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煙管
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キセル
ふりがな文庫
“
煙管
(
キセル
)” の例文
それは康熙年間の
某
(
ある
)
夏の午後のことである。涼亭には
蒲留仙
(
ほりゅうせん
)
が腰をかけて、長い
煙管
(
キセル
)
をくわえながらうっとりとして何か考えている。
涼亭:――序に代へて――
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
この
刹那
(
せつな
)
に箱の
蓋
(
ふた
)
をあけると、案の通り土で造った円筒状の
煙管
(
キセル
)
の雁首が一箇出た。箱の蓋を
能
(
よ
)
く見ると、
煙草
(
タバコ
)
を刻んだ跡もある。
土塊石片録
(新字新仮名)
/
伊波普猷
(著)
是も今は昔、或る一人の親族の老女に教えられたのは、
煙管
(
キセル
)
で吸っていると時々何とも言えぬくらい、甘くておいしいことがある。
木綿以前の事
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
『矢筈草』いよいよこれより本題に
入
(
い
)
らざるべからざる所となりぬ。然るに作者
俄
(
にわか
)
に
惑
(
まど
)
うて思案
投首
(
なげくび
)
煙管
(
キセル
)
銜
(
くわ
)
へて腕こまねくのみ。
矢はずぐさ
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
暗に嫁のお冬と言わないばかり、無事な右手に握った
煙管
(
キセル
)
で、
自棄
(
やけ
)
に灰吹を叩きます。なるほど福島浪人というのは嘘でなかったでしょう。
銭形平次捕物控:011 南蛮秘法箋
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
▼ もっと見る
のどがかわけば小間使いが
天目台
(
てんもくだい
)
をすりあしでささげてまいりたばこがほしければ一ぷく一ぷくそばから長い
煙管
(
キセル
)
につめて火をつけて出す
蘆刈
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
その隣りが酒屋の物置と酒屋の店蔵で、そのさきが
煙草
(
タバコ
)
問屋、
煙管
(
キセル
)
の
羅宇
(
ラオ
)
問屋、つづいて大丸へむかった角店の仏具屋の庭の塀と店蔵だった。
旧聞日本橋:02 町の構成
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
こういう時に、宗右衛門が酒気を帯びていると、銓を側に引き附けて置いて、忍耐を教えるといって、
戯
(
たわむれ
)
のように
煙管
(
キセル
)
で頭を打つことがある。
渋江抽斎
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
どれも辮髪を背中にたれ、赤い珊瑚玉のついた帽子を被り、長い
煙管
(
キセル
)
を口にくわえて、悲しそうな顔をしながら、地上に
円
(
まる
)
くうずくまっていた。
日清戦争異聞:(原田重吉の夢)
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
健が
平生
(
へいぜい
)
人に
魂消
(
たまげ
)
られる程の喫煙家で、職員室に入つて来ると、
甚麽
(
どんな
)
事があらうと先づ
煙管
(
キセル
)
を取上げる男であることは、孝子もよく知つてゐた。
足跡
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
宗平は
真鍮
(
しんちゅう
)
の
煙管
(
キセル
)
に
莨
(
たばこ
)
をつめつつ語る、さして興味ある物語でもないが、こうした時こうした場所では、それも
趣
(
おもむ
)
きふかくきかれたのであった。
白峰の麓
(新字新仮名)
/
大下藤次郎
(著)
紙筆
(
しひつ
)
、
硯机
(
けんき
)
、
煙管
(
キセル
)
、
巾櫛
(
きんしつ
)
の類より、炉中の火、
硯池
(
けんち
)
の水に至るまで、その主の許可あるに
非
(
あら
)
ずして使用することを許さず
鴎外の思い出
(新字新仮名)
/
小金井喜美子
(著)
寝すごしたのだろうと思い、わしは自分で
煙草盆
(
たばこぼん
)
を引き寄せ、マッチで
煙管
(
キセル
)
に火を
点
(
つ
)
け一二服吸い、
咳
(
せ
)
き入ったが、その音でも奈世は起きて来ない。
面
(新字新仮名)
/
富田常雄
(著)
久助は今、岩に腰をかけて、
