ひで)” の例文
嘉兵衛の妻おひでは、蒼白めた顔でしげしげと家の内を見回していたが、やがて灯火から顔を外向けてそっと袖口を眼へ押当てた。
暗がりの乙松 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
もし、このことをひでちゃんが、おねえさんにはなしたら、おねえさんが、うちじゅうのひとはなしして、たいへんだとおもったからでしょう。
二少年の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「妻ア——ウワア。なンみンだンにイ——。か——き——くンるえ——テヘヘヘヘ。ショレみたんよ……みつひでエどンの……」
いなか、の、じけん (新字新仮名) / 夢野久作(著)
朝野屋の名物娘おひでが、人に反対や遠慮をさせたことのない、圧倒的な調子でこう平次に頼んで行ってからのことでした。
「ね、皆さんにお願ひがあるのよ。内のひで坊がね、お仲間に入れて呉れ、と云つて諾かないんだけれども、一処に遊んでやつて呉れませんか。」
泣き笑ひ (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
なかでもいちばん人気を呼んだものは、当日の結び相撲だったひでうら三右衛門さんえもんと、江戸錦えどにしき四郎太夫しろうだゆうの一番でありました。
京部東洞院姉小路に住んでゐる池田玄俊げんしゆんの三男祐二は、母宇野氏ひでが死んで、大坂平野町の伯父池田瑞仙に養はれた。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
詮ずればひでを忘れよというなり。その事をば、母上の御名おんなにかけて誓えよと、常にミリヤアドのいえるなりき。
誓之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「いゝえ、炭問屋すみどんやうにつぶれて、お厩橋うまやばした時わたくし縁付えんづいたのです」「おまへ御亭主ごていしゆは」「ひでらうつて五代目でございます」「早く死んだのかえ」
塩原多助旅日記 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
二十歳に近い伊藤のたけさん、その弟のひでさん、藤野のひとしさん、戸塚のたかさんと私の二つ違ひの兄とで、皆十五、六歳の年恰好、おいさんを合せて八人の一行であつた。
初旅の残像 (新字旧仮名) / 安倍能成(著)
「アアひでちゃんや吉ちゃんは気の毒だね。何にも知らなかったのか」と云いました。
孤島の鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
請取うけとらざるよし持參金のたかは何程なるや申し立べしと有に八五郎は何事なるやと思ひしにかゝる尋ねなれば意外に喜び娘が持參金は百兩に御座候と申立ければ大岡殿五兵衞をられ其方はよめひで
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
此二人の少女は共に東京電話交換局とうきょうでんわこうくわんきょくの交換手であって、主人の少女は江藤えとうひでという、客の少女は田川たがわとみといい、交換手としては両人ふたりとも老練の方であるがお秀は局を勤めるようになった以来
二少女 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
「いったいおひでがまた余計な事を云ってやるからいけない」
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「おひで、栄坊の鼻をかんでやりなさい。」
良寛物語 手毬と鉢の子 (新字旧仮名) / 新美南吉(著)
栗鼠りすのことを、くりねずみといったんで、みんながわらったんだ。」と、ひでちゃんが、こたえたので、おねえさんも、して
二少年の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
玄俊は京都に来た翌年、天明三年に妻をめとつた。近江国栗太郡くりもとごほり草津の人宇野杢右衛門の姉ひでと云ふものであつた。婚姻をしたのは春の初であつただらう。此年の内に長男が生れた。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
お庭に立並んでいた寵妾おひでの方を初め五六人の腰元が固唾かたずをのんで立ちすくんだ。
名君忠之 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
取上になりおつ沙汰さたに及ぶとの事にて其日は下られけり扨又山崎町なる油屋五兵衞の番頭久兵衞は今日はからずも寶珠花屋はうじゆばなや八五郎の娘おひで離縁状りえんじやうの一件に付後藤半四郎に再會さいくわいして大いに驚きしと雖も先々離縁状を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
半之丞の娘おひで、涙ながらにこう語り進みました。
名をひでという、どこかで聞いたことのあるような。
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
しょうちゃんの時計とけいおとは、ここまできこえる。」と、ひでちゃんが、すこしはなれたところにっていて、いいました。
正二くんの時計 (新字新仮名) / 小川未明(著)
令図に一男一女があって、だん富穀ふこくといい、じょひでといった。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
「おッ、手前てめえは五位のひでじゃないか」
あるのこと、ひでちゃんが、たっちゃんのうちあそびにきました。ちょうどおねえさんも、うちにいらっしゃいました。
二少年の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
しょうちゃんのは、すばらしくおおきいんだね。」と、ひでちゃんが、いいました。
正二くんの時計 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「あたった! おとうさん、ひでちゃんのにいさんは、うまいでしょう。」
すずめを打つ (新字新仮名) / 小川未明(著)
ひでちゃん、まだごはんにならない。」とあにそとからこえをかけました。
ペスときょうだい (新字新仮名) / 小川未明(著)
ひでちゃんの、にいさんだ。」
すずめを打つ (新字新仮名) / 小川未明(著)