立出たちいづ)” の例文
然れども夜遊病患者の如く「我」を忘れて立出たちいづるものにはあらざるなり、何処までも生命の眼を以て、超自然のものを観るなり。
内部生命論 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
中がらすの障子のうちには今様いまやう按察あぜち後室こうしつ珠数じゆずをつまぐつて、かぶりの若紫わかむらさき立出たちいづるやと思はるる、その一トかまへが大黒屋の寮なり。
たけくらべ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
呼鈴よびりんと共に立出たちいづる日本人の給仕ヴワレエに案内されて直樣廣い客間に這入ると、高い天井、眞直な壁、平な敷物、重々しく垂下る窓の窓掛に、室内一體の沈靜した明い空氣の感覺が
新帰朝者日記 (旧字旧仮名) / 永井荷風(著)
なかがらすの障子しようじのうちには今樣いまやう按察あぜち後室こうしつ珠數じゆずをつまぐつて、かぶりの若紫わかむらさき立出たちいづるやとおもはるゝ、その一ツかまへが大黒屋だいこくやりようなり。
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
龍華寺りようげじ信如しんによしゆう修業しゆげうには立出たちいづ風説うわさをも美登利みどりえてかざりき、あり意地いぢをばそのまゝにふうめて、此處こゝしばらくのあやしの現象さまれをれともおもはれず
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
龍華寺の信如が我が宗の修業の庭に立出たちいづ風説うわさをも美登利は絶えて聞かざりき、有し意地をばそのままに封じ込めて、此処しばらくの怪しの現象さまに我れを我れとも思はれず
たけくらべ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
せしがまたことさらにホヽとわらつてじやうさま一寸ちよつ御覽ごらんあそばせこのマア樣子やうす可笑をかしいことよと面白おもしろげにいざなはれてなんぞとばかり立出たちいづ優子いうこ八重やへ何故なぜ其樣そのやうなことが可笑をかしいぞわたしにはなんともきを
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
朝冷あさすずはいつしか過ぎて日かげの暑くなるに、正太さん又晩によ、私の寮へも遊びにお出でな、燈籠とうろうながして、お魚追ひましよ、池の橋が直つたればこわい事は無いと言ひ捨てに立出たちいづる美登利の姿
たけくらべ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
下足札げそくふだそろへてがらんがらんのおともいそがしや夕暮ゆふぐれより羽織はおりひきかけて立出たちいづれば、うしろに切火きりびうちかくる女房にようぼうかほもこれが見納みおさめか十にんぎりの側杖そばづえ無理情死むりしんぢうのしそこね、うらみはかゝるのはてあやふく
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
くしじようさまにもぞおよろこ我身わがみとても其通そのとほりなり御返事おへんじ屹度きつとまちますとえば點頭うなづきながら立出たちいづまはゑんのきばのたちばなそでにかをりて何時いつしつき中垣なかがきのほとりふきのぼる若竹わかたけ葉風はかぜさら/\としてはつほとゝぎすまつべきなりとやを
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)