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懸想
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けそう
ふりがな文庫
“
懸想
(
けそう
)” の例文
色若衆といっても、これほどのみずみずしい美少年はまたとあるまじと思われるほどのヤマサンに
懸想
(
けそう
)
されて、私は困却しきっていた。
死と影
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
妹分のお駒に
懸想
(
けそう
)
して、
蚯蚓
(
みみず
)
ののたくったような手紙を書いて、人の悪いお駒に翻弄されていたことが判ったくらいのものでした。
銭形平次捕物控:037 人形の誘惑
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
師直はこの人妻に
懸想
(
けそう
)
して、さまざま言い寄ってみたが、いつも柳に風とうけ流され、
煩悩悶々
(
ぼんのうもんもん
)
と、やるかたもない想いでいた。
私本太平記:13 黒白帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
妻のノブ子に
懸想
(
けそう
)
しましたのは確かにこの時に相違ありませんので、この時以来、今日に至るまで引き続いて参りました小生一家の不幸は
暗黒公使
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
「これだけで無事らしいから御互に豚なんだろう。ハハハハ。——しかし何とも云われない。君があの女に
懸想
(
けそう
)
して……」
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
▼ もっと見る
大夫
(
たゆう
)
の
監
(
げん
)
の恐ろしい
懸想
(
けそう
)
とはいっしょにならぬにもせよ、だれも想像することのない苦しみが加えられているのであったから、源氏に持つ反感は大きかった。
源氏物語:25 蛍
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
秀吉はそれには耳をかさなかったが、切支丹の一婦人に
懸想
(
けそう
)
してその婦人を
妾
(
めかけ
)
にすることができなかった時、始めてほんとうに切支丹の強情を憎いと思った。
青銅の基督:――一名南蛮鋳物師の死――
(新字新仮名)
/
長与善郎
(著)
かねがね亭主の富五郎がひそかに
懸想
(
けそう
)
していることを自分も感づいているお艶の母のおさよなので、ハテ
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
それはとにかく、ひでよし公が小谷のおくがたに
懸想
(
けそう
)
なされましたのはいつごろからでござりましたか。
盲目物語
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
「まずそんなことです。……実は僕、或
少女
(
むすめ
)
に
懸想
(
けそう
)
したことがあります」と岡本は真面目で語り
出
(
いだ
)
した。
牛肉と馬鈴薯
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
その倅は三輪大明神の
社家
(
しゃけ
)
、植田丹後守の屋敷に預けられていたお豊に命がけで
懸想
(
けそう
)
した男であります。
大菩薩峠:19 小名路の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
しながらお嬢様に
懸想
(
けそう
)
して、うるさく縁組を申し入れ、お嬢様は、あのような
鷲鼻
(
わしばな
)
のお嫁になるくらいなら死んだほうがいいとおっしゃるし、それで、
旦那
(
だんな
)
様も、——
新釈諸国噺
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
千之丞はかねて千倉屋の娘に
懸想
(
けそう
)
していて、町人とはいえ相当の家柄の娘であるから、
仮親
(
かりおや
)
を作って自分の嫁に貰いたいというようなことを
人伝
(
ひとづ
)
てに申し込んで来たが
半七捕物帳:33 旅絵師
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
丁度この話の出来事のあった時、いつも女に追い掛けられているポルジイが、珍らしく自分の方から女に
懸想
(
けそう
)
していた。
女色
(
じょしょく
)
の趣味は生来
解
(
かい
)
している。これは遺伝である。
世界漫遊
(新字新仮名)
/
ヤーコプ・ユリウス・ダビット
(著)
さればよ
殿
(
との
)
聞き給へ。
妾
(
わらわ
)
が名は
阿駒
(
おこま
)
と呼びて、この天井に棲む鼠にて
侍
(
はべ
)
り。またこの猫は
烏円
(
うばたま
)
とて、この
辺
(
あたり
)
に棲む
無頼猫
(
どらねこ
)
なるが。
兼
(
かね
)
てより妾に
懸想
(
けそう
)
し、道ならぬ
戯
(
たわぶ
)
れなせど。
こがね丸
(新字旧仮名)
/
巌谷小波
(著)
彼の
鍾愛
(
しょうあい
