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ずだぶくろ
ふりがな文庫
“
頭陀袋
(
ずだぶくろ
)” の例文
頭陀袋
(
ずだぶくろ
)
からきれいな紙をとり出して、筆もしどろもどろに書きつけてさし出すと、それを山本主殿がとって、声高くよみあげる。
雨月物語:02 現代語訳 雨月物語
(新字新仮名)
/
上田秋成
(著)
「さあ、こいつらを片づけたら、さっそく、
庫裡
(
くり
)
におき忘れた大事な
頭陀袋
(
ずだぶくろ
)
を取りにいかねばならん。史進、ここで待っていてくれるか」
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
古びた色の
褪
(
さ
)
めた
袈裟
(
けさ
)
ころもに
頭陀袋
(
ずだぶくろ
)
をかけ、穴のあいた
網代笠
(
あじろがさ
)
をかぶり
草鞋
(
わらじ
)
ばきで、そうして
埃
(
ほこり
)
まみれという姿だった。
おれの女房
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
死骸の頭へ
頭陀袋
(
ずだぶくろ
)
ぐらい掛けられたからってご苦労さんに土ん中の棺桶の
蓋
(
ふた
)
をひっぺがしてまではずさなくったってよさそうなもんじゃねえか。
青銅の基督:――一名南蛮鋳物師の死――
(新字新仮名)
/
長与善郎
(著)
端折
(
はしょり
)
を高く取って袈裟を掛けさせ、又袈裟文庫を
頭陀袋
(
ずだぶくろ
)
の様にして
頸
(
くび
)
に掛けさせ、
先
(
まず
)
これで宜いと云うので、
俄
(
にわか
)
にお比丘尼様が一人出来ました。
敵討札所の霊験
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
▼ もっと見る
「ハハハハ行くだろう」と宗近君は
頭陀袋
(
ずだぶくろ
)
を
棚
(
たな
)
へ上げた腰を
卸
(
おろ
)
しながら笑う。相手は半分顔を
背
(
そむ
)
けて
硝子越
(
ガラスごし
)
に窓の外を
透
(
すか
)
して見る。外はただ暗いばかりである。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
おまんらが集まって吉左衛門のために縫った
経帷子
(
きょうかたびら
)
、
珠数
(
じゅず
)
、
頭陀袋
(
ずだぶくろ
)
、
編笠
(
あみがさ
)
、
藁草履
(
わらぞうり
)
、それにお
粂
(
くめ
)
が入れてやりたいと言ってそこへ持って来た吉左衛門常用の
杖
(
つえ
)
。
夜明け前:03 第二部上
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
社長がこう言っていると一々相手に話した日には、会社の中が四分五裂してしまう。僕が社長の
頭陀袋
(
ずだぶくろ
)
の口を握っているから、会社全体の統一が取れるのである。
人生正会員
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
と言って鉄如意を下へ置いて、改めて
頭陀袋
(
ずだぶくろ
)
へ手を入れて何を取り出すかと思えば、木のお
椀
(
わん
)
を二つ取り出しました。その二つの椀を左右の手に持って立ち上り
大菩薩峠:15 慢心和尚の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
そのために東京から
故郷
(
くに
)
に帰る途中だったのでありますが、汚れくさった
白絣
(
しろがすり
)
を一枚きて、
頭陀袋
(
ずだぶくろ
)
のような
革鞄
(
かばん
)
一つ掛けたのを、玄関さきで断られる処を、泊めてくれたのも
雪霊記事
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
雲水空善は腹痛を起して、店の奥に横になって居るうちに大変な事を
聞込
(
ききこ
)
んでしまいました。店を出て行く二人の後ろ姿を見送りながら、
頭陀袋
(
ずだぶくろ
)
から手紙を取出して読み直すと
大江戸黄金狂
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
そこで
祠
(
ほこら
)
の扉を開けた。中には
袈裟
(
けさ
)
、
頭陀袋
(
ずだぶくろ
)
、
笠
(
かさ
)
、
手甲
(
てこう
)
、
脚絆
(
きゃはん
)
の一切が入っていた。道家は老人の
詞
(
ことば
)
に従ってそれを着て
旅僧
(
たびそう
)
の姿になり、
丑
(
うし
)
の
刻
(
こく
)
になって法華寺の別院へ往った。
赤い土の壺
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
おのおの器用に化けてはいるが、なかでも奇抜なのは森五六郎の
乞食
(
こじき
)
姿だ。おんぼろを一着に及んで御丁寧に
頭陀袋
(
ずだぶくろ
)
まで下げているところ、あんまり真に迫って、一同いささか恐縮の態。
つづれ烏羽玉
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
腰に下げたは
頭陀袋
(
ずだぶくろ
)
で手首に珠数を掛けている。頭は
悉皆
(
しっかい
)
禿げていたがそれでも秋の芒のようにチョンビリと
白髪
(
しらが
)
が残っている。そうして
酷
(
ひど
)
く年寄である。それが渋団扇を持っているのだ。
大鵬のゆくえ
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
こう言ってくれる言葉を聞捨てて、私達は
頭陀袋
(
