くは)” の例文
壽阿彌は姪が敬服してゐると云ふを以て、此宗壽の重きをなさうとしてゐる。姪は餘程茶技にくはしかつたものとしなくてはならない。
寿阿弥の手紙 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
これを掘らせたのは吉太郎とお富の細工で、草之助はその密計みつけいを聽いて、嫉妬しつとのお島殺しを便乘させたのだと、後でくはしくわかりました。
上田の停車場ステーションで別れてから以来このかた小諸こもろ、岩村田、志賀、野沢、臼田、其他到るところに蓮太郎がくはしい社会研究を発表したこと
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
あそこを知らない人に、あの特色のある所を想像させるために、少しくはしく土地の事を話すことは無益ではあるまい。
十三時 (新字旧仮名) / エドガー・アラン・ポー(著)
小生の此問を反復するをたずして、妻は何事も包み隠すことなくくはしく話しくれ候。事実の真相を明かにする為に、其話を洩さず次に記し置き候。
「さつきあれ程くはしくお話申したではありませんか」と、ゴロロボフは問はれるのがさも不思議なといふ風で答へた。
されど自然は常に乏しき光を與ふ、即ちそのはたらくさまあたかもわざくはしけれど手の震ふ技術家の如し 七六—七八
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
それは兎に角大日本史も山陽同様に此事を記してゐるが、大日本史の筆法はひろることはこれ有り、くはしく判ずることは未だしといふ遣り方である。
平将門 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
「好い思ひ付きだ。その鰐を一つ行つて見よう。全体外国に出る前に、自分の国と、そこにゐる丈のあらゆる動物とをくはしく見て置くのも悪くはない。」
その第十巻の終りに Terminal Essay が附いてゐて、此の物語の起源、亜剌比亜アラビア風俗ふうぞく欧羅巴ヨオロツパに於ける訳本等がくはしく討究たうきうされてゐる。
たづぬるにくはしからず、宿題しゆくだいにしたところ近頃ちかごろ神田かんだそだつた或婦あるをんなをしへた。茄子なす茗荷めうがと、油揚あぶらあげ清汁つゆにして、薄葛うすくづける。至極しごく經濟けいざい惣菜そうざいださうである。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
もとよりくはしき技藝、高き趣味をこゝに求むべきにはあらねど、些の音樂に耳を悦ばしめんとする下層の市民の願をばこれによりて遂げしむることを得べく
遍路をそこに呼止め、いろいろ話してゐると、この年老いた遍路は信濃しなのの国諏訪すは郡のものであつた。T君はあの辺の地理にくはしいので、直ぐ遍路の村を知ることが出来た。
遍路 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
さういふ囚人は土地の様子をくはしく考へてゐるから逃げようとはしない。この島で逃げ出すのは、随分思ひ切つた為事しごとで、逃げたものはきつと死ぬると云つても好い位である。
バルタザル・アルドラミンは生きてゐた間、おれが大ぶくはしく知つてゐたから、己が今あの男に成り代つて身上話をして、諸君に聞かせることが出来る。もうあれが口は開く時は無い。
復讐 (新字旧仮名) / アンリ・ド・レニエ(著)
非常の苦痛と不快を彼に与へたといふ事がくはしく述べてあつた末に、もしわが英国で本人の意思に逆つて迄も徴兵を強制するやうになつたと仮定したら、自分はんな心持になるだらう
点頭録 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
一向服飾の流行などにくはしくない彼ではあるが、若し、これをひとつの趣味と云ひ得るなら、この情景のなかに浮ぶ姿態の魅力は、さながら古代の妖姫サフォオを想はせるものがあつた。
双面神 (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
おだて好きで、理窟屋の象山は、鉄砲打の術も理窟の上ではなかなかくはしかつた。
「あちらの椅子でございました。」をばさんはいつもこんな風に、一族に関した出来事を大切に、くはしく記憶してゐて、それで自分の親族的関係の朧気なのを填め合せようとしてゐるのである。
祭日 (新字旧仮名) / ライネル・マリア・リルケ(著)
跡部は荻野をぎの等の話を聞いてから考へて見て、平山に今一度一大事を聞いた前後の事をくはしく聞いて置けば好かつたと後悔した。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
ソロドフニコフはこの時始て此男の顔をくはしく見た。此男はまだひどく若い。殆ど童子だと云つても好い位である。鼻の下にも頬にも鬚が少しもない。
