敵手あひて)” の例文
議官セナトオレの甥と鞘當さやあてして、敵手あひてにはきずを負はせたれど、不思議にその場をのがれ得たり。かくてこたび「サン、カルロ」座には出でしなり。
『どいつぢや! どいつぢや』と云つて溝板をはづして来るものがあると思ふ間に、その男はポツカリ敵手あひての頭を擲り付けて居た。
「僕は間貫一といふ者だ。恨があらば尋常に敵手あひてにならう。物取ならばかねはくれる、訳も言はずに無法千万な、待たんか!」
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
チッバ やア、下司げす下郎げらう敵手あひてにしておぬしけんかうでな? ベンヺーリオー、こちをけ、いのちってくれう。
づは重疊ちようでふむかつて齒向はむかつてでもられようものなら、町内ちやうない夜番よばんにつけても、竹箒たかばうき押取おつとつてたゝかはねばらないところを、とき敵手あひてげてくれるにかぎる。
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
武村兵曹たけむらへいそう技倆ぎりようはまた格別かくべつで、何處どこ練習れんしうしたものか、てつやううでから九種こゝのつ魔球カーブひね工合ぐあひすさまじいもので、兵曹へいそう投手ピツチにすると敵手あひてになるくみはなく、また打棒バツトれて/\たまらぬので
だが、タイピストとしての陛下にはたつた一人恐るべき敵手あひてがある。
いづれ敵手あひて貸金かしきんの事から遺趣を持つて、その悔しまぎれに無法な真似まねをしたのだらうつて、大相腹を立てておいでなのだよ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
譜本ふほんうたうたふやうに、距離きょり釣合つりあひちがへず、ひいふういて、みッつと途端とたん敵手あひて胸元むなもと貫通ずぶり絹鈕きぬぼたんをも芋刺いもざしにしようといふ決鬪師けっとうしぢゃ。
われは君が初戀をいやしとせざるべし。されどその敵手あひてなる女の、君の直きが如く直からざりしは、爭ふべからざる事實なるべし。否、我話の腰を折り給ふな。
勝手かつて木像もくざうきざまばきざめ、天晴あつぱ出来でかしたとおもふなら、自分じぶんそれ女房にようぼうのかはりにして、断念あきらめるが分別ふんべつ為処しどころだ。見事みごとだ、うつくしいと敵手あひてゆるは、其方そつち無理むりぢや、わかつたか。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
いてかゝる。ベンヺーリオー餘義よぎなく敵手あひてになる。この途端とたん兩家りゃうけ關係者くわんけいじゃ双方さうはうよりきたり、入亂いりみだれてたゝかふ。市民しみんおよ警吏長等けいりちゃうら棍棒クラッブたづさへてきたる。
「私は悋気りんきで言ふ訳ぢやない、本当に旦那の身を思つて心配を為るのですよ、敵手あひてが悪いからねえ」
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
(希臘傳説に見えたる埃及エヂプト王の名なり。前十四五紀の間の名ある王二人の上を混じて説けり。)客人まらうどには現世の用事あり。かしこにわかき貴婦人の敵手あひてなくて寂しげなるあり。
なむ鬼兒おにのこにては、彼奴かれめ敵手あひてとならむこと
鬼桃太郎 (旧字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)