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薄月
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うすづき
ふりがな文庫
“
薄月
(
うすづき
)” の例文
滝太郎は早速に押当てていた唇を指から放すと、
薄月
(
うすづき
)
にきらりとしたのは、
前
(
さき
)
に勇美子に望まれて、断乎として辞し去った指環である。
黒百合
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「
薄月
(
うすづき
)
や」「淋しさや」「音淋し」「
藁屋根
(
わらやね
)
や」「静かさや」「
苫舟
(
とまぶね
)
や」「帰るさや」「
枯蘆
(
かれあし
)
や」など如何やうにもあるべきを
俳諧大要
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
好い加減に積った雪は、狭い庭を念入りに埋めて、その上に
薄月
(
うすづき
)
が射しているのですから、その辺には、物の
隈
(
くま
)
もありません。
銭形平次捕物控:021 雪の精
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
おせんは
抱
(
かか
)
えた
人形
(
にんぎょう
)
を、
東
(
ひがし
)
に
向
(
む
)
けて
座敷
(
ざしき
)
のまん
中
(
なか
)
に
立
(
た
)
てると、
薄月
(
うすづき
)
の
光
(
ひかり
)
を、まともに
受
(
う
)
けさせようがためであろう。
音
(
おと
)
せぬ
程
(
ほど
)
に、
窓
(
まど
)
の
障子
(
しょうじ
)
を
徐
(
しずか
)
に
開
(
あ
)
け
始
(
はじ
)
めた。
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
薄月
(
うすづき
)
の光を浴びながら影のように動いている三人の姿はまさにこの世のものとは思われませんでした。そこへ防護団の制服を着た連中がどやどやと駈けこんできました。
ハムレット
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
▼ もっと見る
「眼が少し見えるようになりました、
薄月
(
うすづき
)
の光で物を見るほどになりましたわい」
大菩薩峠:20 禹門三級の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
薄月
(
うすづき
)
が
射
(
さ
)
したようになっていた。讓は眼が覚めたように
四辺
(
あたり
)
を見まわした。
蟇の血
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
きのうの雷雨のせいか、きょうは
土用
(
どよう
)
に入ってから最も涼しい日であった。昼のうちは陰っていたが、宵には
薄月
(
うすづき
)
のひかりが洩れて、涼しい夜風がすだれ越しにそよそよと枕元へ流れ込んで来る。
綺堂むかし語り
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
ああ みればみるほど
薄月
(
うすづき
)
のやうな少年よ
藍色の蟇
(新字旧仮名)
/
大手拓次
(著)
春雨は降るとも見えず
薄月
(
うすづき
)
の
鴎外の思い出
(新字新仮名)
/
小金井喜美子
(著)
薄月
(
うすづき
)
の
夜
(
よ
)
に
一握の砂
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
はじめ、月なし、此の時
薄月
(
うすづき
)
出
(
い
)
づ。舞台
明
(
あかる
)
く成りて、貴夫人も
少
(
わかき
)
紳士
(
しんし
)
も、三羽の烏も皆見えず。
天幕
(
テント
)
あるのみ。
紅玉
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
提灯を上げると、そこらあたりが
薄月
(
うすづき
)
の出たほど明るくなる。
大菩薩峠:01 甲源一刀流の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
次第に数が増すと、まざまざと、
薄月
(
うすづき
)
の曇った空に、
嘴
(
くちばし
)
も翼も見えて、やがては、
練
(
ねり
)
ものの上を飛交わす。
南地心中
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
藍
(
あゐ
)
あさき
宵
(
よひ
)
の
空
(
そら
)
、
薄月
(
うすづき
)
の
夜
(
よ
)
に
入
(
い
)
りて、
雲
(
くも
)
は
胡粉
(
ごふん
)
を
流
(
なが
)
し、
一
(
ひと
)
むら
雨
(
さめ
)
廂
(
ひさし
)
を
斜
(
なゝめ
)
に、
野路
(
のぢ
)
の
刈萱
(
かるかや
)
に
靡
(
なび
)
きつゝ、
背戸
(
せど
)
の
女郎花
(
をみなへし
)
は
露
(
つゆ
)
まさる
色
(
いろ
)
に
出
(
い
)
で、
茂
(
しげ
)
れる
萩
(
はぎ
)
は
月影
(
つきかげ
)
を
抱
(
いだ
)
けり。
婦人十一題
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
もとより
藁屑
(
わらくず
)
も
綿片
(
わたぎれ
)
もあるのではないが、
薄月
(
うすづき
)
が
映
(
さ
)
すともなしに、ぼっと、その仔雀の身に添って、
霞
(
かすみ
)
のような気が
籠
(
こも
)
って、包んで
円
(
まる
)
く
明
(
あかる
)
かったのは、親の
情
(
なさけ
)
の
朧気
(
おぼろげ
)
ならず
二、三羽――十二、三羽
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
浴衣
(
ゆかた
)
は
白地
(
しろぢ
)
の
中形
(
ちうがた
)
で、
模樣
(
もやう
)
は、
薄月
(
うすづき
)
の
空
(
そら
)
を
行交
(
ゆきか
)
ふ、——
又
(
また
)
少
(
すこ
)
し
明
(
あか
)
るく
成
(
な
)
つたが——
雲
(
くも
)
に
紛
(
まぎ
)
るゝやうであつたが、つい
傍
(
わき
)
の
戸袋
(
とぶくろ
)
に
風流
(
ふうりう
)
に
絡
(
から
)
まり
掛
(
かゝ
)
つた
蔦
(
つた
)
かづらが
其
(
そ
)
のまゝに
染
(
そ
)
まつたらしい。
浅茅生
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
蓋
(
けだ
)
し当時、夫婦を
呪詛
(
じゅそ
)
するという
捨台辞
(
すてぜりふ
)
を残して、
我
(
わが
)
言かくのごとく
違
(
たが
)
わじと、杖をもって土を打つこと三たびにして、
薄月
(
うすづき
)
の十日の宵の、十二社の池の周囲を弓なりに、飛ぶかとばかり走り去った
政談十二社
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
薄
常用漢字
中学
部首:⾋
16画
月
常用漢字
小1
部首:⽉
4画
“薄月”で始まる語句
薄月夜
薄月色