三世さんぜ)” の例文
一は仮時的テンポラルなり、他は永遠にして三世さんぜに亘るなり。仮時的テンポラルなる者は一時の現象を対手とし、永遠なる者は人世の秘奥をて対手とす。
あきらかな世の中でございますが、昔は幽霊が出るのはたゝりがあるからだうらみの一念三世さんぜに伝わると申す因縁話を度々たび/″\承まわりました事がございます。
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
悲劇の偉大なるを知るが故である。悲劇の偉大なる勢力を味わわしめて、三世さんぜまたがるごうを根柢から洗わんがためである。不親切なためではない。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
鬱屈した気分を解くには草木花卉かきのことを考えるに限る。鶴見はさきに『死者の書』を読み、感動して、動物の姿を追うて、過現未の三世さんぜに転々した。
三世さんぜの諸仏は、妻子が、必ずや悟りを妨げることを考慮され、妻を持つことを戒められるのです。といいましても、お心弱くなられることはござりませぬ。
それも其筈そのはずむかしをくれば系圖けいづまきのことながけれど、徳川とくがはながすゑつかたなみまだたぬ江戸時代えどじだいに、御用ごようそば取次とりつぎ長銘ながめいうつて、せきを八まん上坐じやうざめし青柳右京あをやぎうきやう三世さんぜまご
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
三世さんぜ一娑婆ひとしやば因果いんぐわ約束やくそくつながつたと、いづれも發起仕ほつきつかまつり、懺悔ざんげをいたし、五欲ごよくはなれて、たゞいまでは、それなる盲人めくらともろともに、三人さんにん一所いつしよに、つゑ引連ひきつれて、ひるおもてはづかしい
三人の盲の話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
天竺てんじく仏陀迦耶ぶっだがやなる菩提樹ぼだいじゅ下に於て、過去、現在、未来、三世さんぜの実相をあきらめられて、無上正等正覚むじょうしょうとうしょうがくらせられた大聖釈迦牟尼仏しゃかむにぶつ様が「因果応報」とのたもうたのはここの事じゃ。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「世捨て人にもひとしい隠居ながら、さて、後々の愚痴は捨て難きもの。それにつけ、何かとそちの事は思い出しておるぞ。主従は三世さんぜというが、さて、わしと、そちとも、久しいのう」
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
海山にもかへがたき御恩をあだにいたしそうろう罪科つみとが、来世のほどもおそろしく存じまゐらせ候……とあってお園の方の手紙にはただ二世にせ三世さんぜまでも契りし御方おかたのお身上みのうえに思いがけない不幸の起りしため
散柳窓夕栄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
来世らいせの平安を祈りましょう。主従しゅじゅう三世さんぜと申します。
俊寛 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
三世さんぜぶつ皆座にあれば寒からず
五百句 (新字旧仮名) / 高浜虚子(著)
三世さんぜわたる生物全体の進化論と、(ことに)物理の原則にって無慈悲に運行し情義なく発展する太陽系の歴史を基礎として、その間にかすかな生を営む人間を考えて見ると
思い出す事など (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
じつ矢叫やさけびごとながれおとも、春雨はるさめ密語さゝやきぞ、とく、温泉いでゆけむりのあたゝかい、山国やまぐにながらむらさきかすみ立籠たてこもねやを、すみれちたいけと見る、鴛鴦えんわうふすま寝物語ねものがたりに——主従しゆじう三世さんぜ親子おやこ一世いつせ
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
(主従は三世さんぜ——)と、すけはうれしかった。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
二世にせおろ三世さんぜまでもとおも雪枝ゆきえも、言葉ことばあらそひをきようがつて
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)