旅路たびじ)” の例文
かかる艱苦かんく旅路たびじうちにありて、ひめこころささうるなによりのほこりは、御自分ごじぶん一人ひとりがいつもみことのおともきまってることのようでした。
うまくランデブーすれば、雄蝉おすぜみ莞爾かんじとして死出しで旅路たびじへと急ぎ、あわれにも木から落ちて死骸しがいを地にさらし、ありとなる。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
こういうあたいなしに務めるものがあればこそ、旅行中にも雨曝あまざらしのなんまぬかれる。こういう心がけのものが多ければ多きほど、人生なる旅路たびじは真の快楽かいらく幸福を増すものである。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
図らずも夫文治が赦免という有難き日に親のかたきを知り、多年の欝憤うっぷんらさばやと夫と共に旅立ちして、敵討かたきうち旅路たびじを渡る山中にて、なんの因果か神罰か、かゝる憂目うきめの身となりしぞ
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
熱沙ねっしゃ限りなきサハラを旅する隊商も時々は甘き泉わき緑の木陰涼しきオーシスに行きあいてえ難きかわきと死ぬばかりなる疲労つかれいやする由あれど、人生まれ落ちての旅路たびじにはただ一度
わかれ (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
これからおそらくつづくかもしれない長い旅路たびじにたつまえに、わたしはカピのからだをあらってやるため、やわらかい石けんを買った。わたしにとっては、黄色いカピは、カピではなかった。
わかいがんたちは、いくばくもなくして、このとしとったがんを冒険ぼうけん旅路たびじ案内あんないにさせたことは、無理むりであり、また、どくであったことをかんじました。けれど、どうすることもできません。
がん (新字新仮名) / 小川未明(著)
並木も泣きながら、彼もまた八津の目にふれぬようにしまいこんであった大事な色紙をもってきて、つるやっこ風船ふうせんを折って入れた。そんなものをもって、八津は死出しで旅路たびじについたのである。
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
いまは落人おちゅうどどうような境遇きょうぐう公然こうぜんとふれをまわしてたずねることもならず、いつか、旅路たびじほたるぐさにつゆのしとどに深くなる秋を知りながら、まだもって、その消息しょうそくの一ぺんも知ることができない。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
梅の花におはざりせば降る雨にぬるる旅路たびじは行きがてましを半蔵
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
幾年いくとせかにまたが賊徒ぞくと征伐せいばついくさ旅路たびじに、さながらかげかたちともなごとく、ただの一にちとしてきみのおそばはなれなかった弟橘姫おとたちばなひめなみだぐましい犠牲ぎせい生活せいかつは、じつにそのとき境界さかいとしてはじめられたのでした。
それから、また、これらのわたどりなが旅路たびじはつづけられました。
小さな金色の翼 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ぎゆく旅路たびじのおもしろや
眼鏡 (新字新仮名) / 小川未明(著)