有金ありがね)” の例文
二三百両の有金ありがねをやられた井筒屋にしては、その頃評判の御用聞、銭形の平次の顔を見るのは、全く救いの神のようなものだったのです。
奥様が亡くなった所から手がついて妾と成ったが今のお國で、源次郎と不義をはたらき、恩ある主人の飯島を斬殺きりころし、有金ありがね二百六十両に
残りの有金ありがねで昔のゆめを追っているうちに、時世じせいはぐんぐんかわり、廻り燈籠どうろうのように世の中は走った。人間自然淘汰とうたで佐兵衛さんも物故した。
そのお吉があの山の郷で、一揆衆と偽称した浪人どもに、残酷なはずかしめを受けたばかりか、有金ありがねをさえ奪われた。
血煙天明陣 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
すべてをいて手元てもとのこつた有金ありがねは、やく二千ゑんほどのものであつたが、宗助そうすけ其内そのうち幾分いくぶんを、小六ころく學資がくしとして、使つかはなければならないといた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
自暴やけを起し、或夜ひそか有金ありがね偸出ぬすみだして東京へ出奔すると、続いて二人程其真似をする者が出たので、同じ様な息子を持った諸方の親々おやおやの大恐慌となった。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
羊飼いは定住の家を持たずに年中草と羊と好天候を追って国境から国境の野原をうろうろしてるもんだから、よく殺されて有金ありがねと三角帽と毛皮付きいんばねすを奪われ
ピストル、にしん、絵、研磨機、壺、長靴、陶製食器といったものを、有金ありがねはたいて買い集めるのだ。
但し旧家といい、老舗しにせといっても、丸多の店の有金ありがねを全部をかき集めても二、三千両に過ぎない。そのほかの財産はみな地所や家作かさくであるから、右から左に金には換えられない。
半七捕物帳:50 正雪の絵馬 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
とかくは有金ありがねなにほどをけて、若隱居わかいんきよべつ戸籍こせきにと内〻うち/\相談さうだんまりたれど、本人ほんにんうわのそら聞流きゝながしてらず、分配金ぶんぱいきんは一まん隱居いんきよ扶持ぶち月〻つき/″\おこして、遊興ゆうけうせきへず
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
先生は例の道中師の伊兵衛と組んで、お粂の家から一座の有金ありがねをさらって逃亡した後、御岳口みたけぐちから山街道へ走りましたが金を持った伊兵衛には途中でどろんをきめられ、途方には暮れる。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
以て家財取上追放申付られ家主家財勘太郎家財とも權三助十へ下さるゝ間双方さうはうあはせしかるべく住居すまひ致せと申渡され又勘太郎有金ありがね六十兩は彦三郎并に權三助十へ廿兩宛下し置れ權三は勘兵衞跡役あとやくとなり町の事なれば當分たうぶん心添こゝろぞへ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
乙賊「何うせ役にゃア立たねえから、諦らめて、命が欲しけりゃア有金ありがね残らずサッサと出して仕舞ったが宜かんべえ」
原庭の物持ち後家ごけで、おこんという四十年配の金貸し、これは幸い怪我けがはありませんが、用箪笥ようだんすごと庭に持出されて、有金ありがね三十両ばかりられたのを、夢にも知らなかったという話
すかされ機械仕掛きかいじかけのあやつり身上しんじやう松澤まつざはももうくだざかよとはやされんは口惜くちをしくなる新田につた後廻あとまははら織元おりもと其他そのほか有金ありがね大方おほかたとりあつめて仕拂しはらひたるうはさこそみゝよりのことなれと平生ひごろねらひすませしまと彼方かなたより延期えんき
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
此のこの婦人に対して少しにても無礼を致すと其の分にゃア棄置かんぞ、さアお瀧殿、平林の屋敷の有金ありがねは勿論、衣類其のほか入用いりようの品はなんなりと持って行きなさい
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
その晩は雪、ツイ油断をしていると、平右衛門町の隠居泉屋の老夫婦が、離屋はなれの中で殺され、有金ありがね五六百両が紛失しておりました。これが、泉屋へ祟った曲者の最後の仕事でしょう。
それとお前がくッついて殿様を殺し、大小や有金ありがね引攫ひっさら高飛たかとびをしたのだから、云わばお前も盗みもの、それにお國も己なんぞに惚れたはれたのじゃなく、お前が可愛いばッかりで
仕方がないから有金ありがねを小包にして身支度をし、おえいと丹三郎の死骸を藁小屋に投込んで火をけ、漸々よう/\裏手から落延びまして、四万しまの山口村へ身をかくして居ますと、因果と懐姙いたしてねえ
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
お柳は根岸辺に住居していた物持なにがしさいで、某が病死したについて有金ありがねを高利に貸付け、嬬暮やもめぐらしで幸兵衛を手代に使っているうち、何時か夫婦となり、四五年前に浅草鳥越へ引移って来たとも云い
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)