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権柄
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けんぺい
ふりがな文庫
“
権柄
(
けんぺい
)” の例文
旧字:
權柄
みち子は柚木の
権柄
(
けんぺい
)
ずくにたちまち反抗心を起して「人が親切に持って来てやったのを、そんなに威張るのなら、もうやらないわよ」
老妓抄
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
そこで、いくらかの抗弁はこころみたものの、相手は、役職も上だし、禁門の
王
(
おう
)
師範とあっては、役人
面
(
づら
)
の
権柄
(
けんぺい
)
も歯が立たなかった。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
コチトラは敗軍の将だから、当節の殿様の
権柄
(
けんぺい
)
については不案内だが、文明開化の御時世とはいえ、無理が通れば道理がひッこむ。
明治開化 安吾捕物:15 その十四 ロッテナム美人術
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
我州民ノ自カラ法令ヲ議定スベキ権ヲ奪却シテ、国王ノ徒党ヨリ我輩ヲ制スルノ
権柄
(
けんぺい
)
ヲ執ルトテ、之ヲ一般ニ布告セントスル為メナリ。
アメリカ独立宣言
(新字旧仮名)
/
トマス・ジェファーソン
(著)
警視庁
(
けいしちょう
)
の
技師
(
ぎし
)
が、ふいに
牛舎
(
ぎゅうしゃ
)
の
検分
(
けんぶん
)
にきた。いきなり牛舎のまえに車にのりこんできて、すこぶる
権柄
(
けんぺい
)
に主人はいるかとどなった。
箸
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
▼ もっと見る
陽気な声を無理に圧迫して
陰欝
(
いんうつ
)
にしたのがこの遠吠である。
躁狂
(
そうきょう
)
な響を
権柄
(
けんぺい
)
ずくで沈痛ならしめているのがこの遠吠である。自由でない。
琴のそら音
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
右のごとく、国民は政府と約束して政令の
権柄
(
けんぺい
)
を政府に任せたる者なれば、かりそめにもこの約束を
違
(
たが
)
えて法に
背
(
そむ
)
くべからず。
学問のすすめ
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
次の日の朝、いつものように部屋借の二階で寝ころがっていると、階下の塀の外で、おいおい、と
権柄
(
けんぺい
)
に呼ぶものがある。
顎十郎捕物帳:03 都鳥
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
右のように説明されてみると、あながち役人が
権柄
(
けんぺい
)
のためや、物好きに抜かせてみようというわけではなく、当然のお役目のために要求するのだ。
大菩薩峠:37 恐山の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
などと、少し
権柄
(
けんぺい
)
ずくになって居るのは五十前後の用人らしい男、あとは二人の折助で、店先には死骸を運んで行く
駕籠
(
かご
)
が用意してある様子です。
銭形平次捕物控:238 恋患い
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
むら気で無分別で
権柄
(
けんぺい
)
がましい、いささか
智慧
(
ちえ
)
の足りない連中で、グーロフは恋が
冷
(
さ
)
めだすにつれて相手の美しさがかえって鼻について
厭
(
いや
)
でならず
犬を連れた奥さん
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
絵がまだ
纒
(
まと
)
まっていないからと断わったのに、どうしても見ると云い張った
権柄
(
けんぺい
)
ずくに
肚
(
はら
)
が立ったのかもしれない。
扇野
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
それから、
本家
(
ほんけ
)
の
附人
(
つけびと
)
として、彼が
陰
(
いん
)
に持っている
権柄
(
けんぺい
)
を憎んだ。最後に、彼の「家」を中心とする忠義を憎んだ。
忠義
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
都合よいのを
選
(
よ
)
り取り見取りで。アトは要らぬと玄関払いじゃ。ならば私立はどうかと見ますと。これは何しろ商売本位じゃ。みんな金ずく
権柄
(
けんぺい
)
ずくめの。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
この紳士は
権柄
(
けんぺい
)
ずくにおためごかしを兼ねて、且つ色男なんだから極めて計らいにくいのであります。
黒百合
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
五代の法王はその
権柄
(
けんぺい
)
を受けて、その時からいよいよ教政一致ということにしたのです。ですから教政一致になったのはまだチベットでは三百年経たぬ位の事なんです。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
勿論、主人持ちの小僧や、年寄りの
巾着
(
きんちゃく
)
なぞは狙わない。彼女が狙ったのは、
浅黄裏
(
あさぎうら
)
の、
権柄
(
けんぺい
)
なくせにきょろきょろまなこの勤番侍や、乙に気取った町人のふところだった。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
むりでもそれに違いない、と
権柄
(
けんぺい
)
ずくで自説を
貫
(
つらぬ
)
いて、こそこそと山を
下
(
お
)
りはじめる。
千鳥
(新字新仮名)
/
鈴木三重吉
(著)
死人を
舐
(
ねぶ
)
れ、といわれや、ねぶります。
料理
(
つく
)
って食え、といわれても、いわれたとおりします。役人の命令なんて、誰がきくもんか。
権柄
(
けんぺい
)
ずくなら、いやなこってす。……なあ、新公
花と龍
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
厩橋市中取締を役目としているのであるけれど、雀右衛門という男は、この頃の政府の役人のように
権柄
(
けんぺい
)
づくで賄賂を人民から捲き上げるのを常習としていた。そして酒の上が甚だよくない。
純情狸
(新字新仮名)
/
佐藤垢石
(著)
老師! 老師! オースチン老師!
