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悔恨
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かいこん
ふりがな文庫
“
悔恨
(
かいこん
)” の例文
これらの話を、だまって聞いていた私は、悲痛と、
懺愧
(
ざんき
)
と、自責と、
悔恨
(
かいこん
)
とのために、いくたび
昏倒
(
こんとう
)
しかかったか知れなかった。
秘密
(新字新仮名)
/
平林初之輔
(著)
寺の木像は割って薪にしても、今の
悔恨
(
かいこん
)
とはしないけれど、この人を一度でも裸にして脅した罪は怖ろしいと思われてきた。
人間山水図巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「あれは、私の相手を勤めた婦人は、井上次郎の細君だったのか」そして、云い難き
悔恨
(
かいこん
)
の
情
(
じょう
)
が、私の心臓をうつろにするかと
怪
(
あやし
)
まれました。
覆面の舞踏者
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
なんとなく死因に対する、法水の道徳的責任を求めているように思われ、はてはそれが、とめどない
慚愧
(
ざんき
)
と
悔恨
(
かいこん
)
の情に変ってしまうのだった。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
それを自らの手によって行っている小山すみれの顔は、始めと同じく無表情で、
悔恨
(
かいこん
)
の色もなければ
憎悪
(
ぞうお
)
の気も見えない。
鞄らしくない鞄
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
▼ もっと見る
ふまじめな生活がこの不健康な肉体を通じて痛切なる
悔恨
(
かいこん
)
をともなって来た。弱かったがしかし清かった一二年前の生活が眼の前に浮かんで通った。
田舎教師
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
天性
(
てんせい
)
陰気
(
いんき
)
なこの人は、人の目にたつほど、
愚痴
(
ぐち
)
も
悔
(
く
)
やみもいわなかったものの、
内心
(
ないしん
)
にはじつに長いあいだの、
苦悶
(
くもん
)
と
悔恨
(
かいこん
)
とをつづけてきたのである。
老獣医
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
今日になってこれを
憶
(
おも
)
えば、そのいずれにも懐しい記憶が残っている。わたくしはそのいずれを思返しても決して
慚愧
(
ざんき
)
と
悔恨
(
かいこん
)
とを感ずるようなことはない。
西瓜
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
彼女の美しい目から、真珠のような涙が、ハラ/\と
迸
(
ほとば
)
しることを待っていた。
悔恨
(
かいこん
)
と
懺悔
(
ざんげ
)
との美しい涙が。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
ぼくはこんなにテキパキあなたに話ができる川北氏が
羨
(
うらやま
)
しかった。ぼくには、
悔恨
(
かいこん
)
と
憧憬
(
どうけい
)
しかない。
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
悔恨
(
かいこん
)
!
慚愧
(
ざんき
)
! 妻は今それさえも感じません。人工心臓は結局人工人生に過ぎなかったのです。
人工心臓
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
「あります。
悔恨
(
かいこん
)
です。」こんどは、打てば響くの快調を以て、即座に応答することができた。
鴎
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
「ドノバン君、ぼくらはきみらが
他日
(
たじつ
)
、きょうの決意を
悔恨
(
かいこん
)
する日のきたらんことをいのるよ」
少年連盟
(新字新仮名)
/
佐藤紅緑
(著)
僕はその時三人の夫に手代の鼻を削ぎ落した
後
(
のち
)
、ダアワの処置は
悔恨
(
かいこん
)
の情のいかんに
任
(
まか
)
せるという提議をした。勿論誰もダアワの鼻を削ぎ落してしまいたいと思うものはない。
第四の夫から
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
灯りの中へ引立てて行くと、それは
甥
(
をひ
)
の千次郎の忿怒と
悔恨
(
かいこん
)
とに
歪
(
ゆが
)
む顏だつたのです。
銭形平次捕物控:153 荒神箒
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
二通の手紙を出したあとのかれの胸には、大きな
空洞
(
くうどう
)
があいており、その空洞の中を、
悔恨
(
かいこん
)
と、
嫉妬
(
しっと
)
と、未練と、そしてかすかな
