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恐懼
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きょうく
ふりがな文庫
“
恐懼
(
きょうく
)” の例文
下野はいよいよ
恐懼
(
きょうく
)
して身をちぢめた。四、五十名の一小隊をあずかる
侍頭
(
さむらいがしら
)
に過ぎない身分を顧みて、思案に余るものらしく見えた。
上杉謙信
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
実に御下問の条々が理に
叶
(
かな
)
って尋常のお尋ねではないので、岡倉校長は
恐懼
(
きょうく
)
致されたと、後に承ったことで御座いました。
幕末維新懐古談:70 木彫の楠公を天覧に供えたはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
心配、
恐懼
(
きょうく
)
、喜悦、感慨、希望等に悩まされて従来の病体益〻神経の過敏を致し、
日来
(
ひごろ
)
睡眠に不足を生じ候次第、愚とも狂とも御笑ひ
可被下
(
くださるべく
)
候。
歌よみに与ふる書
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
それでも相手の娘さんがびっくりしたように私の顔をじいっと眺めているのを見ると、私の眼にはやはり
恐懼
(
きょうく
)
の色が現われていたに相違なかった。
世界怪談名作集:10 廃宅
(新字新仮名)
/
エルンスト・テオドーア・アマーデウス・ホフマン
(著)
彼は堪えがたい
恐懼
(
きょうく
)
と煩悶とにひと月あまりをかさねた末に、彼は更に最後の審判をうけるべく怖ろしい決心を固めた。
青蛙堂鬼談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
▼ もっと見る
なお拡大して云えばこの場合においては諧謔その物が
畏怖
(
いふ
)
である。
恐懼
(
きょうく
)
である、
悚然
(
しょうぜん
)
として
粟
(
あわ
)
を
肌
(
はだえ
)
に吹く要素になる。その訳を云えば
先
(
ま
)
ずこうだ。
趣味の遺伝
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
大切な密書を彼女のなすがまゝに任せて
只管
(
ひたすら
)
恐懼
(
きょうく
)
しているようなのは、どう考えても
不為
(
ふた
)
めを
謀
(
はか
)
る者の態度ではない。
武州公秘話:01 武州公秘話
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
心得て六兵衛が
恐懼
(
きょうく
)
しながら導いていったところは、ガヤガヤと
黒集
(
くろだか
)
りになって人々が打ち騒いでいる奥庭先です。
旗本退屈男:10 第十話 幽霊を買った退屈男
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
与八は
只管
(
ひたすら
)
に、自分のみが悪いことをしたと
恐懼
(
きょうく
)
して、行燈の下へ持って来て、ひねくってみましたが、その時まで
閑却
(
かんきゃく
)
されていたのは絵馬の
面
(
おもて
)
です。
大菩薩峠:26 めいろの巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
雲と竜ふたつ
巴
(
どもえ
)
の件、丹下左膳、鈴川源十郎一味の行状なぞ己が知るかぎりお答え申しあげたお艶は、わが一身のことまでお耳に入れて
恐懼
(
きょうく
)
したまま
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
何とも仰せがないので、僧都は進んで秘密をお知らせ申し上げたことを御不快に思召すのかと
恐懼
(
きょうく
)
して、そっと退出しようとしたのを、帝はおとどめになった。
源氏物語:19 薄雲
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
八年春三月、
工部尚書
(
こうぶしょうしょ
)
厳震
(
げんしん
)
安南
(
あんなん
)
に
使
(
つかい
)
するの
途
(
みち
)
にして、
忽
(
たちま
)
ち建文帝に雲南に
遇
(
あ
)
う。旧臣
猶
(
なお
)
錦衣
(
きんい
)
にして、旧帝
既
(
すで
)
に
布衲
(
ふとつ
)
なり。
震
(
しん
)
たゞ
恐懼
(
きょうく
)
して落涙
止
(
とど
)
まらざるあるのみ。
運命
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
忠君忠義——忠義顔する者は
夥
(
おびただ
)
しいが、
進退伺
(
しんたいうかがい
)
を出して
恐懼
(
きょうく
)
恐懼
(
きょうく
)
と米つきばったの真似をする者はあるが、御歌所に干渉して朝鮮人に愛想をふりまく悧口者はあるが
謀叛論(草稿)
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
未荘の人は皆
恐懼
(
きょうく
)
の眼付で彼を見た。こういう風な可憐な眼付は、阿Qは今まで見たことがなかった。ちょっと見たばかりで彼は六月氷を飲んだようにせいせいした。
阿Q正伝
(新字新仮名)
/
魯迅
(著)
清盛の脳のめぐりの良さも知らず、乗船の一同、
恐懼
(
きょうく
)
感激して、一きれの魚を味ったに違いない。
現代語訳 平家物語:01 第一巻
(新字新仮名)
/
作者不詳
(著)
……さきごろ所司代酒井
若狭守
(
わかさのかみ
)
(
忠義
(
ただよし
)
)どのが参内いたし、おすべりとやら申上げまする、主上御箸つきの御膳部を賜わり、異例の光栄に
恐懼
(
きょうく
)
して頂戴仕りましたところ
日本婦道記:尾花川
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