煙管
(
キセル
)
でぷかぷかと一服休んでいる。紫色の煙が澄み切った秋の空気の中を静かに上っている。赤
蜻蛉
(
とんぼ
)
がすいすいと飛んでいる。
忠僕
(新字新仮名)
/
池谷信三郎
(著)
彼は頭にはフェルトのきたない帽子を
冠
(
かぶ
)
り、身には一枚の
極
(
ご
)
く薄い綿入れを着て、体はすっかりちゞこまっていた。手には一つの紙包と一本の長い
煙管
(
キセル
)
とを持っていた。
故郷
(新字新仮名)
/
魯迅
(著)
間もなく六やんは
煙管
(
キセル
)
を腰の煙草入れにしまいこみ、背のびしながらたちあがった。そして馬の手綱をほどいたあと、なに気なく坂の下を眺めた。六やんはびっくりした。
南方郵信
(新字新仮名)
/
中村地平
(著)
長火鉢の前にいたお神さんは、
煙管
(
キセル
)
で事務所の方向を指しながら、親切に教えてくれた。
情鬼
(新字新仮名)
/
大倉燁子
(著)
この通風筒というのは、
煙管
(
キセル
)
の
雁首
(
がんくび
)
の化物みたいな、風をとおす大きな筒です。
怪塔王
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
夏雄さんの彫り物では
鏡蓋
(
かがみぶた
)
、
前金具
(
まえかなぐ
)
、
煙管
(
キセル
)
など沢山に所持しており、また古いものにも精通しておられ、柏木貨一郎というとその頃の数寄者仲間には知られた人で、同氏が所持していたものといえば
幕末維新懐古談:51 大隈綾子刀自の思い出
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
「親分の
前
(
めえ
)
だが、泥棒が
金唐革
(
きんからかわ
)
の飛切り上等の
懐中
(
ふところ
)
煙草入を忘れて行くという法はねえ。おまけに
煙管
(
キセル
)
は銀だ。あれは安くちゃ買えませんぜ」
銭形平次捕物控:050 碁敵
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
このわたしをわたりましたのが仕合わせでござりましたと腰のあいだから
煙草
(
タバコ
)
入れの筒を抜き取って
煙管
(
キセル
)
にきざみをつめながらいうのである。
蘆刈
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
築地本願寺畔の
僑居
(
きょうきょ
)
に稿を起したわたしの長篇小説はかくの如くして、遂に
煙管
(
キセル
)
の
脂
(
やに
)
を拭う
反古
(
ほご
)
となるより外、何の用をもなさぬものとなった。
十日の菊
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
和三郎は小腕をまくって、ブルブル
慄
(
ふる
)
えながら、冷静をとりもどそうとして、
煙管
(
キセル
)
に火を
点
(
つ
)
けたが、のぼせているので
火皿
(
ほざら
)
の方を口へもっていった。
朱絃舎浜子
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
どれも大きな
髷
(
まげ
)
に結って、綺麗な
簪
(
かんざし
)
をさし、緋の
長襦袢
(
ながじゅばん
)
に広くない帯、緋繻子の広い
衿
(
えり
)
を附けた
掛
(
かけ
)
という姿です。すっかり順に並びますと、その前へ
蒔絵
(
まきえ
)
の煙草盆と長い
煙管
(
キセル
)
とを置きます。
鴎外の思い出
(新字新仮名)
/
小金井喜美子
(著)
艫の舵柄の傍では、年老った船頭が一杯機嫌で
胡座
(
あぐら
)
をかき、大きな
煙管
(
キセル
)
で煙草を
喫
(
の
)
みながら舵柄を見て、二人の
壮
(
わか
)
い
舵手
(
かこ
)
に冗談口を利いていた。煙草の火の光が暗い中に螢火のように光っていた。
幽霊の自筆
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
福地先生は風呂より上りし所と見えて
平袖中形牡丹
(
ひらそでちゅうがたぼたん
)
の
浴衣
(
ゆかた
)
に
縮緬
(
ちりめん
)
の
兵児帯
(
へこおび
)
を前にて結び
大
(
だい
)
なる革蒲団の上に座し
徐
(
おもむろ
)
に銀のべの
煙管
(
キセル
)
にて煙草のみてをられけり。
書かでもの記
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
唐物問屋
(
とうぶつどんや
)
の荷蔵の裏になって、ずっと高い蔵つづきの日かげなので、稗蒔屋はのどかになたまめ
煙管
(
キセル
)
をくわえ、風鈴屋はチロリン、チロリンと
微風
(
そよかぜ
)
