くだり)” の例文
右のくだり船戸ふなどの神より下、邊津甲斐辨羅の神より前、十二神とをまりふたはしらは、身にけたる物を脱ぎうてたまひしに因りて、りませる神なり。
それから三、四年の後に、「金色夜叉」の塩原温泉のくだりが『読売新聞』紙上に掲げられた。それを読みながら、私はかんがえた。
温泉雑記 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
子供を改めるくだりは首を振るだけなり。家に入り源蔵を附け廻りにて、上手に替り、床几にかかる。「しばしの猶予ゆうよと暇取らせ」との白あり。
両座の「山門」評 (新字旧仮名) / 三木竹二(著)
此所ここで話が前置きをして置いた浅草大火のくだりとなるのですが、その前になお少し火事以前の雷門を中心としたその周囲まわりの町並み、あるいは古舗しにせ
例えば光源氏、須磨謫居のくだりにも、三月の節供に大きな人形——自分の姿に似せた人形を船にのせて流す描写がある。
雛祭りとお彼岸 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
両氏も勿論近松に劣らず、盛衰記の記事を無視してゐる。しかし両氏とも近松のやうに、赦免状のくだりは改めてゐない。
澄江堂雑記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
磨き出したような黄色い新月さえも花王石鹸の広告の様に見えて一層ムシャクシャし、思わず馬鹿にしていやアがる、と叱咜したくだりは先刻すでに述べた通り。
魔都 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
この後半の歌舞伎芝居と近代劇とのくだりは、或は後に受けた印象も交つてゐるかも知れないといふ懸念がある。
吉右衛門の第一印象 (新字旧仮名) / 小宮豊隆(著)
読み続きの『累ヶ淵』は女師匠の豊志賀が、年下の新吉という男と、ほんの一夜の浮気から、まったくその身を誤って死んでしまうくだりをばお聴きに入れます。
円朝花火 (新字新仮名) / 正岡容(著)
この與力よりきもなく、但馬守たじまのかみから閉門へいもんめいぜられた擧句あげくに、切腹せつぷくしてしまつた。とが箇條かでううちには、多田院御用ただのゐんごよう立札たてふだ無禮ぶれいがあつたといふくだりもあつた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
自己推薦のくだりは宜しくこなして、好い気持ちにペンが滑った余り、つい大昔の初恋時代の感傷に返ったヘルグライン君、「ひとり寝のねや淋しきままに」なんかと
斧を持った夫人の像 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
読み終ると、法水はそれを卓上に拡げて、まずその第七条(屍光と創紋のくだり)の上に指頭を落した。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
源頼政のぬえ退治のくだりであった。居士の顔は眼鏡をかけるとやさしくなる。また居士は太鼓腹で恰幅のいい人で、みかけは土方の親方のようであったが、声はやさしかった。
西隣塾記 (新字新仮名) / 小山清(著)
後にいのくだりになって、「げにはずかしや我ながら、昔忘れぬ心とて、………今三吉野みよしのの河の名の、菜摘の女と思うなよ」などとあるから、菜摘の地が静に由縁ゆかりのあることは
吉野葛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
足蹴にしたくだりは、この高時には、まだ聞かせておらなんだぞ。いや、その沙汰は、とうに余の耳に入っていたが、高氏が問注所でなした答弁を、其許はなぜか、聞かせておらん
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と臼井さんは伝授のくだりから急に声を潜めて、柳下君に聞えないように計らった。
ガラマサどん (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
実は、彼が沢子と向い合って、「宮原さんがいなかったら……。」というくだりの会話を交して、彼女の惑わしい眼付を見た瞬間、彼の頭はまるで夢の中でのように迅速な働きをしたのだった。
野ざらし (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
ば恐れての事ならんか町人の身として奉行を𫥇人なかうどに立んこと世に勿體もつたいなき譯なればと親類一どう連署れんしよして此くだり辭退じたいし終りぬ兎角とかくするうち新築しんちくまつた出來しゆつたいせしかば親子お金を其所に移し黄道吉日くわうだうきちにち
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
金五郎のもっとも得意とするくだりである。酔ったように、陶然と、語る。
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
その頃丁度「帯屋」を語つてゐたので、そのあくる日から、お絹が姑のおとせに苛められるくだりに、女房かないの寝物語を使つて語つてみると、情合じやうあひがいつになくよく出てゐるといつて、大層な評判を取つた。
