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ひじまくら
ふりがな文庫
“
肱枕
(
ひじまくら
)” の例文
そのうえ皆は私に「
顔回
(
がんかい
)
」という綽名をつけた。書いたものからだろう。顔回は恐れ入るが
肱枕
(
ひじまくら
)
でごろ
寐
(
ね
)
をするところだけは似ている。
結婚
(新字新仮名)
/
中勘助
(著)
晩酌で、陶然として、そのまま
肱枕
(
ひじまくら
)
でうたたねという、のんきさではありません。急ぎの仕事に少し疲れていた時であったのです。
雪柳
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
猪之は
肱枕
(
ひじまくら
)
をしたまま、ぼんやりおちよのようすを見まもっていて、ひょいと去定に一種のめくばせをし、顔をしかめて囁いた。
赤ひげ診療譚:04 三度目の正直
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
おれは筆と巻紙を
抛
(
ほう
)
り出して、ごろりと転がって
肱枕
(
ひじまくら
)
をして
庭
(
にわ
)
の方を
眺
(
なが
)
めてみたが、やっぱり清の事が気にかかる。その時おれはこう思った。
坊っちゃん
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
校長は
肱枕
(
ひじまくら
)
をして足を縮めて
鼾
(
いびき
)
をかいているし、大島さんは
仰向
(
あおむ
)
けに胸を
露
(
あら
)
わに足をのばしているし、清三は赤い顔をして頭を畳につけていた。
田舎教師
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
▼ もっと見る
山根省三は洋服を宿の
浴衣
(
ゆかた
)
に
着更
(
きが
)
えて投げだすように疲れた体を横に寝かし、
隻手
(
かたて
)
で
肱枕
(
ひじまくら
)
をしながら煙草を飲みだした。
水郷異聞
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
床の間に梅と水仙の生けてある頃の寒い夜が、もうだいぶ更けていて、紅葉君は
火鉢
(
ひばち
)
の
傍
(
わき
)
へ、
肱枕
(
ひじまくら
)
をして
寐
(
ね
)
てしまった。
百物語
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
お
妾
(
めかけ
)
はいつでもこの時分には銭湯に行った留守のこと、彼は一人
燈火
(
あかり
)
のない座敷の置炬燵に
肱枕
(
ひじまくら
)
して、折々は
隙漏
(
すきも
)
る寒い川風に
身顫
(
みぶる
)
いをするのである。
妾宅
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
弁信が熊の敷皮の上に横になったのは、そのあとのことで、横になると
肱枕
(
ひじまくら
)
にスヤスヤと寝入ってしまいました。
大菩薩峠:27 鈴慕の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
午後は読書に
倦
(
う
)
んで
肱枕
(
ひじまくら
)
を
極
(
き
)
めているところへ宿の主人が来た。主人は
善
(
よ
)
く語るので、おかげで退屈を忘れた。
秋の修善寺
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
しかしそれはすぐ炉のそばに横たわっているのを発見したが、同時に、その
空
(
から
)
の
容器
(
いれもの
)
とともに、
肱枕
(
ひじまくら
)
をして、
涎
(
よだれ
)
をながして眠っている見つけない人間をも見出し
宮本武蔵:04 火の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
彼はごろんと
肱枕
(
ひじまくら
)
をつき、何げなく欄間の額を見ていた。だれが書いたものか南画風な淡彩で、白髪なシナ人とあから顔の遊女とが「枕引き」をして遊んでいる図である。
青銅の基督:――一名南蛮鋳物師の死――
(新字新仮名)
/
長与善郎
(著)
くりくり坊主の
桃川如燕
(
ももかわじょえん
)
が張り扇で
元亀
(
げんき
)
天正
(
てんしょう
)
の武将の勇姿をたたき出している間に、手ぬぐい
浴衣
(
ゆかた
)
に三尺帯の遊び人が
肱枕
(
ひじまくら
)
で寝そべって、小さな
桶形
(
おけがた
)
の容器の中から
鮓
(
すし
)
をつまんでいたりした。
銀座アルプス
