骨牌カルタ)” の例文
小判を欠いてくような、たかい名香を煙にするくらいなら、骨牌カルタでもしたらよかろうに、と隅であくびを噛んでいたことであった。
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それから私達は骨牌カルタで狐と狸という競技をするのだが、狐になったずるい彼女のために散々狸の私は打ち負かされてしまうのであった。
孟買挿話 (新字新仮名) / 吉行エイスケ(著)
水浴がすむと、クリームと牛乳入りのビスケットでお茶を飲むことにする。……晩は、散歩をするかそれとも近所の人たちと骨牌カルタをやる。
富籤 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
骨牌カルタのような札の片側には「自」反対の側には「他」と書いてある。私は時と場合とに応じてこの札の裏表を使い分ける事を教えられた。
厄年と etc. (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
軍人ネーブかなしげにあたまつて、『わたしはそれがきのやうにえますか?』とひました。『骨牌カルタうしておよげるものですか ...
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
若い娘たちはエドモン・ジェローの歌詞であるサン・タヴェルの隠士を歌っていた。骨牌カルタのナーン・ジョーヌはミロアールに代えられていた。
私達は日がな一日骨牌カルタやチェスをして過し、クリスマスイーヴには蝋燭ろうそくをつけて、平日通りパンとバタとを食べました。
細雪:03 下巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
その時チチコフは、何処から取り出したのか知らないが主人あるじが手に一組の骨牌カルタを握っているのに気がついた。
けれども、自分は、手に賑やかな骨牌カルタを持ち、顔は明るく笑い乍ら、何とも云われない魂の寂寥を覚えた。
二つの家を繋ぐ回想 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
氣づかひはないが、たゞ何時までも何時までも同じやうにたゞつてゐたかつたのである。麹室かうじむろのなかによく弄んだ骨牌カルタの女王のなつかしさはいふまでもない。
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
あの蠱惑的こわくてきな不思議な町はどこかまるで消えてしまって、骨牌カルタの裏を返したように、すっかり別の世界が現れていた。此所に現実している物は、普通の平凡な田舎町。
猫町:散文詩風な小説 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
更に「同じ時代の都のおとめだちが、明るい電燈の下で、はなやかに骨牌カルタを切っておることも知らず、……農村の娘だちは、てのひらから血を流して毎日藁を打っておるのだ。 ...
(新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
日本語のノまたはヌは、今の花合せの骨牌カルタの俗称坊主を、一にまたノというのがもとの意味に近い。
地名の研究 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
中等室のつくえのほとりはいと静かにて、熾熱燈しねつとうの光の晴れがましきもあだなり。今宵こよいは夜ごとにここにつどい来る骨牌カルタ仲間も「ホテル」に宿りて、舟に残れるは一人ひとりのみなれば。
舞姫 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
松田君も行つた。宮川君も行つた。骨牌カルタの好きな、そしていつでも負ける草香君も行つた。お糸さんはすぐ是等の人人にもお気に入りになつた。「桔棟」へ行つて遊ばうか。
二黒の巳 (新字旧仮名) / 平出修(著)
姉小路の綾子さんが伊勢物語とかの骨牌カルタを取るからといつて三度も呼びに來たが三藏は行かなかつた。増田が白粉を塗られて眞面目な顏をして歸つて來たのもをかしくなかつた。
俳諧師 (旧字旧仮名) / 高浜虚子(著)
九度目に寝つこうとした時、怪しい呻声うめきごえが下男部屋の方から聞えた。くびを抑え、ピストルを持って、下男部屋へ行く。みんな未だ起きていてスウィピ(骨牌カルタ賭博とばく)をやっている。
光と風と夢 (新字新仮名) / 中島敦(著)
どうも図の取方が西洋の骨牌カルタに似たところがありますが、誰が描き始めたものでしょうか。近年各地の凧は絵が粗末になって来ましたが、高松のばかりは少しも格が落ちておりません。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
夜更けまで骨牌カルタをしたのちに、倶楽部の露台バルコニーへ出ると、彼らはそこにもいる。
何故なら、骨牌カルタ札を見ると、その人物像はどれもこれも、上下の胴体が左削ぎの斜めに合わされていて、それぞれに肝腎な心臓の部分が、相手の美々しい袖無外套クロークの蔭に隠れているからです。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
