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溝泥
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どぶどろ
ふりがな文庫
“
溝泥
(
どぶどろ
)” の例文
堀割は丁度真昼の
引汐
(
ひきしお
)
で
真黒
(
まっくろ
)
な汚ない
泥土
(
でいど
)
の底を見せている上に、四月の暖い日光に照付けられて、
溝泥
(
どぶどろ
)
の臭気を
盛
(
さかん
)
に発散している。
すみだ川
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
もう、一面に算を乱して、
溝泥
(
どぶどろ
)
を
擲附
(
たたきつ
)
けたような
血
(
のり
)
の中に、伸びたり、縮んだり、転がったり、何十人だか数が分りません。——
星女郎
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「いやア、ひどい目に逢った。大地震があってネ、地中から吹き上げられたところが、日本橋の下のあの臭い
溝泥
(
どぶどろ
)
の川の中サ」
地中魔
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
ダイヤや真珠が
溝泥
(
どぶどろ
)
の中に棄ててあるということですけれども……僕にとっては
生命
(
いのち
)
にも換えられない大切なものなのです。
死後の恋
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
受取つて見ると、成程手頃な脇差で、
溝泥
(
どぶどろ
)
で滅茶々々になつて居りますが、
鍔
(
つば
)
から上は大して汚れず、
紺糸
(
こんいと
)
を卷いた柄には、ベツトリ血がこびり附いて居ります。
銭形平次捕物控:099 お篠姉妹
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
▼ もっと見る
灰屋
(
はいや
)
、
夜
(
よ
)
かご、
祭文語
(
さいもんがた
)
り、屑拾い、傘張り、夜鳴きうどんなど、もっとも貧しい人達がこのトンネル長屋にあつまって、いつもその狭い路地には、
溝泥
(
どぶどろ
)
の臭気と
丹下左膳:02 こけ猿の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
此の辺の道路は雨が降ると
溝泥
(
どぶどろ
)
になる癖に、此の日は堅い冷めたい鉄板の如き地肌を寒風に曝して、其の上へ叩き付けられる砂塵が、鼠花火のように二三町渦を巻いて走った。
The Affair of Two Watches
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
大体土瓶の運命は
果
(
はか
)
ないもので、口が
毀
(
こわ
)
れ、
蓋
(
ふた
)
が
破
(
わ
)
れ、耳がもぎれ、それに火という敵と闘わねばなりません。その末路を
芥溜
(
ごみため
)
や
溝泥
(
どぶどろ
)
の中に見かけることは珍らしくありません。
益子の絵土瓶
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
溝泥
(
どぶどろ
)
をこね返したような雪道はだんだんきれいになって行って、地面に近い所が水になってしまった積雪の中に、君の古い
兵隊長靴
(
へいたいながぐつ
)
はややともするとすぽりすぽりと踏み込んだ。
生まれいずる悩み
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
「
迚
(
とて
)
も駄目です。この通り
溝泥
(
どぶどろ
)
だらけですから、俥が汚れて明日の商売に差支えます」
一年の計
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
溝泥
(
どぶどろ
)
を座敷の中に
蒔
(
ま
)
き散らすようなことをして、そうして世間というやつは、いっぱし正義を行い、道徳を保護しているのだという気になるのだからたまりません——誰いうとなく
大菩薩峠:33 不破の関の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
足溜
(
あしだま
)
りなく
転
(
こ
)
ける
機会
(
はづみ
)
に手の物を取落して、一枚はづれし溝板のひまよりざらざらと
翻
(
こぼ
)
れ入れば、下は
行水
(
ゆくみづ
)
きたなき
溝泥
(
どぶどろ
)
なり、
幾度
(
いくたび
)
も
覗
(
のぞ
)
いては見たれどこれをば何として拾はれませう
にごりえ
(新字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
新見は、全身の
溝泥
(
どぶどろ
)
に鼻をしかめて
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
堀割
(
ほりわり
)
は
丁度
(
ちやうど
)
真昼
(
まひる
)
の
引汐
(
ひきしほ
)
で
真黒
(
まつくろ
)
な
汚
(
きた
)
ない
泥土
(
でいど
)
の
底
(
そこ
)
を見せてゐる上に、四月の
暖
(
あたゝか
)
い日光に
照付
(
てりつ
)
けられて、
溝泥