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
瞼
(
まぶた
)
はもう離れようとしなかった。意識は何も受けつけないのだ。
蹣跚
(
まんさん
)
とした大広間の往復が、自席に着いてどっと疲労を呼びおこした。彼は
潰
(
つい
)
えるように横になった。
肱枕
(
ひじまくら
)
に他の手を添えた。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
徴醺
(
ほろよい
)
気分でだいぶ
焦
(
じ
)
れ焦れしてきて、気長く待つ気で読んでいた雑誌をもとうとうそこに投げ出して、煖炉の前に
褞袍
(
どてら
)
にくるまって
肱枕
(
ひじまくら
)
で横になり、来ても仮睡した
真似
(
まね
)
をして黙っていてやろう
黒髪
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
村中で
唯一人
(
ただひとり
)
のチョン髷の持主、彼に対してはいつも
御先生
(
ごせんせい
)
と挨拶する佐平爺さんは、
荒蓆
(
あらむしろ
)
の上にころり横になって、
肱枕
(
ひじまくら
)
をしたが、風がソヨ/\吹くので直ぐ
快
(
い
)
い気もちに眠ってしまったと見え
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
主計は窓際へゆき、刀を脇へ置くと、そこへ
肱枕
(
ひじまくら
)
で横になった。まるできちんと坐り直すようなぎごちない動作で横になり、それから云った。
古今集巻之五
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
(モ死にたいねえ、)ッて、思わず
音
(
ね
)
を出したよ、とおっしゃるんですがね、そのままお
足
(
みあし
)
を投出して、長くなって、土手に
肱枕
(
ひじまくら
)
をなすったんだとさ。
式部小路
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
午後は読書に
倦
(
う
)
んで
肱枕
(
ひじまくら
)
を
極
(
き
)
めているところへ宿の主人が来た。主人はよく語るので、おかげで退屈を忘れた。
綺堂むかし語り
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
頭はちょうど寒椿の葉の下になっている、そこへ
肱枕
(
ひじまくら
)
で、いつもするようなうたた寝の姿勢をとりました。
大菩薩峠:32 弁信の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
久しぶりの散歩に思の
外
(
ほか
)
の
疲労
(
つかれ
)
をおぼえ、種彦はわが家に帰るが否や風通しのいい二階の窓際に
肱枕
(
ひじまくら
)
してなおさまざまに今日の騒ぎを
噂
(
うわさ
)
する門人たちの話を聞いていたが
散柳窓夕栄
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
秋日和
(
あきびより
)
と名のつくほどの上天気なので、往来を行く人の
下駄
(
げた
)
の響が、静かな町だけに、朗らかに聞えて来る。
肱枕
(
ひじまくら
)
をして軒から上を見上げると、
奇麗
(
きれい
)
な空が一面に
蒼
(
あお
)
く澄んでいる。
門
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
長々と壁によって、
肱枕
(
ひじまくら
)
で、こちらへ向いてはいるが、相変らずちっとも眼を開いて見ようとしない。
大菩薩峠:40 山科の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
お登女さまの方へ頭の
天辺
(
てっぺん
)
を向け、
肱枕
(
ひじまくら
)
をして、北側にある小窓の外を眺めていた。杉林の木の間越しに遠くずっと高く、残雪のある峰がほんの僅かばかり
覗
(
のぞ
)
いていた。
似而非物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
波を枕に、
肱枕
(
ひじまくら
)
をさるるであろう。蓑の白い袖が時として、垂れて
錦帳
(
きんちょう
)
をこぼれなどする。
河伯令嬢
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
出ていった六の暢気そうな鼻唄が聞えなくなると、蝶太夫は
肱枕
(
ひじまくら
)
で横になった。その顔色はいま蒼黒くなり、唇がたるみ、眼は壁の一点をみつめたまま動かなくなった。
五瓣の椿
