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薬餌
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やくじ
ふりがな文庫
“
薬餌
(
やくじ
)” の例文
城太郎はまた、彼女の今の体にとっては、
薬餌
(
やくじ
)
よりもなによりも、武蔵の無事なことを伝えてやるのが、最善な良法であると信じていた。
宮本武蔵:05 風の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
半ば学理半ば迷想に由りて盛んに行われたもので(今日とてもこの類の物が
薬餌
(
やくじ
)
香飾等と混じて盛んに行わるるは、内外新紙の広告で知れる)
十二支考:05 馬に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
そして単に
薬餌
(
やくじ
)
を給するのみでなく、夏は
蚊幮
(
かや
)
を
貽
(
おく
)
り、冬は
布団
(
ふとん
)
を
遣
(
おく
)
った。また三両から五両までの金を、
貧窶
(
ひんる
)
の度に従って与えたこともある。
渋江抽斎
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
あるいはこれが近来とかく
薬餌
(
やくじ
)
に親しまれる機会の多かった先生の死期を早めたのではないかとさえ考えられる。
熱情の人
(新字新仮名)
/
久保栄
(著)
差当
(
さしあた
)
りこの病を医すべき適切なる
薬餌
(
やくじ
)
を得、なお引続き
滞岳
(
たいがく
)
して加養せんことを
懇請
(
こんせい
)
したれども、
聴
(
き
)
かれざりしかば、再挙の保証として大に
冀望
(
きぼう
)
する所あり
寒中滞岳記:(十月一日より十二月廿一日に至る八十二日間)
(新字新仮名)
/
野中至
(著)
▼ もっと見る
こう自分ではいったけれど、知覚精神を失った最後の数時間までも、
薬餌
(
やくじ
)
をしたしんだ。
匙
(
さじ
)
であてがう薬液を、よく
唇
(
くちびる
)
に受けてじゅうぶんに引くのであった。
去年
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
薬餌
(
やくじ
)
、
呪
(
まじない
)
、
加持祈祷
(
かじきとう
)
と人の善いと言う程の事を
為尽
(
しつく
)
して見たが、さて
験
(
げん
)
も見えず、次第々々に頼み少なに成て、
遂
(
つい
)
に文三の事を言い
死
(
じに
)
にはかなく成てしまう。
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
聞いたよりはいっそう
惨
(
みじ
)
めで、母親は持病の痛風で足腰が立たず、破れた壁に添うて寝かされたまま、娘が茶店の
隙間
(
ひま
)
をみては、駈け戻って
薬餌
(
やくじ
)
をすすめたり
四十八人目
(新字新仮名)
/
森田草平
(著)
朝
(
あした
)
に
夕
(
ゆうべ
)
に
彼女
(
かれ
)
が病床を
省
(
せい
)
し、自ら
薬餌
(
やくじ
)
を与え、さらに自ら指揮して
彼女
(
かれ
)
がために心静かに病を養うべき
離家
(
はなれ
)
を建て、いかにもして
彼女
(
かれ
)
を生かさずばやまざらんとす。
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
先生乃
槖中
(
たくちゅう
)
ノ装ヲ傾ケ
匍匐
(
ほふく
)
シテコレヲ救ヒソノ家ヲ処分ス。
撫賉
(
ぶじゅつ
)
スルコトマタ甚厚シ。ケダシ
薬餌
(
やくじ
)
埋葬ノ費一ツニ先生ニ
委墩
(
いとん
)
ス。衆
相
(
あい
)
イツテ曰ク丹丘ノ門ニハ人アリト。
下谷叢話
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
良人
(
りょうじん
)
五年の
中風症
(
ちゅうふうしょう
)
、死に至るまで看護怠らずといい、
内君
(
ないくん
)
七年のレウマチスに、主人は家業の
傍
(
かたわ
)
らに自ら
薬餌
(
やくじ
)
を進め、これがために遂に資産をも傾けたるの例なきにあらず。
日本男子論
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
すでに老齢に達して体の
工合
(
ぐあい
)
が思わしくなく、朝夕
薬餌
(
やくじ
)
に親しむようになったので、自分の息のあるうちに河内介に然るべく嫁を迎えて家督を譲ろうと思う心が切であった。
武州公秘話:01 武州公秘話
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
四月このかた、
薬餌
(
やくじ
)
から離れられず、そうでなくてさえも、夏には人一倍弱いのであるが、この夏私は、暑気が募るにしたがって、折りふし奇怪な感覚に悩まされることが多くなった。
紅毛傾城
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
階下では妻と子が病気で
呻吟
(
しんぎん
)
しているが、近頃は
薬餌
(
やくじ
)
の料も
覚束
(
おぼつか
)
ない有様であるのに、もしベルリオーズが
金儲
(
かねもう
)
けの俗事を
放擲
(
ほうてき
)
して、
交響曲
(
シンフォニー
)
の作曲に
没頭
(
ぼっとう
)
したらどんなことになるだろう。
楽聖物語
(新字新仮名)
/
野村胡堂
、
野村あらえびす
(著)
親
(
みずか
)
ら
薬餌
(
やくじ
)
を供す
愛卿伝
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
永
(
なが
)
いあいだ
薬餌
(
やくじ
)
をとってもらった
生命
(
いのち
)
の
恩人
(
おんじん
)
——それは
忘
(
わす
)
れてもいいにしろ、いきなり
大人
(
おとな
)
をつかまえて頭から、大将! とは。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
妙子が
臥
(
ね
)
ていた十日ばかりの間の
薬餌
(
やくじ
)
を始め附添人の食い
雑用
(
ぞうよう
)
などでも、随分
厄介
(
やっかい
)
を掛けている
筈
(
はず
)
で、細かいことを云えば、医者の送り迎えをした自動車代、運転手への心付け
細雪:03 下巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