権柄
(
けんぺい
)
ずくで物を云ったは、この
某
(
それがし
)
のあやまちでござる。取消すほどにお許しくだされい。がそれにしても只今の言葉、ちと
手頼
(
たよ
)
りないではござらぬかな。
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
「そうお。」夫人の笑顔が、急に
権柄
(
けんぺい
)
ずくな常の顔に変った。
貞操問答
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
みち子は柚木の
権柄
(
けんぺい
)
ずくにたちまち反抗心を起して「人が親切に持って来てやったのを、そんなに威張るのなら、もうやらないわよ」
老妓抄
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
いずれは白洲にでも曳きだされて、
権柄
(
けんぺい
)
な言いがかりやら
笞
(
しもと
)
にも耐えなければなるまいかと、腹もきめていた兼好なのだ。
私本太平記:04 帝獄帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「あら
厭
(
いや
)
だ、さあ云えだなんて、そんな
権柄
(
けんぺい
)
ずくで誰が云うもんですか」と細帯を巻き付けたままどっかと腰を
据
(
す
)
える。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
そう
権柄
(
けんぺい
)
におっしゃるものじゃございません、せっかく、こうして危ない思いをして、人目を忍んでお願いに上ったんじゃございませんか、そこは
大菩薩峠:37 恐山の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
昌平橋の
角井憲庵
(
かどいけんあん
)
——その頃蘭法で聞えた名医のところへ、半ば
権柄
(
けんぺい
)
ずくでつれ込んだのは、その日の夕方でした。
銭形平次捕物控:084 お染の歎き
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
権柄
(
けんぺい
)
に任せて粗暴放埓な振舞いをし、時には訳もなく手を挙げて打つようなことすらあった。
湖畔
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
無理な出世の
報
(
むく
)
いよなんどと。白い眼をされ舌さし出され。うしろ指をば
指
(
さ
)
さるる
辛
(
つ
)
らさ。御門構えの
估券
(
こけん
)
にかかわる。そこで情実、
権柄
(
けんぺい
)
ずくだの。縁故
辿
(
たど
)
った手数をつくして。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
花前はときどき
頭
(
あたま
)
を動かすだけで一
言
(
ごん
)
もものをいわない。技師先生
心中
(
しんちゅう
)
非常に
激高
(
げっこう
)
、なお二言三言、いっそう
権柄
(
けんぺい
)
に
命令
(
めいれい
)
したけれど、花前のことだから
冷然
(
れいぜん
)
として
相手
(
あいて
)
にならない。
箸
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
只栄華
権柄
(
けんぺい
)
の慾望を満足させるために、心にもなく日本一の勢力者、時の
公方
(
くぼう
)
の枕席の
塵
(
ちり
)
を払うことの、いかに
妄虚
(
もうきょ
)
に満たされたものであるかがはっきりと感じられて、もう一日も
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
入っちゃあならない、真暗だ、
天窓
(
あたま
)
が石のような
可恐
(
おそろし
)
い猿が居る、それが主だというじゃあないか。この国中
捌
(
さば
)
いてる知事の嬢さんが欲しくっても、金でも
権柄
(
けんぺい
)
ずくでも
叶
(
かな
)
わないというだろう。
黒百合
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
母親はふだんから、世が世ならば、こんな素町人の家の娘をうちの息子になぞ
権柄
(
けんぺい
)
ずくで貰わせられることなぞありはしない。
河明り
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
権柄
(
けんぺい
)
ずくで物を言い付ける習慣が付いているので、うっかり心付けをしておかなかったのが、ガラッ八ごときにしてやられる、重大な失策になったのです。
銭形平次捕物控:048 お藤は解く
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
といって、畏れというのは、サーベルや、鉄砲で
脅
(
おどか
)
すことではない。
権柄
(
けんぺい
)
ずくで人民を圧制することでもない。
大菩薩峠:23 他生の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
