“傍(かたは)” の例文
彼女自身は裁縫やお花などを習ふ傍(かたは)ら、今迄の玉帳とはちがつた小遣帳をつけたり、婦人雑誌やラヂオで教はつた惣菜(そうざい)料理を拵へたり
のらもの (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
追駈(おひかけ)昌次郎と途中にて行違ひと成り梅一人河原に待(まち)居たる所雲助風俗(ふうぞく)の者女を勾引(かどはか)し來り打叩くを傍(かたは)らにて梅は驚き迯出(にげいだ)す所を又其者梅を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
そしてその傍(かたは)らで書きかけの原稿を書き終つたし、また或新聞社へ行つて、樺太からあちらの通信をすることを引き受ける相談をも整へた。
隆治が、帽子をとつて、挨拶をしやうとすると、すつかり興奮し切つてゐる妻の綾子は傍(かたは)らからさう云つて、ずん/\座敷の方へ行きかけた。
ある死、次の死 (新字旧仮名) / 佐佐木茂索(著)
僕は豪遊なんぞしたくない。斯(か)うして新聞配達をしながら傍(かたは)ら文学を研究してゐるが、志す所は一生に一度不朽の大作を
貧書生 (新字旧仮名) / 内田魯庵(著)
午過ぎになると、所在なくて、文典など讀みだしたが、今までのやうに傍(かたは)ら人無きが如き態度ではゐられなくて、兄の足音が聞えると書物を脇へ片寄せた。
入江のほとり (旧字旧仮名) / 正宗白鳥(著)
利根(とね)の水源(すゐげん)を確定(かくてい)し、越後(えちご)及(およ)ひ岩代(いわしろ)と上野(かうずけ)の国境を定(さだ)むるを主たる目的(もくてき)となせども、傍(かたは)ら地質(ちしつ)の如何(いかん)を調査(てうさ)し、将来(しやうらい)開拓(かいたく)すべき原野(げんや)なきや否(いなや)、良山林(りやうさんりん)ありや否(いなや)
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
責めるといふよりも、寧ろそれは憫(あは)れむに近く、静かに、彼女のからだを起して、傍(かたは)らを頤で指しました。
けむり(ラヂオ物語) (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
といつて、傍(かたは)らに首(くび)をたれた忠兵衛(ちゆうべえ)をみやつたガラスの眼(め)には泪(なみだ)があるのかとおもはれました。
桜さく島:見知らぬ世界 (新字旧仮名) / 竹久夢二(著)
その又O君の傍(かたは)らには妙にものものしい義足が一つ、白足袋(たび)の足を仰向(あふむ)かせてゐた。
O君の新秋 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
やがて好き首尾の有らんやうに拠無(よりどころな)き頼を繋(か)けつつ、彼は懊悩(おうのう)に堪へざる毎に取出でては写し易(か)ふる傍(かたは)ら、或(ある)は書添へ、或は改めなどして、この文に向へば自(おのづか)らその人に向ふが如く
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
キーツと止ると、パタンと扉を押す音、自動車の客席は、白い強い明りに、パツと切ツ削(そ)いだやうに一部面を見せる。大概、夜更けての客は、若く、逞しく、そして白い顏が傍(かたは)らにある。
夏の夜 (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
貝塚より魚骨魚鱗の出づる傍(かたは)ら是等遺物の存在(そんざい)するは實にコロボックル漁業(ぎよげふ)の法を明示するものと云ふべきなり。釣り竿の有無(ゆうむ)は考へ難(かた)けれど、網(あみ)は恐(おそ)らく曳(ひ)き網(あみ)なりしならんと思はる。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
灸點(きうてん)横町の多の市といふのはお灸(きう)と鍼(はり)の名人で、神田中に響いた盲人ですが、稼業の傍(かたは)ら高利の金を廻し、吸ひ附いたら離れないからといふので、蛸市と綽名(あだな)を取つてゐるほど、強(したゝ)か者だつたのです。
彼れは透谷の坐りたる傍(かたは)らに若干(じやくかん)の紙幣が紙に包まれて在りしことを発見せり。而して其紙片には失敬ながら些(いさ)さか友人の窮を救はんとすと云ふ趣意を書きありき。彼れは之を見て感泣したりと云ふ。
透谷全集を読む (新字旧仮名) / 山路愛山(著)
傍(かたは)ら物を食つたり、酒を飲んだりする処がある。
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
それとも又罪のない傍(かたは)らの柱をか
心の姿の研究 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
以て歸らんことは思ひも寄(よら)ず如何(いかゞ)はせんと座中を見廻すに是幸ひ傍(かたは)らに文右衞門の煙草盆(たばこぼん)ありしかば其の中へ右の金子二十五兩を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
曾(かつ)て聞(き)く沼岸には岩代上野の県道即ち会津(あいづ)街道(かいどう)ありて、傍(かたは)らに一小屋あり、会津檜枝岐村と利根(とね)の戸倉村(とくらむら)との交易品を蔵する所にして、檜枝岐村より会津の名酒を此処に運(はこ)び置(お)けば
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
落葉松(からまつ)の森を背にしたテニスコートの傍(かたは)ら。日が落ちて、橙色の雲の一塊が、雪をいたゞいた遠い峰を覆つてゐる。今テニスを終つたばかりの四人、そのうちの女二人は境笛子と母の杉江である。
桔梗の別れ (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
事ともせず日々(ひゞ)加古川の渡守(わたしもり)して貧(まづ)しき中にも母に孝養怠らざりし其内老母は風の心地とて臥(ふし)ければ兵助は家業(かげふ)を休(やす)み母の傍(かたは)らを離(はなれ)ず藥用も手を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)