に客をよばせている。
旧聞日本橋:14 西洋の唐茄子
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
煙管
(
キセル
)
を指先で廻して、こんな事をポンポンと言いながらも妙に考え込んでおります。
銭形平次捕物控:009 人肌地蔵
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
せまい
道巾
(
みちはば
)
のところへいったら、小さな店に、さびしげにいた黒い
白粉
(
おしろい
)
をつけたようなお女郎が「おちゃびんだ」とどなって、
煙管
(
キセル
)
を畳に投げつけたので、私はびっくりして
旧聞日本橋:15 流れた唾き
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
追手
(
おって
)
に
捕
(
つか
)
まって元の
曲輪
(
くるわ
)
へ送り戻されれば、
煙管
(
キセル
)
の
折檻
(
せっかん
)
に、またしても毎夜の憂きつとめ。死ぬといい消えるというが、この世の中にこの女の望み得べき幸福の絶頂なのである。
妾宅
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
その上
灰吹
(
はいふき
)
をポンとならして
煙管
(
キセル
)
をはたくのが癖であることを、彼女がよく知っているので、そんな事にまで不自由を忍ばなければならなかったので、彼女が辞し去ったあとで
樋口一葉
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
その間に抽斗の草稿は一枚二枚と剥ぎ裂かれて、
煙管
(
キセル
)
の
脂
(
やに
)
を拭う
紙捻
(
こより
)
になったり、ランプの油壺やホヤを拭う反古紙になったりして、百枚ほどの草稿は今既に幾枚をも余さなくなった。
十日の菊
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
おしょさんはなんでだまって
煙草
(
タバコ
)
なんか長い
煙管
(
キセル
)
からのんきにふかしてるのだろう——
旧聞日本橋:19 明治座今昔
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
初めて片膝を蒲団の上に載せるように枕頭に坐って、先ず一服した
後
(
あと
)
の
煙管
(
キセル
)
を男に出してやる——そういう時々先生はお妾に対して口には出さない無限の哀傷と無限の感謝を覚えるのである。
妾宅
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
舞台と
平時
(
ふだん
)
との区別もなく白く塗りたてて、芸に色気が出ないで、ただの時は、いやに色っぽい、女役者の悪いところだけ真似るのを
嫌
(
いや
)
がっている
九女八
(
くめはち
)
は、銀のべの
煙管
(
キセル
)
をおいて
市川九女八
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
祖母は何もかも一番早くゆくから一番さきにしまいになる。すると、長い
煙管
(
キセル
)
をついて監視人と早がわり、御飯粒ひとつでもこぼすと、その始末をしてしまわないうちは食べさせない。
旧聞日本橋:15 流れた唾き
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
あたしの家の近所で、一番早くなくなったのが、
両換屋
(
りょうがえや
)
と、
煙管
(
キセル
)
のらお問屋だ。
旧聞日本橋:21 議事堂炎上
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
といいながら、器用に、ポンと音をさせて
煙管
(
キセル
)
の
吸殻
(
すいがら
)
を
吐月峰
(
はいふき
)
へはたいた。
一世お鯉
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
おじいさんは
刀豆
(
なたまめ
)
煙管
(
キセル
)
をジュッと吸った。
旧聞日本橋:08 木魚の顔
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
“煙管”の意味
《名詞》
キセル。
ボイラーの火を通過させるための管。
(出典:Wiktionary)
“煙管”の解説
煙管(きせる)とは、日本の刻みたばこ用の喫煙具の一種で、パイプに類似する。
(出典:Wikipedia)
煙
常用漢字
中学
部首:⽕
13画
管
常用漢字
小4
部首:⽵
14画
“煙管”で始まる語句
煙管筒
煙管入
煙管屋
煙管貝
煙管気狂