ひき)” の例文
張箍はりわ女袴をんなばかま穿いた官女くわんぢよよ、とちよ、三葉形みつばがたぬひを置いて、鳥の羽根はねの飾をした上衣うはぎひきずる官女くわんぢよよ、大柄おほがら權高けんだかで、無益むやく美形びけい
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
「おのれ人間ひとの子をきずつけながら、まだ飽きたらでたけり狂ふか。憎き狂犬やまいぬよ、今に目に物見せんず」ト、ひき立て曳立て裏手なる、えんじゅの幹につなぎけり。
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
奈良県では吉野郡野迫川のせがわ村北今西の不動さんで、これも旧正月にオコナイが行われたが、これは村人が源平に分れて綱ひきの勝負をする式であった。
年中行事覚書 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
母はそのまえから脚気を病み、あおくむくんだ顔をして、肩で息をしながら足をひきずるように歩くという風だった。
初蕾 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
人通りが少いで、露にひろがりました浜昼顔の、ちらちらと咲いた上を、ぐいとひき出して、それから、がたがた。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ちかづいてるとれいの石をもつて居るので大におどろき其をとこひきずつて役場やくばに出て盜難たうなん次第しだいうつたへた。
石清虚 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
捨る覺悟かくごなれども今こゝ阿容々々おめ/\凍死こゞえしなんは殘念なり人家じんかは無事かとこゞえし足をひきながらはるか向ふの方に人家らしきところの有を見付みつけたれば吉兵衞是に力を艱苦かんくしのび其處を目當にゆき
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
少年せうねん端艇たんてい野球等やきゆうとうほかひまがあるといしげる、のぼる、猛犬稻妻まうけんいなづまひきつれて野山のやまけめぐる、其爲そのため體格たいかく非常ひじやう見事みごと發達はつたつして、以前いぜんには人形にんぎようのやうに奇麗きれいであつたかほ
路程もあまり遠からねば例の重き足をひきずりて停車場すてーしょんおもむきぬ。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
広き水真砂のつらに見る庭のながめをひきて山も連なる
曙覧の歌 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
おおおお、三人が手をひきッこで歩行あるいてきます……仲の町も人通りが少いなあ、どうじゃろう、景気の悪い。ちらりほらりで軒行燈のきあんどうに影が映る、——海老屋えびやの表は真暗まっくらだ。
吉原新話 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
深く思ひ初主人の妹とは知ながら折々可笑をかし想振そぶりなどして袖たもとひきけれども此吾助元來みにくき男にて勿々なか/\お花が相手になるべき器量きりやうならず殊に若黨なれば尚更請引うけひく樣もなければ只一人むね
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)