親爺の論理は何時聞いても昔し風に甚だ義理堅いものであったが、その代り今度はさ程
権柄
(
けんぺい
)
ずくでもなかった。
それから
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
と、路地の口から往来の左右を、いわゆる“
恐
(
こわ
)
らしき者”といわれる
権柄
(
けんぺい
)
と
叱咜
(
しった
)
で、群集を、押しひらいた。
新・平家物語:02 ちげぐさの巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
もとは、麹町平河町の御用聞で、先年同心の株を買い、以来、むかしのことを忘れたように
権柄
(
けんぺい
)
に肩で風を切る役人面。いよう、と言えば、
下
(
さが
)
るはずの首が、おう、と逆に空へ向くやつ。
平賀源内捕物帳:山王祭の大像
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
その
権柄
(
けんぺい
)
や無情な
笞
(
しもと
)
が、身の皮に肉に
骨髄
(
こつずい
)
に、どういう味がするものか、路傍の犬が人の手の小石を見るときのように、さんざん知って来ているからであった。
新書太閤記:09 第九分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
乗るものは無理にも窮屈な箱の中に押し込もうとする、降りるものは
権柄
(
けんぺい
)
ずくで上から
伸
(
の
)
しかかって来る。
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
門番の足軽は
権柄
(
けんぺい
)
を作ったり、また
粗略
(
そりゃく
)
にも扱わないように見せたりして、一人が
廓
(
くるわ
)
の中へ入って行きました。その間、お君は門番の控所で待たせられていました。
大菩薩峠:12 伯耆の安綱の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
ガラッ八は妙に
権柄
(
けんぺい
)
ずくです。それに応えて出て来たのは、
先刻
(
さっき
)
平次の家へ来たお茂与、——よくもこう素知らぬ顔が出来たものだと思うほど、美しく取りすましております。
銭形平次捕物控:114 遺書の罪
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
○女に向って
機嫌
(
きげん
)
を取るような男も嫌いなら、見下げて
権柄
(
けんぺい
)
づくな男も嫌い。
現代若き女性気質集
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
「だから奴らには、金力か腕か、どッちかでなけりゃあ応対もできません。弱い土地の、素直な土民と見るほど、
権柄
(
けんぺい
)
を振り廻すのが、いまの役人ですからね」
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
いつもならば
権柄
(
けんぺい
)
ずくで命令されても、このお角さんだけは米友にとって
苦手
(
にがて
)
であって、どうともすることはできないのだが、今日はいやに生やさしく頼まれるだけ
大菩薩峠:33 不破の関の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
けれども
表向
(
おもてむき
)
夫の権利を認めるだけに、腹の中には何時も不平があった。
事々
(
ことごと
)
について出て来る
権柄
(
けんぺい
)
ずくな夫の態度は、彼女に取って決して心持の好いものではなかった。
道草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「親分、町人は弱いものでございます。金と
権柄
(
けんぺい
)
と、いやがらせと、
脅
(
おど
)
かしと、
攻手
(
せめて
)
はいくらでもあります。同じ町内に住んで三千石の殿様に
睨
(
にら
)
まれちゃ、動きがとれません」
銭形平次捕物控:211 遠眼鏡の殿様
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
阿難 ——何という
権柄
(
けんぺい
)
ずくの言葉だ。
阿難と呪術師の娘
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
権柄
(
けんぺい
)
にこういいましたが、二官の体はゆるぎもせず、依然として、四、五間の距離を
持堪
(
もちこた
)
えている。
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
健三の言葉は勢い
権柄
(
けんぺい
)
ずくであった。
傷
(
きずつ
)
けられた細君の顔には不満の色がありありと見えた。
道草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
権
常用漢字
小6
部首:⽊
15画
柄
常用漢字
中学
部首:⽊
9画
“権柄”で始まる語句
権柄声
権柄的
権柄者
権柄面
権柄顔