸ふんけいの友、何を聞かして下すっても、差しつかえはないのです。……来たのでしょう、ここへ」
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
きのうも、余が刎頸ふんけいの友、加藤遠江守とおとうみのかみどのから、そち達と同じような忠言を懇々こんこんと申された。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
もとよりふたりは共に西山荘に仕え、老公の直臣じきしんとして、刎頸ふんけいまじわりをしていたあいだである。一方が浪人したからといって、急にその友誼ゆうぎに変質を来たすような仲ではない。
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そして、この友の為には——とひそかに思い、すすんで刎頸ふんけいの交わりを求めて行った。
大谷刑部 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
李傕りかく様と良人たくとは、刎頸ふんけいの友ですから、私も、あの夫人とは親しくしておりますが」
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
深見重左は、刎頸ふんけいまじわりをゆるしていたひじ久八きゅうはちが、その客分投げ槍の小六と共に、新九郎等のために殺害されたと聞いた時、既に、彼を狙うの殺意は、充分胸にかもされていた。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
元々、父と高瀬氏とは、共に横浜の開港的な企業の夢の中でむすびあい、年輩も地位も、高瀬氏の方がはるかに父より先輩ではあったが、いわば刎頸ふんけいの仲といってよい間柄であった。
「そうです。小生は今日まで、あなたとは刎頸ふんけいまじわりを誓ってきたものとのみ思っていました。——ところが、何ぞ知らん、あなたは小生に水くさい秘し事を抱いておいでになる」
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「そちと筑前とは、いわゆる合性あいしょうだ。最初からの縁でもあるし刎頸ふんけいの仲。質子の松千代は、筑前の手許へ預けおくことにする。筑前の手に養い置かれれば、其方とても心安かろうが」
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そして柴田勝家とは刎頸ふんけいちかいをつづけ、勝家がほろぶ日まで、無二の柴田党だった。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ちんは、弱冠のときより関羽、張飛と刎頸ふんけいまじわりを結び、戎馬奔命じゅうばほんめいの中に生きること三十余年、ようやく蜀を定めて後、諸人は、朕が中山靖王ちゅうざんせいおうえいであるところから帝位に推しすすめ
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
土肥実平のことばをしおに、藤九郎盛長、仁田、天野など、刎頸ふんけいの友の一群は、みの覆面ふくめんのしずくに、武者ぶるいを見せながら、また降り出した暗い小雨の中を、どこともなく駈け去った。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
なぜならば正使として来た前田又左衛門利家としいえとは、むかしから刎頸ふんけいともではあるし、ここ月余にわたる主君の勘気にたいしても、秀吉のために、彼がもっともしていたといわれるし
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
済州さいしゅう奉行所へと差立てる一囚人に付いて、朱同の人馬は、旅途にあった。囚人はきのうまでの刎頸ふんけいの友、同役の雷横なので、馬上の、彼の顔も怏々おうおうとして、つね日ごろのものではなかった。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
役所をめ、奉行所の外にあって、堀留の五人組強盗の巣を探索しているもう一名の刎頸ふんけいの友——山本左右太の便りこそ、朝に夕に、こう二人が、いわず語らず、待ちぬいているものだった。
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それを、晩年莫逆の友とか刎頸ふんけいの友とか重くしすぎると、私にはどうもこの人の禅林における業績と人間的な光彩がもっと何かで見出されて来ないと、そのままのみにうなずけきれないのである。
随筆 宮本武蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
日頃、ひそかに誓い合っている刎頸ふんけいの友、木村丈八が後から入って来た。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
夫婦の仲というもおろか、刎頸ふんけいともといってもこれ程ではあるまい。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
利家の一女は、秀吉の養女になっているとか、利家夫妻の仲人なこうどは、秀吉であるとか、内輪事はまずいても、いわゆる男子と男子の刎頸ふんけいのちぎりにおいて——彼と彼とは、一朝一夕の交友ではない。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
千種とは、刎頸ふんけいなかだ、悪いこととはおもわれない。
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
三成の為に、若年から刎頸ふんけいを誓っている友の為に。
大谷刑部 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼の刎頸ふんけいの友たる同じ南の同心加山耀蔵ようぞう
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)