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若樣
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わかさま
是れは
極大切の
歌にて
人に
見すべきでは
無けれど、
若樣をお
勝たせ
申たく、
他の
人に
内證にて
姉樣ばかりに
御覽に
入れ
給へ、
早く、
内證で、
姉樣にお
上げなされ
乳母 ほんに、
巧いことを
被言る。
事壞しの
爲に
出來た
人ぢゃといの! あの、
殿方え、ロミオの
若樣には
何處へゐたら
逢はれうかの、
御存じなら
教へて
下され。
言問の
曲角で、
天道是か
非か、
又一組、
之は
又念入な、
旦那樣は
洋服の
高帽子で、
而して
若樣をお
抱き
遊ばし、
奧樣は
深張の
蝙蝠傘澄して
押並ぶ
後から、はれやれお
乳の
人がついて
手ぶらなり。
見てやれ/\
若樣か此のお寒いのに
能先御出遊ばしたお松樣もお花樣も
嘸かし
御寒いことで御座んせう先々早ふ此方へと
案内しけるに兩人は藤三郎を
伴ひ
奧へ
這入ば惣右衞門は
待構し事ゆゑ我を
直ぐと
仰しやれば
是非なけれど、
下手に
出來なば
却りて
姉樣に
笑はれ、
若樣の
負と
言ふ
物なり、
斯うなされ、
畫はゆるゆると
後日の
事になし、
吾助は
畫よりも
歌の
名人にて
ロミオ
予が
教へう。したが、
其若樣は
彌〻逢はッしゃる
時分には、
尋ねてござる
今よりは
老けてゐませうぞ。はて、
最ち
年少のロミオは
予ぢゃ。これより
粗いのは
今はない。
覺悟次第に
斷念もつくべし、
今一
度此文を
進げて、
明らかのお
答へ
聞いて
給はれ、
夫れ
次第にて
若樣にもお
別れに
成るべければと
虚實をまぜて、
子心に
哀れと
聞くやう
頼みければ
乳母 さいな、ペトルーチオーさまの
若樣でござりましょ。