)
する美少年に
懸想
(
けそう
)
した上野介が、ひそかにこれをゆずりうけたいといって所望したのをあっさりはねつけたことにふかい意趣がこもっていたということになっているが
本所松坂町
(新字新仮名)
/
尾崎士郎
(著)
それもわしとおばばとは、まだわしが、
左兵衛府
(
さひょうえふ
)
の
下人
(
げにん
)
をしておったころからの昔なじみじゃ。おばばが、わしをどう思うたか、それは知らぬ。が、わしはおばばを
懸想
(
けそう
)
していた。
偸盗
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
恟
(
びっく
)
りして、新吉が、段々
怖々
(
こわ/″\
)
ながら細かに読下すと、今夢に見た通り、谷中七面前、下總屋の中働お園に
懸想
(
けそう
)
して、無理無体に
殺害
(
せつがい
)
して、百両を盗んで逃げ、
後
(
のち
)
お
捕方
(
とりかた
)
に手向いして
真景累ヶ淵
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
少
(
わか
)
い
世捨人
(
よすてびと
)
な、これ、坊さまも
沢山
(
たんと
)
あるではないかいの、まだ/\、死んだ者に
信女
(
しんにょ
)
や、
大姉
(
だいし
)
居士
(
こじ
)
なぞいうて、名をつける
習
(
ならい
)
でござらうが、何で又、其の
旅商人
(
たびあきうど
)
に
婦人
(
おんな
)
が
懸想
(
けそう
)
したことを
二世の契
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
ある異人が以前に日本へ来た時、この国の女を見て
懸想
(
けそう
)
した。異人はその女をほしいと言ったが、許されなかった。そんなら女の髪の毛を三本だけくれろと言うので、しかたなしに三本与えた。
夜明け前:01 第一部上
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
ところが、その家の娘に、清姫という女があって、安珍に
懸想
(
けそう
)
した。
京鹿子娘道成寺
(新字新仮名)
/
酒井嘉七
(著)
「ははあ読めた、
懸想
(
けそう
)
したな!」
あさひの鎧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
元来、J・I・Cの首領W・ゴンクール氏はずっと前から
貴女
(
あなた
)
に
懸想
(
けそう
)
していて、無理にも志村氏を殺そうとしているのだ。
暗黒公使
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
オカミサンに
懸想
(
けそう
)
したとか、酔ってイタズラしたとか、そんな噂でございます。それは無実の罪でございますよ。
明治開化 安吾捕物:03 その二 密室大犯罪
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
『そうだ』と、重くるしげに『——武者所の名に、大きな汚点がつけられた。こともあろうに、人妻に
懸想
(
けそう
)
して』
新・平家物語:02 ちげぐさの巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
何時
(
いつ
)
の頃とも知らぬ。只アーサー
大王
(
たいおう
)
の御代とのみ言い伝えたる世に、ブレトンの一士人がブレトンの一女子に
懸想
(
けそう
)
した事がある。その頃の恋はあだには出来ぬ。
幻影の盾
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「吉三郎は相模者だと言ったが、実は下田の者さ。お浜に
懸想
(
けそう
)
して江戸へ追っかけて来たが、お浜も
満更
(
まんざら
)
でなかったんだろう、何べんも助けようとしたくらいだから」
銭形平次捕物控:047 どんど焼き
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
当人の久次郎どのが汚れた心を持っていたからである。久次郎どのは毎夜かかさず通って来るのは、まことの心からの信心ではない。実はお姫様に
懸想
(
けそう
)
していたのである。
半七捕物帳:26 女行者
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
し、しかるに、黙って聞いておれば、かの鈴川が
懸想
(
けそう
)
いたしおることを
良人
(
おっと
)
の拙者のまえを
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
恋愛至上主義者も私の
家
(
うち
)
ではきまじめな方面しか見せないのも妙齢の娘などがないからなのだ。たいそうにかしずいてみせよう、まだ成っていない貴公子たちの
懸想
(
けそう
)
ぶりをたんと拝見しよう
源氏物語:22 玉鬘
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
それだけの
望
(
のぞみ
)
に応ずべしとこういう風に談ずるが
第一手段
(
いちのて
)
に候なり、
昔語
(
むかしがたり
)
にさること
侍
(
はべ
)
りき、ここに
一条
(
