蘇生いきかへ)” の例文
どうかすると蘇生いきかへつたはちはれてされたといふひとはなしきました。さうなると鐵砲てつぱうをかついでけものちにくもおなじやうなものです。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
蓬々ぼう/\けたかみくしれてつめたいみづれたときおつぎはやうや蘇生いきかへつたやうになる。それでもはまだあかくて態度たいどがふら/\と懶相だるさうである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
折角せつかく、お大事だいじになせえよ。おいらは、これでやつと蘇生いきかへつたわけさ。まるで火炮ひあぶりにでもなつてゐるやうだつたんでね」
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
オウクネエ島附近で溺死した元帥が今頃蘇生いきかへつてゐる筈もないが、それでも彼方あつちでも見た、此方こつちでも見た。
おれんでゐると、ひめて、おれくちびる接吻せっぷんしていのちいき吹込ふきこんでくれたとた……んだもの思案しあんするとは不思議ふしぎゆめ!……すると、やが蘇生いきかへって帝王ていわうとなったゆめ
「今、ひよつと、太政官が蘇生いきかへつたら、どんなもんぢやらう。……」
太政官 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
つくさんと思へば實父は御仕置となり是りやどうしたらよからうぞと大聲おほごゑあげ號出なきいだしければ越前守殿は彌々いよ/\憫然ふびんと思はれしが是や/\其方其樣そのやうなげき實父にかはらんと申せども最早もはや富右衞門はお所刑しおきに相成しぞされば其富右衞門が蘇生いきかへると云ふは無れども其方の孝心かうしん天へ通じ其惠そのめぐみにて實父富右衞門がまた蘇生そせいなす間じきものにあらず因て其方は
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
それではどうか心配しんぱいしててやらうといはれて勘次かんじかほ蘇生いきかへつたやうにつた。かれなんでも主人しゆじん盡力じんりよくしてれゝば成就じやうじゆするとおもつてるのである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
まあ蘇生いきかへつたやうな心地こゝろもちになる。やがて丑松は茶椀を下に置いて、寺住の新しい経験を語り始めた。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
何故と言つて、長い道程みちのりを歩き草臥くたびれて、誰も彼も草の葉のやうにげんなりした顔をしてゐたのが、今通りかかつてるのは遊女町だなと気がくと、急に蘇生いきかへつたやうに生々いき/\して来たからである。
與吉よきちさいはひにぐつたりとつておふくろふところからはなれるのもらないのでおつぎがちひさないた。おしな段々だん/\身體からだあたゝまるにれてはじめて蘇生いきかへつたやうに恍惚うつとりとした。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
丁度収穫とりいれの頃で、堆高うづだかく積上げた穀物の傍にたふれて居ると、農夫の打つつちは誤つての求道者を絶息させた。夜露が口に入る、目が覚める、蘇生いきかへると同時に、白隠は悟つた。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
芸術家としての須磨子は、最後の一刹那にまた蘇生いきかへつて来た。
積上げた『わらによ』の片蔭に倚凭よりかゝつて、霜枯れた雑草の上に足を投出し乍ら、肺の底までも深く野の空気を吸入れた時は、僅に蘇生いきかへつたやうな心地こゝろもちになつた。見れば男女の農夫。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)