(
どぶどろ
)
の
臭気
(
しうき
)
を
盛
(
さかん
)
に発散して
居
(
ゐ
)
る。
すみだ川
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
棕櫚箒
(
しゅろぼうき
)
の朽ちたのに、
溝泥
(
どぶどろ
)
を
掻廻
(
かきまわ
)
して……また下水の悪い町内でしたからな……そいつを
振廻
(
ふりまわ
)
わすのが、お流儀でしたな。
菊あわせ
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
受取ってみると、なるほど手頃な脇差で、
溝泥
(
どぶどろ
)
で滅茶滅茶になっておりますが、
鍔
(
つば
)
から上は大して汚れず、紺糸を巻いた柄には、ベットリ血がこびり付いております。
銭形平次捕物控:099 お篠姉妹
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
橋の袂から、濠割のなかを覗きこむと、昼間見れば真黒な
溝泥
(
どぶどろ
)
の水を湛えた汚い水面が、両岸の工場の塀外にさし出た常夜灯の眩しい光に照り映えて、まるで鏡のように光っていた。
深夜の市長
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
足溜
(
あしだま
)
りなく
轉
(
こ
)
ける
機會
(
はづみ
)
に
手
(
て
)
の
物
(
もの
)
を
取落
(
とりおと
)
して、一
枚
(
まい
)
はづれし
溝板
(
どぶいた
)
のひまよりざら/\と
翻
(
こぼ
)
れ
入
(
い
)
れば、
下
(
した
)
は
行水
(
ゆくみづ
)
きたなき
溝泥
(
どぶどろ
)
なり、
幾度
(
いくたび
)
も
覗
(
のぞ
)
いては
見
(
み
)
たれど
是
(
こ
)
れをば
何
(
なん
)
として
拾
(
ひろ
)
はれませう
にごりえ
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
人間の尊とい血と涙を片っ端から
溝泥
(
どぶどろ
)
の中に踏み込んで、見返りもせずに濶歩して行くドリアングレーなぞいう代表的な連中は、もう親友以上に心安くなって、スッカリ悪魔通になってしまったので
鉄鎚
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
溝泥
(
どぶどろ
)
を呑んだ腹いせに、眼玉を三角にしてがなり出した。
つづれ烏羽玉
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
其処
(
そこ
)
へ
七
(
なな
)
、
八
(
や
)
ツになる子供が
喧嘩
(
けんか
)
をして
溝
(
どぶ
)
へ落ちたとやら、
衣服
(
きもの
)
を
溝泥
(
どぶどろ
)
だらけにして泣きわめきながら帰って来る。小言がその方へ移る。
監獄署の裏
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
砂を
掴
(
つか
)
む、小砂利を投げる、
溝泥
(
どぶどろ
)
を
掻廻
(
かきまわ
)
す、
喧嘩
(
けんか
)
はするが誰も味方をするものはない。日が暮れなければ母親は帰らぬから、昼の内は
孤児
(
みなしご
)
同様。
黒百合
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「お徳の死骸を見て、びっくりして抱き上げたんですもの、
溝泥
(
どぶどろ
)
も血も付きますよ」
銭形平次捕物控:058 身投げする女
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
へん、
異
(
おつ
)
う旦那ぶりやがって笑かしやがらい。こう聞いとくんねえ、
私
(
わっし
)
アね、お嬢さんの下さるんなら、
溝泥
(
どぶどろ
)
だって、舌鼓だ、這い廻って
甞
(
な
)
めるでさ。
式部小路
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
お嬢さんの下さるもんなら、
溝泥
(
どぶどろ
)
も甘露だといった口にも、これはちと
辟易
(
へきえき
)
だ、盃を
睨
(
にら
)
み詰めて、目の玉を白く、白酒を黒くして、もじつくと、山の井さんが大笑いして
式部小路
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
夢がどうした、そんな事は
木片
(
こっぱ
)
でもない。——俺が
汝等
(
うぬら
)
の手で
面
(
つら
)
へ
溝泥
(
どぶどろ
)
を塗られたのは夢じゃないぞ。この
赫
(
かッ
)
と開けた大きな目を見ろい。——よくも
汝
(
うぬ
)
、溝泥を塗りおったな。
鷭狩
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
美人は
紙縷
(
こより
)
を
撚
(
ひね
)
りて、煙管を通し、
溝泥
(
どぶどろ
)
のごとき脂に
面
(
おもて
)
を
皺
(
しわ
)
めて
義血侠血
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
溝
常用漢字
中学
部首:⽔
13画
泥
常用漢字
中学
部首:⽔
8画
“溝泥”で始まる語句
溝泥臭