未知みち)” の例文
次々と、その場に居合せた程の人々は、順に訊ねられたが、口数少く、いずれも女の身元については未知みちとの答ばかりであった。
電気風呂の怪死事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
けれどもそれはまったく、作者に未知みちえざる驚異きょういあたいする世界自身じしん発展はってんであって、けっして畸形きけいねあげられた煤色すすいろのユートピアではない。
ある未知みちの力がそこへ彼を引き寄せたともいえるのである。彼は立ち停まって窓を見上げると、一つの窓から房ふさとした黒い髪の頭が見えた。
なんという、ひろい、未知みち世界せかいが、みずそとにあったでしょう? 子供こどもは、たかい、雲切くもぎれのしたそらました。まるい、やさしい、つきひかりました。
魚と白鳥 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ただ重な社員の一人なんだろうと思った。余は若い時からいろいろな事を想像するくせがあるが、未知みちの人の容貌態度などはあまり脳中に描かない。
長谷川君と余 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
堀のためには、中泉が英太郎の手から受け取つて出した書付かきつけの内容は、未知みちの事の発明ではなくて、既知きちの事の証験しようけんとして期待せられてゐるのである。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
意外いがいなのは、このときはじめておかかったばかりの、全然ぜんぜん未知みちのおかたなのにもかかわらず、わたくしむねなんともいえぬしたしみのねんがむくむくといてたことで……。
僕は未知みちの女から手紙か何か貰つた時、まづ考へずにゐられぬことはその女の美人かどうかである。
僕は (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
かくして、私は、未知みちの、その時、さう思つたのであるが、遠い、神祕の世界へと、運ばれ去つた。
未知みちの世界」の夢の
どんたく:絵入り小唄集 (新字旧仮名) / 竹久夢二(著)
未知みち世界せかいあこがれるこころは、「幸福こうふくしま」でも、また、「わざわいしま」でも、極度きょくどたっしたときはわりがなかったからです。
明るき世界へ (新字新仮名) / 小川未明(著)
そうかとおもえば、ぎの瞬間しゅんかんには、わたくしはこれからきの未知みち世界せかい心細こころぼそさにふるおののいているのでした。
この未知みちともだちどうしは、たがいにって、人間にんげんなどにかかわりのない、うつくしいまぼろしの世界せかいのことを、はなしているのだともおもわれました。
雲のわくころ (新字新仮名) / 小川未明(著)
おれは、こんなかたちのない空想くうそうをいだいて、一しょうわるのでないかしらん。いやそうでない。一は、だれのうえにもみるように、未知みち幸福こうふくがやってくるのだ。
希望 (新字新仮名) / 小川未明(著)
はやく、その未知みちしまにゆきたいものだとみんなはこころおもいました。どんな困難こんなん辛苦しんくがこののちあってもそれをけてゆこうという勇気ゆうきがみんなのこころにわいたのであります。
明るき世界へ (新字新仮名) / 小川未明(著)
出口でぐち煉瓦れんがかべに、かせぎ人夫にんぷ募集ぼしゅうのビラがられていました。生活せいかつのために、未知みち土地とちへいくひとのことをかんがえると、なんとなく、むねをしめつけられるようながしました。
とびよ鳴け (新字新仮名) / 小川未明(著)
未知みち山国やまぐに生活せいかつがなつかしまれたのであります。
銀のペンセル (新字新仮名) / 小川未明(著)