見、歳の字のくだりまで参りました所、才の字が書かれてございました
高島異誌 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
松王が身がわりの秘密を打明けるくだりになると、婦人の観客のうちにはハンカチーフを眼にあてているのが沢山ありました。
米国の松王劇 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「それにしても、ちと横暴すぎる事が多いのでね。さうさう一度などは獄屋へ衣食を送るくだりを書いたので、やはり五六行削られた事がありました。」
戯作三昧 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
巴里市民諸君のヴェルサイユ宮殿乱入のくだりもかくやと思われて、ルイ十六世ならぬコン吉も、さながら身の毛もよだつばかり、ついには、蒲団の洞穴の奥に身をすくめ
けれども、気早な熊城はもはやっとしてはいられなくなったと見えて、さっそく彼女が朦朧状態中にしたためた、自署のくだり(グッテンベルガー事件に先例のある潜在意識的署名)
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
人物も光俊は綿密家にてよく何事にも行届きし人の様に思はるる故、其所そこにははまりたり。物語は立派にて、心底を明さぬくだりも光俊の品位を保ちてよし。乗切を見せぬは利口物なり。
札差ふださしの中では、代地の十一屋、天王橋の和泉屋喜兵衛、伊勢屋四郎左衛門など、大商人では日本橋大伝馬町の勝田という荒物商(これは鼠の話のくだりで私が師匠の命で使いに参った家)
彼の兵略戦法を語るに、六ちょうこうの術を附し、八門遁甲とんこうの鬼変を描写しているくだりなどはみなそうであるし、わけて天文気象に関わることは、みな中国の陰陽いんようぎょう星暦せいれきに拠ったものである。
三国志:12 篇外余録 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
右のくだり八島士奴美やしまじぬみの神より下、遠津山岬たらしの神より前、十七世とをまりななよの神といふ。
馬琴ばきんの『八犬伝』のうちに、犬飼現八いぬかいげんぱち庚申山こうしんざんで山猫の妖怪を射るくだりがありますが、それはこの『申陽洞記』をそっくり書き直したものでございます。
偶然開いた所は豹子へうし頭林冲とうりんちゆうが、風雪の夜に山神廟さんじんべうで、草秣場まぐさばの焼けるのを望見するくだりである。彼はその戯曲的な場景に、何時もの感興を催す事が出来た。
戯作三昧 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
そこであからさまにいいますが、多分に、自分のこの一章も創作です。次回の仏御前につづくくだりまで、劇中の劇、長篇中の一短篇と見ていただければ、前後にさわりもないかと思われます。
随筆 新平家 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
上のくだり、五柱の神はことあまかみ
「それにしても、ちと横暴すぎることが多いのでね。そうそう一度などは獄屋へ衣食を送るくだりを書いたので、やはり五六行削られたことがありました。」
戯作三昧 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
小早川がいよ/\貝をふくというくだりになると、親の遺言を聴くか、ありがたい和尚様のお説教でも聴くときのように、じっと眼をすえて、息をのみ込んで
三浦老人昔話 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
偶然開いたところは豹子頭林冲ひょうしとうりんちゅうが、風雪の夜に山神廟さんじんびょうで、草秣場まぐさばの焼けるのを望見するくだりである。彼はその戯曲的な場景に、いつもの感興を催すことが出来た。
戯作三昧 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
その場で鬼太郎君が筆を執って、私も多少の助言をして、二十分ばかりでともかくも其の唄のくだりだけを全部書き直して渡した。すると、つづいて番附のカタリをすぐに書いてくれと云った。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
近松と両氏との立ち場の相違は、盛衰記の記事の改めぶりにも、うかがはれると云ふ事をさまたげない。近松はあの俊寛を作る為に、俊寛の悲劇の関鍵くわんけんたる赦免状のくだりさへも変更した。
澄江堂雑記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
ただ日本の読者に判りにくいかと思われるくだりだけに、あるいは多少の註解を加え、あるいは省略するの程度にとどめて置いたのであるから、その長短は原文のままであると思ってもらいたい。
吹くくだりをきいている時には、自分のむかしが思い出されて、もう一度貝を
三浦老人昔話 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)