ひとすじ
)
の
蛇
(
くちなわ
)
ありて、とある
武士
(
もののふ
)
の妻に
懸想
(
けそう
)
なし、
頑
(
かたくな
)
にしょうじ着きて離るべくもなかりしを
妖僧記
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
その吉助が十八九の時、
三郎治
(
さぶろうじ
)
の一人娘の
兼
(
かね
)
と云う女に
懸想
(
けそう
)
をした。兼は勿論この下男の恋慕の心などは顧みなかった。のみならず人の悪い朋輩は、早くもそれに気がつくと、いよいよ彼を
嘲弄
(
ちょうろう
)
した。
じゅりあの・吉助
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
幸三は尊いミコに
懸想
(
けそう
)
したので、奥の院でヤミヨセに召されて狼にかみ殺され、それでもヨコシマな心が直らないので、現実にああいう悲惨な運命になったと云われている。
明治開化 安吾捕物:04 その三 魔教の怪
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
公卿殿上人の息女や女房をほしいままに掠め
奪
(
と
)
って、おのが妄婦として戯れ狂うのみか、果ては塩冶の妻に
懸想
(
けそう
)
して、その夫をほろぼしても、おのれの慾を遂げようと企つる。
小坂部姫
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
それで両家は向う同志だから、
朝夕
(
あさゆう
)
往来をする。往来をするうちにその娘が才三に
懸想
(
けそう
)
を
趣味の遺伝
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
義仲に
懸想
(
けそう
)
されて、強奪されて来た妻である。ここへ来てからは泣いてばかり暮していた。——泣くもよしと、雨中の花を見るように眺めていた義仲も、やや、あぐねて来た眼いろである。
源頼朝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「人もあらうに私の男に
懸想
(
けそう
)
した。さあ、
何
(
ど
)
うするか、よく御覧。」
処方秘箋
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
昔、ある男が女に
懸想
(
けそう
)
して
頻
(
しき
)
りに口説いてみるのですが、女がうんと言いません。
文学のふるさと
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
もし余があの
銀杏返
(
いちょうがえ
)
しに
懸想
(
けそう
)
して、身を
砕
(
くだ
)
いても逢わんと思う矢先に、今のような
一瞥
(
いちべつ
)
の別れを、
魂消
(
たまぎ
)
るまでに、嬉しとも、
口惜
(
くちお
)
しとも感じたら、余は必ずこんな意味をこんな詩に作るだろう。
草枕
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
それが当然の
成行
(
なりゆ
)
きだわえ! だが兆二郎が加賀の廻し者だとは
汝
(
おの
)
れだけの
悪推量
(
わるずいりょう
)
、娘の棗に
懸想
(
けそう
)
して、それが成らぬところから
卑怯
(
ひきょう
)
な作りごとをして、
仇
(
あだ
)
をしよう腹だろうが! ば! ばか者奴ッ
増長天王
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
久次郎は行者に
懸想
(
けそう
)
してかれを
涜
(
けが
)
そうとしたというのである。
半七捕物帳:26 女行者
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
とさも
懸想
(
けそう
)
したらしく胸を抱いたが、鼻筋白く打背いて
草迷宮
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
栃尾は三枝子さんにかねて
懸想
(
けそう
)
していたのかも知れないようだ。
明治開化 安吾捕物:12 その十一 稲妻は見たり
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
「ところがその娘に二人の男が一度に
懸想
(
けそう
)
して、あなた」
草枕
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
『店へよく買物に来る吉良家の小間づかいで、お粂という愛くるしいのがいる。——それが右衛門七に
懸想
(
けそう
)
しているので、罪とはおもったが、大義のため、ゆく末は夫婦にしてやると
欺
(
あざむ
)
いて、
奪
(
と
)
り出させたのだ』
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
『組頭のお娘に、
懸想
(
けそう
)
いたして居ろうが』
御鷹
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
懸
常用漢字
中学
部首:⼼
20画
想
常用漢字
小3
部首:⼼
13画
“懸想”で始まる語句
懸想文