一閃いっせん)” の例文
と両手に襟を押開けて、仰様のけざま咽喉仏のどぼとけを示したるを、謙三郎はまたたきもせで、ややしばらくみつめたるが、銃剣一閃いっせんし、やみを切って
琵琶伝 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ところが、ちょうど彼らがこの教会の橋まできたとき、ヘッセ人はぱっと飛びあがり、一閃いっせん火焔かえんとなって姿をかきけしたのである。
大体が、臆病者揃いの公卿たちは、闇夜やみよにひらめく一閃いっせんのすさまじさに、かえって生きた心地もなく、呆然ぼうぜんと見ていただけだった。
気が、楽になって、スウッと、身を、左にまわすと、伴れの侍が、それに誘い込まれたように、中段に取っていた刀を一閃いっせんさせて
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
最初の一閃いっせんでお松の命はないはずであります——逃げ廻るお松の身に刃は触れないで、あらぬかたを見廻しつつ振りまわす切先は、襖、畳
それ故にこそ電火一閃いっせんするごとに拍手くが如きなれ。ただ小町のことばに和歌のために一命を捨つるはうらみなしとあるは利きたり。
今や、闇をつんざく電光の一閃いっせんの中に、遠い過去の世の記憶きおくが、いちどきによみがえって来た。彼のたましいがかつて、この木乃伊に宿っていた時の様々な記憶が。
木乃伊 (新字新仮名) / 中島敦(著)
身をひるがえしつつ襲いかかろうとした猛犬をさッと一閃いっせんぎ倒したかと見えるや浴びせ切りに切りすてました。
それには電光の一閃いっせんほどの間で足りた。突然少しばかり開いてまたすぐに閉ざさるるその家の戸は、それら絶望の人々にとっては生命となるのだった。
だがこのときかれはぱっと一閃いっせんの火光が窓のガラスにうつったような気がした、そうしてそれがすぐ消えた。
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
光春は一閃いっせんの火光と黒けむりのうちにかくれ、矢倉の狭間のすべてから、同時に濛々もうもうと硝煙がふき出した。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかしここで仮りに救って考えれば、一閃いっせんの光線によって照しだされたところに脈絡がある。統合がある。わたくしはいつになってもこの断片的なものを溺愛する。
それを見た瞬間、秘書は蟒が腹の中に金の入れ歯をしているのかと思ったが、次の瞬間、彼の脳髄の中に電光の如きものが一閃いっせんして、途端に驚天動地的真相きょうてんどうちてきしんそうさとった。
◯しかるに十八節以後においては、ヨブに起りし光明の一閃いっせんは消えて再び哀哭あいこくに入るのである。
ヨブ記講演 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
目は百練の鏡をかけしごとく、真っ白き歯をむき出してニタニタと笑い出だせる気味悪さに、茂は思わず提灯ちょうちん投げ出し、両手を広げてむんずと組みつきしに、ピカリ怪光一閃いっせん
おばけの正体 (新字新仮名) / 井上円了(著)
一閃いっせん、危うく身をかわした八五郎は、浅井朝丸の二度目の襲撃をける暇もありません。
と闇をつんざいてピカリと一閃いっせん、刀はこんどは佐平治めがけて斬りおろしてきました。
亡霊怪猫屋敷 (新字新仮名) / 橘外男(著)
主人は訳はわからぬが、其一閃いっせんの光に射られて、おのずとが眼を閉じて了った。
雪たたき (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
老人は、汗にぬれたはげ頭を仰向あおむけて、上目に太郎を見上げながら、口角にあわをためて、こう叫んだ。太郎は、はっと思った。殺すなら、今だという気が、心頭をかすめて、一閃いっせんする。
偸盗 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
一秒時の十万分の一で一閃いっせんする電光を痛快と喜ぶは好い。然し開闢以来まだ光線の我儕われらに届かぬ星の存在をいなむは僻事ひがごとである。所謂「神の愚は人よりも敏し」と云う語あるを忘れてはならぬ。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
屋上に高くそびえた塔の廻りを、さっきから廻転している探海灯が、長い光りの尾の先で、都会の空を撫でながら一閃いっせんするたびに、クララ・ボウの顔がさっと明るく微笑ほほえんだが、暗くなるとまた
(新字新仮名) / 池谷信三郎(著)
一閃いっせん、また一閃。
武道宵節句 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
一閃いっせんの光が、街路の人家の正面をぱっと赤く染めた。あたかも溶鉱炉の口が突然開いてまた閉じたかのようだった。
雲は低く灰汁あくみなぎらして、蒼穹あおぞらの奥、黒く流るる処、げに直顕ちょっけんせる飛行機の、一万里の荒海、八千里の曠野あらの五月闇さつきやみを、一閃いっせんし、かすめ去って、飛ぶに似て、似ぬものよ。
貝の穴に河童の居る事 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
光芒こうぼう寒き銀蛇ぎんだ一閃いっせんさせたものでしたから、並みいる花魁群のいっせいにぎょッとしながら青ざめたのはいうまでもないことでしたが、しかし、その驚愕きょうがくはただの秒時——。
とお延の喉を衝き破った声と一緒に、縁側から躍り込んだ投げ槍の小六、ふりかぶった大刀をきらりと一閃いっせん蚊帳かやの吊手の落ちるのと共に、ズンと中を目がけて斬り下ろした。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
さわれ失望中に一閃いっせんの希望ありて、ヨブ記が失望の書にあらず希望の書たることを知るのである。一閃また一閃、遂に暗黒悉く去って光明全視界を蔽う処まで至るがヨブ記の経過である。
ヨブ記講演 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
ボタン一つ押すと紫電しでん一閃いっせん。太い二本の光の柱です。一本は真直に空中を飛び上る。もう一本は敵陣の中につっこむ。するとパッと黄煙こうえんあがると見る間に、ふねも敵兵も瞬間に煙となって空中に飛散する。
発明小僧 (新字新仮名) / 海野十三佐野昌一(著)
組んだる太刀が島田の気合ではずれたかと思えば電光一閃いっせん
この二つの魂は、雷を乗せた二つの雲のように恋を乗せ、電光の一閃いっせんに雲がとけ合うように、ただ一瞥いちべつのうちに互いに接し互いに混和すべきものであった。
この時までも目を放たで直立したりし黒衣の人は、濶歩かっぽ坐中にゆるいでて、燈火を仰ぎ李花にして、厳然として椅子にり、卓子ていぶる片肱かたひじ附きて、眼光一閃いっせん鉛筆のさきすかし見つ。
海城発電 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
むしろ死相の死にもの狂いと、滅前めつぜん一閃いっせんともいうべき、凄絶さを極めていた。
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
するとサッと一閃いっせん、懐中電灯が二階の天井を照した。あかりかすかにふるえながら、天井をすべり下りると、壁を照らした。それから四囲の壁を、グルグルと廻った。——しかし予期した銃声は一向鳴らない。
疑問の金塊 (新字新仮名) / 海野十三(著)
一閃いっせんするや同時に、右門のここちよげな叫び声がきこえました。
その名前に、あたかも電光の一閃いっせんで顔をかすめられたように彼は身を震わした。
よろめき立つところを、一閃いっせんッと横に払って
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
一閃いっせんの光がほとばしった。砲手長は二度ぐるぐると回り、腕を前方に差し出し、空気を求めてるように顔を上にあげたが、それから砲車の上に横ざまに倒れ、そのまま身動きもしなかった。
一閃いっせん雷光いなずまの下に見つけた。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
義元の一閃いっせん
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)