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きゃん
ふりがな文庫
“
侠
(
きゃん
)” の例文
藍微塵
(
あいみじん
)
の
袷
(
あわせ
)
に、一本
独鈷
(
どっこ
)
の帯、素足に
雪駄
(
せった
)
を突っかけている。
髷
(
まげ
)
の形が
侠
(
きゃん
)
であって、職人とも見えない。真面目に睨んだら鋭かろう。
娘煙術師
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
彼女は
度
(
ど
)
を過した酒のために平素のつゝましさを取り失って、そんなことを云う言葉の調子がまるでお
侠
(
きゃん
)
なお転婆娘のようであった。
武州公秘話:01 武州公秘話
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
そりゃああたしがお
侠
(
きゃん
)
だからだけれども、先生の小間使いですもの、そりゃどうしたって診察所との交渉が多いわよ。ええ、こりゃ漢語よ。
ニッケルの文鎮
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
この陽気でお
侠
(
きゃん
)
な女の一皮下には、妙な悲劇的な
情緒
(
じょうちょ
)
のあるのを、平次はまざまざと見せつけられたような気がしたのです。
銭形平次捕物控:054 麝香の匂い
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
縹緻よしでお
侠
(
きゃん
)
で、思いやりがふかく、誰にも可愛がられ大事にされていながら、その裏側ではそういうおそろしい経験をしていたのである。
赤ひげ診療譚:01 狂女の話
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
▼ もっと見る
やはり秀八のずば抜けた
緻容
(
きりょう
)
と、
侠
(
きゃん
)
な辰巳肌のうちに、どことなく打ち
潤
(
しめ
)
っている
窶
(
やつ
)
れの美しさが、通船楼で見た時から受けたつよい魅力であった。
春の雁
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「じゃ、わたし、やってみるわ!」とお
侠
(
きゃん
)
なスパセニアがまず、
上衣
(
うわぎ
)
を脱ぎ始めました。誘われてジーナも笑いながら、無言で上衣を脱ぎ始めるのです。
墓が呼んでいる
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
といいかけてまず
微笑
(
ほほえ
)
みぬ。
年紀
(
とし
)
は
三十
(
みそじ
)
に近かるべし、色白く
妍
(
かおよ
)
き女の、目の働き
活々
(
いきいき
)
して
風采
(
とりなり
)
の
侠
(
きゃん
)
なるが、
扱帯
(
しごき
)
きりりと
裳
(
もすそ
)
を深く、
凜々
(
りり
)
しげなる
扮装
(
いでたち
)
しつ。
清心庵
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
それが一人ひとり違った
型
(
タイプ
)
と服装で、ちょいとした若奥様みたいなのや、良家の令嬢と言ったのや、お
侠
(
きゃん
)
な女学生風なのや、白エプロンの女給々々したのや
踊る地平線:06 ノウトルダムの妖怪
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
寡言
(
ことばすくな
)
にして何事も内気なる浪子を、意地わるき
拗
(
す
)
ね者とのみ思い誤りし夫人は、姉に比してやや
侠
(
きゃん
)
なる
妹
(
いもと
)
のおのが気質に似たるを喜び、一は姉へのあてつけに
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
ウン……この妹の方は姉と違ってチョットお
侠
(
きゃん
)
なところがあるようだが、なおも言葉を続けて
曰
(
いわ
)
くだ……しかし妾のこうした計劃は余り利き目がありませんでした。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
若宮八幡の
宮司
(
ぐうじ
)
の娘さん、とてもすっきりしているそうですが、お
侠
(
きゃん
)
で、人見知りをしないそうです。大林寺の裏方は、もうちょっと背が高くなければいけません……
大菩薩峠:29 年魚市の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
すこぶるお
侠
(
きゃん
)
で口先の達者な女友だちと連れだっていたが、パーヴェル・パーヴロヴィチがこの友だちをひどく煙たがっていることは、一目でそれとわかってしまった。
永遠の夫
(旧字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
浜田屋の亀吉は強情と
一国
(
いっこく
)
と、
侠
(
きゃん
)
で通った女であった。
豪奢
(
ごうしゃ
)
の名に彼女は気負っていた。
マダム貞奴
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
おゆみは妹たちより際立って美しく、勝ち気でお
侠
(
きゃん
)
なところはあったが、思いやりのふかい性分で、みんなに好かれた。
赤ひげ診療譚:01 狂女の話
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
二十二三でしょうが、存分にお
侠
(
きゃん
)
で、この上もなく色っぽくて、素顔に近いほどの薄化粧が、やけな眼隠しに崩れたのも、言うに言われぬ魅力です。
銭形平次捕物控:054 麝香の匂い
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
なんだかはしたないことをしたように気が
咎
(
とが
)
めて、お綱は、
侠
(
きゃん
)
にも似ず、その時、恥かしい気に責められもした。
鳴門秘帖:01 上方の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
而已
(
のみ
)
ならず、乙姫様が囲われたか、
玄人
(
くろうと
)
でなし、
堅気
(
かたぎ
)
でなし、粋で
自堕落
(
じだらく
)
の風のない、品がいいのに、
媚
(
なまめ
)
かしく、澄ましたようで
優容
(
おとなし
)
やか、お
侠
(
きゃん
)
に見えて懐かしい。
式部小路
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
そしてやっとのことで、湖の水門のあたりまで
辿
(
たど
)
り着きましたが、まったく私にはもう、
窈窕