誇
(
ほこ
)
りとが、代わる代わる風のように
吹
(
ふ
)
きぬけていた。
次郎物語:05 第五部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
若者
(
わかもの
)
は、そんなことには
気
(
き
)
にもとめずに、
口笛
(
くちぶえ
)
を
鳴
(
な
)
らして、このかぎりない
美
(
うつく
)
しい
景色
(
けしき
)
に
見
(
み
)
とれていましたが、トム
吉
(
きち
)
は、
失望
(
しつぼう
)
と
悔恨
(
かいこん
)
とくやしさとで、
顔
(
かお
)
の
色
(
いろ
)
は、すっかり
青
(
あお
)
ざめていました。
トム吉と宝石
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
一念
(
いちねん
)
ここに及ぶ
毎
(
ごと
)
に、
胸
(
むね
)
裂
(
さ
)
け
腸
(
はらわた
)
砕
(
さ
)
けて、
真
(
しん
)
に
悔恨
(
かいこん
)
已
(
や
)
む
能
(
あた
)
わざるなり。
瘠我慢の説:05 福沢先生を憶う
(新字新仮名)
/
木村芥舟
(著)
大事を前にして、どうも不思議な自分の行動だった。酔いではなく、
麻酔
(
ますい
)
のようにも思う——と帆村は
悔恨
(
かいこん
)
の
体
(
てい
)
である。
暗号数字
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
こう思い来るとき、柴田修理勝家は、まったく誰をも恨みようのない
悔恨
(
かいこん
)
の底に、暗然たらざるを得なかったのである。
新書太閤記:09 第九分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
持ってカフェへ行き、もっともばからしく使って来ました。
悔恨
(
かいこん
)
の情をあてにしたわけですね。
彼は昔の彼ならず
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
彼はこの
狐
(
きつね
)
の様に卑劣な行為を続けながら、ふと「俺はここまで
堕落
(
だらく
)
したのか」と、
慄然
(
りつぜん
)
とすることがあった。併し、それは烈しい驚きではあっても、決して
悔恨
(
かいこん
)
ではなかった。
虫
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
いまの
現在
(
げんざい
)
の
位置
(
いち
)
すらも、そろそろゆれだしたような気がする。ものに
屈託
(
くったく
)
するなどいうことはとんと知らなかった糟谷も、にわかに
悔恨
(
かいこん
)
の
念
(
ねん
)
禁
(
きん
)
じがたく、しばしば
寝
(
ね
)
られない夜もあった。
老獣医
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
こう思うとドノバンは、心の奥底からつきあげてくる
悔恨
(
かいこん
)
の情にせめられた。
少年連盟
(新字新仮名)
/
佐藤紅緑
(著)
スポオツでなにも
掴
(
つか
)
み得なかった
悔恨
(
かいこん
)
が、彼の心身を
蝕
(
むし
)
ばんでいるさまがありありと感ぜられ、外では歓呼の声や旗の波のどよめきが
潮
(
うしお
)
のように
響
(
ひび
)
いてくるままに、なにかスポオツマンの
悲哀
(
ひあい
)
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
読みくだしてゆくうちに、伊那丸の目はいっぱいな
涙
(
なみだ
)
になった。
義憤
(
ぎふん
)
と
悔恨
(
かいこん
)
の
血
(
ち
)
が
交互
(
こうご
)
に
頬
(
ほお
)
を
熱
(
あつ
)
くした。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
其の夜、下宿にかえった僕が、
悔恨
(
かいこん
)
と
魅惑
(
みわく
)
との間に
懊悩
(
おうのう
)
の一夜をあかしたことは言うまでもない。
階段
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
七時頃にもう起き
出
(
い
)
でた廣介は、ある甘美なる追憶と、併し名状すべからざる
悔恨
(
かいこん
)
とに、胸をとどろかせながら、幾度も躊躇したのち、跫音を盗む様にして千代子の居間へ入ったのでした。
パノラマ島綺譚
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
彼女は、星宮君の云うが如きロシアの女には、なりきれなかったのだ。棄てられてしまうと、彼女はやっと目が覚めた。貞操を
弄
(
もてあそ
)
ばれた
悔恨
(
かいこん
)
が、彼女の小さい胸に、深い深い
溝
(
みぞ
)
を刻みこんだ。
恐しき通夜
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
悔
常用漢字
中学
部首:⼼
9画
恨
常用漢字
中学
部首:⼼
9画
“悔”で始まる語句
悔
悔悟
悔改
悔悛
悔行
悔状
悔寤
悔涙