ずだぶくろ
)
に米を入れ、
毛布
(
ケット
)
を肩に掛け、
股引
(
ももひき
)
尻端折という面白い風をして、
洋傘
(
こうもり
)
を杖につき、それに牛肉を提げて出掛けた。
千曲川のスケッチ
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
右馬介は退がって、こっそり一と間のうちで頭をまろめ、法衣、
頭陀袋
(
ずだぶくろ
)
の
雲水姿
(
うんすいすがた
)
になりすました。
私本太平記:10 風花帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
玉脇の妻は、
以
(
もっ
)
て未来の有無を
占
(
うらな
)
おうとしたらしかったに——
頭陀袋
(
ずだぶくろ
)
にも納めず、帯にもつけず、
袂
(
たもと
)
にも入れず、角兵衛がその
獅子頭
(
ししがしら
)
の中に、封じて去ったのも
気懸
(
きがか
)
りになる。
春昼後刻
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「君は全く動かないか。ハハハハ。さあ駱駝を払い
退
(
の
)
けて動いた」と宗近君は
頭陀袋
(
ずだぶくろ
)
を
棚
(
たな
)
から取り
卸
(
おろ
)
す。
室
(
へや
)
のなかはざわついてくる。明かるい世界へ
馳
(
か
)
け抜けた汽車は沼津で息を入れる。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
草鞋
(
わらじ
)
や
脚絆
(
きゃはん
)
や、不用になった物は、
鍬
(
くわ
)
にくくし付けて、人のはいらない藪の中へ投げこんだ。そして十徳を着、十徳の胸へ、雲水の掛けているような
頭陀袋
(
ずだぶくろ
)
をさげ、草履まで
穿
(
は
)
きかえると
宮本武蔵:06 空の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
社
(
やしろ
)
まわりでは
産小屋
(
うぶごや
)
を別に立てて、
引籠
(
ひきこも
)
る。それまではなくても、浦浜一体にその荒神を恐れました。また霊験のあらたかさ。可心は、黒島でうけた
御符
(
おふだ
)
を、道中安全、と
頭陀袋
(
ずだぶくろ
)
にさしていた。
河伯令嬢
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
違棚
(
ちがいだな
)
の
狭
(
せま
)
い上に、偉大な
頭陀袋
(
ずだぶくろ
)
を
据
(
す
)
えて、
締括
(
しめくく
)
りのない
紐
(
ひも
)
をだらだらと
嬾
(
ものうく
)
も垂らした
傍
(
かたわ
)
らに、
錬歯粉
(
ねりはみがき
)
と
白楊子
(
しろようじ
)
が御早うと
挨拶
(
あいさつ
)
している。立て切った
障子
(
しょうじ
)
の
硝子
(
ガラス
)
を通して白い雨の糸が細長く光る。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
黒い
天鵞絨
(
びろうど
)
で造った
頭陀袋
(
ずだぶくろ
)
なぞを
頸
(
くび
)
にかけ、
青毛布
(
あおげっと
)
を身にまとい、それを
合羽
(
かっぱ
)
の代わりとしたようなおもしろい姿であったが、短い散髪になっただけでもなんとなく心は改まって、足も軽かった。
夜明け前:04 第二部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
声を掛けて、呼掛けて、しかも聾に、
大
(
おおき
)
な声で、
婦
(
おんな
)
の口から言訳の出来る事らしくは思われない。……
吹降
(
ふきぶり
)
ですから、御坊の
頭陀袋
(
ずだぶくろ
)
に、今朝は、
赤神
(
しゃくじん
)
の
形像
(
すがた
)
の
顕
(
あらわ
)
れていなかった事は、無論です。
河伯令嬢
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「その
挟
(
はさ
)
み
筥
(
ばこ
)
から、わしの
頭陀袋
(
ずだぶくろ
)
を出したいが、開くか」
宮本武蔵:06 空の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
川の方の
砂堤
(
すなどて
)
の腹にへばりついて、美しい人の棄てた小笠を
頭陀袋
(
ずだぶくろ
)
の胸に敷き、おのが檜木笠を
頸窪
(
ぼんのくぼ
)
にへし
潰
(
つぶ
)
して、手足を張り
縋
(
すが
)
ったまま、ただあれあれ、あっと云う間だった、と言うのです。
河伯令嬢
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
わが姿に気づいてみると、大事な
頭陀袋
(
ずだぶくろ
)
を掛けていない。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
“頭陀袋”の意味
《名詞》
頭陀(托鉢)を行う僧が法具、布施された物などを入れ、首からかける袋。
故人の遺骸に死に装束をさせる際に、首にかける袋。すみ袋。
だぶだぶした袋。
(出典:Wiktionary)
“頭陀袋”の解説
頭陀袋(ずだぶくろ)とは、
比丘(僧侶)が、乞食・托鉢の際に使用する袋のこと。
上記用語が転用された一般的な袋、雑多なものを運搬するための簡易な布製の袋のこと。
(出典:Wikipedia)
頭
常用漢字
小2
部首:⾴
16画
陀
漢検準1級
部首:⾩
8画
袋
常用漢字
中学
部首:⾐
11画
“頭陀”で始まる語句
頭陀
頭陀行
頭陀事
頭陀嚢
頭陀山
頭陀乞食