骨牌カルタの一束が机上にある」という意識において、主語が意識せられた時客語が暗に含まれており、客語が意識せられた時主語が暗に含まれている、つまり根柢に一つの直覚が働いているのである。
善の研究 (新字新仮名) / 西田幾多郎(著)
女将は奥の室へ去って楼主と二人で花骨牌カルタをはじめた。
地上:地に潜むもの (新字新仮名) / 島田清次郎(著)
夜は二人を相手にして骨牌カルタの「二十一」をやった。
フランス伯N・B (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
チホン「骨牌カルタをやって居りました」
死の復讐 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
夕食がすむと骨牌カルタの卓を囲んだ。ラエーフスキイは骨牌をやり、葡萄酒をやり、一方色んなことを考えていた。
決闘 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
それというのも、こういった連中にはありがちのことで、彼は骨牌カルタが三度の食事より好きだからである。
四人で骨牌カルタをし、珍らしく熱中した様子を見、——AとAの兄との——晴々と心持よかった。実際二人のサブデュードした調子は私に張合ない感をもたせるのだから。
養老院の一室で骨牌カルタをしながら、互に慰め合ってる異国風景を、外国映画のスクリンで見る時ほど、西洋という国の悲しさと味気なさを、沁々しみじみと思わせることはないのである。
老年と人生 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
れがおまへふことなぞをくものか?』とつてあいちやんは、(此時このときまでにおほきくなれるだけ充分じうぶんおほきくなつてゐました)『おまへ骨牌カルタ一組ひとくみぎないではないか!』
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
「ああ、それは私も見込んでいる……掏摸すりと目明し、オランダ骨牌カルタで結べましたね」
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「こなたには面白き話一つする人なし。この様子にては骨牌カルタのが球突たまつきに走るなど、いまはしき事を見むも知られず。おん連れの方と共に、こなたへ来たまはずや。」と笑みつつすすむる
うたかたの記 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
オールドローズの地色の中央に幅一寸四分ほどの広さに碁盤目ごばんめが通っていて、その中に四つ葉のクローバーを散らし、下の方に骨牌カルタが二枚、ハートの一とスペードの六が重なっている。
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
白山はくさん山彙さんいを取りめぐらした飛騨・越前の大野郡、美濃と加賀との旧大野郡、さては大分県の大野郡という地名を見ても察せられるように、また花合せ・骨牌カルタの八月をノという人があるように
地名の研究 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
紺と白とのつばめ骨牌カルタの女王の手に持った黄色い草花、首の赤いほたる、ああ屋上庭園の青い薄明、紫の弧燈にまつわる雪のような白い蛾、小網町こあみちょうの鴻の巣で賞美した金粉酒オウドヴィドダンジックのちらちら、植物園の茴香ういきょうの花
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
金を賭けて骨牌カルタもする、生臭なまぐさものは一さい嫌い。
二人は何時間もぶっつづけに物も言わず撞球どうきゅうやピケットという骨牌カルタ遊びをするし、ヤアギチがトロイカでどこかへ出かけるときは必ずヴォローヂャを連れて行った。
どの鏡の後ろにも、手紙だの、古い一組の骨牌カルタ札だの、靴下だのといったものが押しこんである。
心臟ハート王樣わうさま女王樣ぢよわうさまとがおちやくになり、玉座ぎよくざにつかせられましたとき多勢おほぜいのものどもが其周そのまはりにあつまつてました——骨牌カルタつゝみおなじやうな、小鳥ことりけもののこらず、軍人ネーブくさりつながれて
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
石炭をばや積み果てつ。中等室のつくゑのほとりはいと静にて、熾熱燈しねつとうの光の晴れがましきもいたづらなり。今宵は夜毎にこゝに集ひ来る骨牌カルタ仲間も「ホテル」に宿りて、舟に残れるは余一人ひとりのみなれば。
舞姫 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
ラエーフスキイは上衣を脱いでテーブルに向い、一心に骨牌カルタを睨んでいる。
決闘 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)