(
ようちょう
)
も凜々しさもお
侠
(
きゃん
)
も
淑
(
しと
)
やかさも何もかもが、一切合切区別つかなくなってしまいました。
墓が呼んでいる
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
下
(
しも
)
っ
張
(
ぷく
)
れで——と申したら、皆様はよく下町型の美しい、少しばかりお
侠
(
きゃん
)
な娘の様子を想像して下さることでしょう。
奇談クラブ〔戦後版〕:07 観音様の頬
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
伊藤青年とは七つ違いの今年十八で、みどりの下の二字だけ取って「ドーリイ」と呼ばれているお
侠
(
きゃん
)
な女学生だ。
亡霊ホテル
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
ただ
侠
(
きゃん
)
な肌あいの中に、
濃
(
こ
)
い人情と強い恋を持つ深川のにおいが、
艶
(
なまめ
)
かしく、自分を絵の中につつみこんで、波の音までが
享楽
(
きょうらく
)
に和しているかと思われた。
春の雁
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
挙止
(
とりなり
)
侠
(
きゃん
)
にして、人を
怯
(
おそ
)
れざる
気色
(
けしき
)
は、
世磨
(
よず
)
れ、場慣れて、
一条縄
(
ひとすじなわ
)
の
繋
(
つな
)
ぐべからざる魂を表わせり。
義血侠血
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
首をかしげたのは、忘れもしないガラッ八に
跟
(
つ
)
けさした娘、なるほど桃色の
啖呵
(
たんか
)
ぐらいは切りそうなお
侠
(
きゃん
)
な娘です。
銭形平次捕物控:008 鈴を慕う女
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
お綱がうわべにまとっている、
張
(
はり
)
だの
侠
(
きゃん
)
だの意気地だの、そんな
虚勢
(
きょせい
)
はみんな脱がして裸のお綱にしてみせる。
鳴門秘帖:01 上方の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
美人
(
たおやめ
)
のこの姿は、浅草
海苔
(
のり
)
と、洗髪と、お
侠
(
きゃん
)
と、
婀娜
(
あだ
)
と、(飛んだり
刎
(
は
)
ねたり。)もちょっと交って、江戸の名物の一つであるが、この露地ばかり
蛇目傘
(
じゃのめ
)
の下の柳腰は
日本橋
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
そうか、さすがにお
侠
(
きゃん
)
なてめえも、すこウし凄くなってきたのだろう。素直に折れるなら今のうちだ。歯ぎしりしてもおれの女、
溶
(
と
)
けて添ってもおれの女。
鳴門秘帖:01 上方の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
天井には
犬張子
(
いぬはりこ
)
の、見事大きなのが
四足
(
よつあし
)
をぶら下げて動きもせず、一体
遣
(
や
)
りッ放しのお
侠
(
きゃん
)
で、自転車に乗りたがっても、人形などは持ってもみようと思わない
質
(
たち
)
であったのが
湯島詣
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
お屋敷風とも町家風ともつかぬ、十八九の賢そうな
瓜実顔
(
うりざねがお
)
、どこかお
侠
(
きゃん
)
なところはありますが、育ちは
良
(
い
)
いらしく、相応に美しくも可愛らしくもあるうちに何となく品があります。
銭形平次捕物控:008 鈴を慕う女
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
お絹は始終うつ向いて、黙り込んで居りますが、それは町娘らしい、お
侠
(
きゃん
)
と柔順さと、賢さと無知と、矛盾した性格を巧みにあしらった、まことに愛すべき存在らしく見えました。
銭形平次捕物控:233 鬼の面
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
「へえ、あんな
侠
(
きゃん
)
な
気質
(
きだて
)
のおかみさんでも、
卜
(
うらない
)
などを観てもらいに行きますかね」
春の雁
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「暑い、暑い。」と
腰紐
(
こしひも
)
を取る。「暑いんだもの。」とすらりと脱ぐ。その
皓
(
しろ
)
さは、雪よりもひき
緊
(
しま
)
って、玉のようであった。お
侠
(
きゃん
)
で、
凜
(
りん
)
としているから、いささかも
猥
(
みだ
)
りがましい処がない。
卵塔場の天女
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
不思議な美しさを持った娘——お
侠
(
きゃん
)
で柔順で、賢くて無知で、顔の道具の揃わないのが、反って一種の魅力になって居た矛盾だらけの江戸娘は、自分を
害
(
あや
)
めた者の名も言わずに、一刻一刻
銭形平次捕物控:233 鬼の面
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
お燕は、
侠
(
きゃん
)
な声を出して、母の肩につかまり、一緒になって笑いこけた。
大岡越前
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
五十幾人のこどもは、将軍家斉の濫倫の産物で、中には碌でもないものもありましたが、末の娘の京姫は美しくもあり
悧発
(
りはつ
)
でもあり、その上少しお
侠
(
きゃん
)
で勝気で、冒険的な気質さえ持って居りました。
奇談クラブ〔戦後版〕:06 夢幻の恋
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
酔っぱらいが、酔っぱらいを、お
侠
(
きゃん
)
な声で呼びたてていた。
松のや露八
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
これはまた恐ろしいお
侠
(
きゃん
)
で
銭形平次捕物控:113 北冥の魚
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
侠
漢検準1級
部首:⼈
8画
“侠”を含む語句
侠気
侠客
義侠
侠氣
侠勇
義侠心
任侠
仁侠
侠客肌
侠者
豪侠
勇侠
侠名
侠賊
侠客伝
侠客気
剣侠
侠骨
義侠的
侠児
...