私は自分の机の上——墨汁すみやインキで汚れたり小刀でゑぐり削られたりした机の上の景色、そこに取出す繪、書籍、雜誌などのことをくはしく御話して見たら
此等の事にくはしき天の淑女今我等に告げて、かしこにゆけそこに門ありといへるなり。 八八—九〇
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
堅田の祐菴は水の味を知るに於てくはし。琵琶湖の水、甲処に於て汲む者と乙処に於て汲む者とを弁じてあやまらざりしといふ。茶博士たるもの、まことに是の如くなるべき也。
(新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
儒者はアントニオの拉甸ラテン語にくはしからざることよと云ひ、政治家は稠人ちうじんの前にありて、ことさらに我に問ふにわが知らざるところの政治上の事をもてし、われを苦めて自ら得たりとし
斯かる些末なる事をくはしく認め置き候は、此手紙を読む人の小生を狂人と思ふが如きことありては遺憾なる故、小生が虚心平気に将来の為を思ひ静に死に就く者なることを証明せむが為に候。
壽阿彌の姪が茶技ちやきくはしかつたことは、伯父をぢの手紙に徴して知ることが出來るが、その蒔繪をくしたことは、刀自の話に由つて知られる。
寿阿弥の手紙 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
汝等は我等をこの處にくはしとおもへるならむ、されど我等も汝等と同じ旅客なり 六一—六三
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
この当時の光景ありさまは『懴悔録』の中にくはしく記載してあつた。丑松は身につまされるかして、幾度いくたびか読みかけた本を閉ぢて、目をつぶつて、やがて其を読むのは苦しくなつて来た。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
医学よりして外、国語学にくはしく、歌文を作つた。榛軒の家に開かれた源氏物語の講筵には、寿阿弥と此人とが請ぜられた。又善書であつた。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
しかし劇の沿革も亦わたくしのつまびらかにせざる所であるから、若し誤があつたら、其道にくはしい人の教を乞ひたい。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
若しわたくしがくはしく山陽の文を読んだなら、此の如き誤をばなさなかつたであらう。山陽は「尋特召之東邸、給三十口、准大監察、将孥東徙、居丸山邸舎」
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
次で置鹽棠園おしほたうゑんさんの手紙が來て、わたくしは苾堂の事を一層くはしく知ることが出來た。
寿阿弥の手紙 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
信憑しんぴようすべき記載もなく、又其事にあづかつた人も亡くなつたので、私はくはしく知らぬが、裁判官の中にも同志の人たちに同情するものがあつたので、苛酷な処置にはでなかつたさうである。
津下四郎左衛門 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
此の旅行は、関西のある大会社でむつかしい事件が起つて、政府の方からの内意をも受けて、民法にくはしい博士が、特に実地に就いて調査する為めに、表向は休暇を貰つて出掛けるのである。
魔睡 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
そこで現に公にせられてゐる、大塩に関した書籍の中で、一番多くの史料を使つて、一番くはしく書いてある幸田成友かうだしげとも君の「大塩平八郎」を読み、同君の新小説に出した同題の記事を読んだ。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
此の則と云ふことは文語になつて來てから又一層くはしくなるのであります。世界中で最も發音的に完全な假名は古い所では Sanskrit の音字、新しい所では伊太利イタリアの音字だと申します。
仮名遣意見 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
長文の訴状の末三分の二程は筆者九郎右衛門の身囲みがこひである。堀が今少しくくはしく知りたいと思ふやうな事は書いてなくて、読んでも読んでも、陰謀に対する九郎右衛門の立場、疑懼ぎく愁訴しうそである。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
私は先づ父の行状を出来るだけくはしく知らうとした。
津下四郎左衛門 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)