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
そこで、いつのまにか長煙管もほうり出して、
肱枕
(
ひじまくら
)
になって、やはり、いい心持で
弾
(
ひ
)
きまくっている三味線を聞いているところへ、ようやくのことにお雪ちゃんが戻って参りました。
大菩薩峠:26 めいろの巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
枝には白き
渚
(
なぎさ
)
を掛け、緑に
細波
(
さざなみ
)
の葉を揃えた、物見の松をそれぞと見るや——松の
許
(
もと
)
なる据置の腰掛に、長くなって、
肱枕
(
ひじまくら
)
して、
面
(
おもて
)
を半ば中折の帽子で隠して、羽織を畳んで、
懐中
(
ふところ
)
に入れて
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
三之助はほどけかかっていた三尺帯を巻き直し、そこへ寝ころんで
肱枕
(
ひじまくら
)
をした。男はそれを横眼で見た、その眼がきらっと光った。男は
片膝
(
かたひざ
)
を立て、きせるを持ち直した。
暴風雨の中
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
丸腰で来た竜之助は、ついにそこへゴロリと横になって
肱枕
(
ひじまくら
)
をしてしまいました。竜之助の横になって肱枕をしたその頭のあたりがちょうど、無縫塔の形をした石塔のあるところであります。
大菩薩峠:15 慢心和尚の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
一日
(
あるひ
)
、
巴旦杏
(
はたんきょう
)
の実の青々した二階の窓際で、涼しそうに、うとうと、一人が寝ると、一人も眠った。貴婦人は神通川の方を裾で、お綾の方は立山の
方
(
かた
)
を枕で、互違いに、つい
肱枕
(
ひじまくら
)
をしたんですね。
星女郎
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
肱枕
(
ひじまくら
)
で長ながと寝そべって、好い心持そうに
鼾
(
いびき
)
までかいて眠りこけていた。千蔵の腋の下に冷汗がにじみ出て来た、これは勘忍袋が温和しくなって以来の生理現象である。
評釈勘忍記
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
竜之助は何ともいわず、横になったままで
肱枕
(
ひじまくら
)
をしましたが、その冷やかな
面
(
おもて
)
がズンズン底知れず沈んで行くようでもあり、また
行燈
(
あんどん
)
の光に照りそうて、
一際
(
ひときわ
)
の色をそえるようにも見えます。
大菩薩峠:22 白骨の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
おじいさんは
肱枕
(
ひじまくら
)
をして寝てみたり、いつにない
夜延
(
よなべ
)
をしたり。
わか紫
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
たぶんそのためだろう、俗眼で見ると徹底的な怠け者で、年がら年じゅうなんにもしない、
檀家
(
だんか
)
の人々がお説法を聴きたいと云って来ると、
肱枕
(
ひじまくら
)
で寝ころんだままこう答える。
百足ちがい
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
島屋の主人はやかましいことは云わず、これから気をつけてくれと、注意しただけであった。五郎吉は島屋から戻ると、稼ぎにも出ずぼんやりと坐りこみ、やがて
肱枕
(
ひじまくら
)
をして、寝ころんでしまった。
赤ひげ診療譚:06 鶯ばか
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
新八は横になり、
肱枕
(
ひじまくら
)
をして、手紙を読んでいた。あけてある障子の向うに、庭がひらけていて、梅林の、芽ぐみはじめた枝のなかに、みれんらしく、まだ一、二輪白い花をつけているのもみえた。
樅ノ木は残った:02 第二部
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
得石は
肱枕
(
ひじまくら
)
をしたまま頷いた。
五瓣の椿
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
肱
漢検準1級
部首:⾁
8画
枕
常用漢字
中学
部首:⽊
8画
“肱”で始まる語句
肱
肱掛椅子
肱掛
肱掛窓
肱金
肱附
肱突
肱懸
肱鉄
肱鉄砲