負傷けが)” の例文
「それに二三日、負傷けがをする者がありますから、猶更なおさら、此の礁は竜王様がおるとか、竜王様のおしみがかかっておるとか申しまして」
海神に祈る (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
「どうしたんだい、誰か負傷けがでもしたの」と一人が聞くと、「人が出たんですとさ、人が!」と牛乳配達らしいのが眼を丸くして言う。
駅夫日記 (新字新仮名) / 白柳秀湖(著)
我が罪のやうに平あやまりに謝罪あやまつて、痛みはせぬかと額際を見あげれば、美登利につこり笑ひて何負傷けがをするほどでは無い
たけくらべ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
誠にとんだ負傷けがいたしまして……うも相済あいすみませぬことでございます、お蔭様かげさま父子おやこの者が助かります、はい/\……。
非常な負傷けがをしたそうで私はお気の毒で婦人のきずを見に行くこともようしなかったですが、すぐに病院へ連れて行きました。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
私の場合ではそれほどでもない女性に、目くもって勝手に幻影を描いて、それまで磨いてきた哲学的知性もどこへやら、一人相撲をとって、独り大負傷けがをしたようなものだ。
学生と生活:――恋愛―― (新字新仮名) / 倉田百三(著)
彼の新聞に入つて以来、わづか二三年の間に彼の毒筆に負傷けがしたものが何人とも知れないのだ、わしなども昨年の春、毒筆を向けられたが——彼奴等きやつらの言ふ様な人道とか何とか
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
「つまり、あの千兩箱が、皆んな本當の小判が千枚づつ入つて居れば、御主人は首筋や肩の負傷けがくらゐでは濟まず、今頃はとむらひの支度でもしたかも知れないといふことですよ」
おやぢさんが浜に行つて仲仕をして居る中に上から鉄板が落ちて長いことの間負傷けがをして居たが、栄一は毎日お米一升とお金二十銭を宛がつて助けてやり、主人が少し善くなると
ところで武男さん——旦那の負傷けがはいかがでした? 実はわたしもあの時お負傷けがの事を聞いたンで、ちょいとお見舞に行かなけりゃならんならんと思ってたンだが、思ったばかりで
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
「はい! 負傷けがはないやうでございます。」瑠璃子は静かに答へた。
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
「お負傷けががなかったのは、何より——」
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
幸いに負傷けがもしなかったらしい。
娘煙術師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
つみのやうにひらあやまりに謝罪あやまつて、いたみはせぬかと額際ひたいぎわあげれば、美登利みどりにつこりわらひてなに負傷けがをするほどでは
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
大きな負傷けがをした患者が来たりすると、患者よりも父の方が驚いて、顔色を真蒼にして治療をしたと云います。
薬指の曲り (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
其時そのとき俄盲目にはかめくら乞食こじきと見えまして、細竹ほそたけつゑいて年齢としころ彼是かれこれ五十四五でもあらうかといふ男、見る影もない襤褸すぼろ扮装なりで、うして負傷けがいたしましたか
ははははは、ところで武男さん負傷けががよくなったら、ひとまず帰京かえりなさるかね
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
「何処もお負傷けがはありませんか。お負傷けがはありませんか。」
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
イヤ決して心配はない、丁度い薬が有る、先達せんだって美惠比丘尼が負傷けがをする事があろう、其の時に此の膏薬を貼れば悪血あくちが発して眼病が癒るといって、十二枚膏薬を
一昨日おとといも昨日も負傷けがはしましたが、石の破片かけらが眼に入ったとか、生爪をがしたとか、鎚で手を打ったとか、大した事もございませざったが、今日はあんな事が出来ましたから
海神に祈る (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
殘りし男の負傷けがはさしたる事ならねど、若きに似合ぬ意氣地なしにて、へた/\と弱りて起つべき勢ひもなく、半分は死にたるやうな哀れの情態さま、これを見捨る事のならぬ老爺が
暗夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
何処どこもお負傷けがはありませんか。お負傷はありませんか。」
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
おゝ/\……お美那みな可愛想かあいさうぢやアないか……見なよ……人品ひとがら可愛かあいらしい子供こぞうだが、生来はらからの乞食こじきでもあるまいがの……あれまア親父おやぢ負傷けがをしたといふので
蜻蛉おふ小僧が小溝にはまりても此位の負傷けがはありうちなるに、氣を失なふ馬鹿もなき物ぞ、しつかりして藥でも呑めやと佐助のやかましく小言いふを、左樣あら/\しくは言はぬ物
暗夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
貴君あなたは、何処もお負傷けがはなかつたのですか。」
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
「転んだぐらいで、そんな負傷けがをしたか」
海神に祈る (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
近江屋あふみや旦那だんなかへつてて、梅喜ばいきいたから浅草あさくされてつたが、奥山おくやま見失みはぐつたけれども、いたからべつ負傷けがはないから安心してなとはれた時には
心眼 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
美登利につこり笑ひて何負傷けがをするほどでは無い、夫れだが正さん誰れが聞いても私が長吉に草履を投げられたと言つてはいけないよ、もし萬一ひよつとお母さんが聞きでもすると私が叱かられるから
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
貴君あなたは、何処どこもお負傷けがはなかったのですか。」
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
其様そんな事べえ云ってハア手におえねえのサ、もっとでけ負傷けがアして片輪になる者さえあるだに、左様そう心配しんぺえしねえがえと云うが、あれっけえ時から内気だから、ハア
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
負傷けがは正しく其人の所爲なれど、原因おこりは我れを恐るゝよりの事、おもへば何も我が罪なりし、君をば我が手に救ひしにはあらで、言はゞ死地に導くやうの成行、何もこれまでの契りと御命を賜はれや
暗夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「いいえ。それよりも、あなたお負傷けがは。」
第二の接吻 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
ぴしゃアりと提灯を切られた時にわっちきもを潰して、あの建部裏のどぶにおっこッちまった、い塩梅に少し摺剥すりむいたばかりでたんと負傷けがはしないが、泥ぼっけえ、寒くて仕方がねえから
松と藤芸妓の替紋 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
何処どこもお負傷けがはないのですね。」
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
何うせはなしは面倒になり、年季を増す事になるかも知れねえが、万年町へ談をしてお身受けをすることに致しましょう、大丈夫で、わっちが呑込みやした……負傷けがアなすったか……丈助は剣術を知らず