自分は、病気療養のため、中国の陣よりお
暇
(
いとま
)
を賜わって、久しく郷里
菩提山
(
ぼだいさん
)
の城や南禅寺に籠って、
薬餌
(
やくじ
)
に親しんでいた竹中重治でござる。
黒田如水
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
忠利は寛永十四年頃から、ようやく
薬餌
(
やくじ
)
に親しむことが多くなった。この年の十一月には、鎌倉に転居して病を養っている。
随筆 宮本武蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「まま眠りかねる夜もありましたが、昨夜はよく
寝
(
やす
)
みました。何くれとなくお心づけ、
辱
(
かたじけの
)
うござった。出陣の後も、何か
薬餌
(
やくじ
)
を
摂
(
と
)
りましょう」
新書太閤記:07 第七分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「ムム、お
快
(
よろ
)
しい方か。御辺の無事を見せられたのが、まず何よりの
薬餌
(
やくじ
)
であったとみゆる。よかったのう、高氏どの」
私本太平記:01 あしかが帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
風邪の大熱できのうから
薬餌
(
やくじ
)
にしたしんではおれどほかならぬお召、また道誉一代のほまれであることゆえ、すぐ
出仕
(
しゅっし
)
いたしまする、という答え。
私本太平記:09 建武らくがき帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「武門に生れて、しかもこのような
秋
(
とき
)
、畳のうえで死ぬるのは、何とも口惜しゅうございます。
薬餌
(
やくじ
)
に親しんでいても死ぬときには死なねばなりません」
新書太閤記:06 第六分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「ですから、愚かというのです。神に祈って、何になりましょう。なぜ、園子や子等のために、
薬餌
(
やくじ
)
をとって、温かに眠り、身を安楽にしていてくれないかと」
大岡越前
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
於松にとっても、半兵衛は、数年
薫育
(
くんいく
)
をうけた恩人、また
生命
(
いのち
)
の親でもある。ここ昼夜その人の枕許に侍したまま具足も解かず、
薬餌
(
やくじ
)
の世話に精根を傾けていた。
新書太閤記:06 第六分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
たとえば重い病人を治すには、まず
粥
(
かゆ
)
を与え、やわらかな
薬餌
(
やくじ
)
から始める。そして
臓腑
(
ぞうふ
)
血気の
調
(
ととの
)
うのを待って、徐々、強食をすすめ、精薬を以てその病根をきる。
三国志:07 赤壁の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「承知しました。
薬餌
(
やくじ
)
のほうなら源内のお手の物……オ、これや気絶している、数日の疲労があるところへ、ドッと助勢が見えたので、一時に心が
弛
(
ゆる
)
んだのであろう」
鳴門秘帖:01 上方の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
去年の秋以来、ここの僧房に籠って、ひたすら
薬餌
(
やくじ
)
と静養につとめていた
病
(
びょう
)
半兵衛
重治
(
しげはる
)
である。
黒田如水
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
愚息新五郎こと、永々
御恩禄
(
ごおんろく
)
を
喰
(
は
)
みながら、
病
(
やまい
)
のため、柳ヶ瀬表へも、御供つかまつらず、このまま、家にあるのは、無念と申し、
薬餌
(
やくじ
)
に別れをつげて馳せ参りました由。
新書太閤記:09 第九分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
侍医はあらゆる
薬餌
(
やくじ
)
を試みたが、病人の苦悩は少しも減じない。そして日の
経
(
ふ
)
るに従って、曹操の面には古い壁画の
胡粉
(
ごふん
)
が
剥落
(
はくらく
)
してゆくように、げっそりと
窶
(
やつ
)
れが見えてきた。
三国志:10 出師の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
挙げて、将門主従に、同情をよせ、その夜から
薬餌
(
やくじ
)
、手当に、夜も明かしたほどである。
平の将門
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「いや、
薬餌
(
やくじ
)
を求めに伺った者ではございませぬ。拙者は
法月弦之丞
(
のりづきげんのじょう
)
と申す者——」
鳴門秘帖:01 上方の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
それかあらぬか、老公が西山へ帰ってのちも、江戸にあった藤井紋太夫は、およそ二十日余りも、病気ととなえて自分のやしきにひき籠っていた。事実、
薬餌
(
やくじ
)
に親しんでいたらしい。
梅里先生行状記
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
いや。……この手紙によると、半兵衛の
病
(
やまい
)
は日増しに快方にむかっておるらしいが、その後、今浜の
丹羽
(
にわ
)
五郎左衛門が、半兵衛を迎えとって、
医師
(
いし
)
薬餌
(
やくじ
)
の手当など、至れり
尽
(
つく
)
せりの親切を
新書太閤記:04 第四分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
尊氏はだんだんに、病間の孤独と
寂
(
しず
)
かとを欲していた。邸内の祈祷僧はすべて帰してしまい、有隣や侍医たちの手当さえ、とかくうるさげに
退
(
しりぞ
)
けるふうだった。そして、
薬餌
(
やくじ
)
、何から何までを
私本太平記:13 黒白帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
“薬餌”の意味
《名詞》
薬と食事。
(出典:Wiktionary)
薬
常用漢字
小3
部首:⾋
16画
餌
常用漢字
中学
部首:⾷
15画
“薬餌”で始まる語句
薬餌無徴怪夢頻