私は漁民の妻女がやむをえずして取ったような純粋な食糧に本づく最後の非常手段以外に、そういう乱民的暴行の演ぜられたことを、私たち民衆の名に対して赤面して
恐懼
(
きょうく
)
します。
食糧騒動について
(新字新仮名)
/
与謝野晶子
(著)
車夫は
恐懼
(
きょうく
)
して頭を何度も下げては「ゴメンナサイ」といい、群衆は大いによろこぶ。
日本その日その日:03 日本その日その日
(新字新仮名)
/
エドワード・シルヴェスター・モース
(著)
ロメーンズの『
動物智慧編
(
アニマル・インテリゼンス
)
』に牛が屠場に入りて、他の牛の殺され
剥
(
は
)
がるる次第を目撃し、仔細を理解して
恐懼
(
きょうく
)
し、同感する
状
(
さま
)
著しく、ほとんど人と異ならざる心性あるを示す由を記し
十二支考:06 羊に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
... その要は人々をして善を修め、悪を
止
(
とど
)
めしむるに至るのみ。
下愚庸昧
(
げぐようまい
)
なるものは、この意を悟らず、
恐懼
(
きょうく
)
疑惑して、ついにおもえらく、実に三世ありとす。これ必ず
野狐
(
やこ
)
のみ)(『
神社考
(
じんじゃこう
)
』)
通俗講義 霊魂不滅論
(新字新仮名)
/
井上円了
(著)
今や御親政の初めにあたり、非常多難の時に際会し、深く
恐懼
(
きょうく
)
と思慮とを加え、天下の公論をもつて
奏聞
(
そうもん
)
に及び、今般の事件を御決定になった次第である、かつ、国内もまだ定まらない上に
夜明け前:03 第二部上
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
(※戦争終結の詔勅を放送)
恐懼
(
きょうく
)
の至りなり。ただ無念。
海野十三敗戦日記
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
彼らは
恐懼
(
きょうく
)
の念をもってその死骸のまわりに集まった。
レ・ミゼラブル:07 第四部 叙情詩と叙事詩 プリューメ街の恋歌とサン・ドゥニ街の戦歌
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
一層
恐懼
(
きょうく
)
いたしておるしだいでございます。
あゝ二十年:やっと御下命画を完成した私のよろこび
(新字新仮名)
/
上村松園
(著)
思い掛けぬ失錯を教えられて
恐懼
(
きょうく
)
に堪えぬ。
ファウスト
(新字新仮名)
/
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ
(著)
恐懼
(
きょうく
)
おくあたわざる虎之介であった。
明治開化 安吾捕物:06 その五 万引家族
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
拝謁や菊花の階を
恐懼
(
きょうく
)
して
五百五十句
(新字旧仮名)
/
高浜虚子
(著)
二人は
恐懼
(
きょうく
)
しながら、近侍に
従
(
つ
)
いて長廊下を巡って来た。お錠口へ来ると、しばらくここでお待ちをと言ったまま外に残されていた。
剣難女難
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
心配、
恐懼
(
きょうく
)
、喜悦、感慨、希望等に悩まされて従来の病体ますます神経の過敏を致し
日来
(
ひごろ
)
睡眠に不足を生じ候次第愚とも狂とも御笑い
可被下
(
くださるべく
)
候。
歌よみに与ふる書
(新字新仮名)
/
正岡子規
(著)
いよいよ
恐懼
(
きょうく
)
した大作が、お艶を呼びに急ぎさがってゆくと、忠相と泰軒、顔を見合ってクスリと笑った。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
お粗末にしてはならないという
恐懼
(
きょうく
)
の心と、それから、水商売の者は神様をうやまって、
縁喜
(
えんぎ
)
を祝わねばならぬということが、因襲的な信仰になっているらしい。
大菩薩峠:30 畜生谷の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
職事はどうなることやらと案じながら、こわ/″\仰せの趣を伝えると、時平は
恐懼
(
きょうく
)
措
(
お
)
く所を知らず、従者共に先を追わせることをも禁じ、
慌
(
あわ
)
てふためいて退出して
少将滋幹の母
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
しかも主侯自ら腰を低めて
恐懼
(
きょうく
)
措
(
お
)
く
能
(
あた
)
わないといったように、倉皇としながら小走りに、近よると、釣りの御前の遙かうしろに膝をこごめて、最上級の敬語と共に呼びかけました。
旗本退屈男:05 第五話 三河に現れた退屈男
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
御主人の院はお驚きになって、
恐懼
(
きょうく
)
の意を表しておいでになった。
源氏物語:36 柏木
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
丁は
恐懼
(
きょうく
)
のあまりに病いを
獲
(
え
)
て死んだ。
中国怪奇小説集:13 輟耕録(明)
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
木工助は、主君の子にそうされて、
恐懼
(
きょうく
)
にかたくなっていた。だが、枯木のようなかれの
肋骨
(
あばら
)
の下にも、やがて烈しい感情が波打っていた。
新・平家物語:02 ちげぐさの巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「はいっ……」と、
恐懼
(
きょうく
)
しながらも、こう主従顔のそろった絶好な機を
逃
(
のが
)
すまいとするものの如く、大和守は喰いさがって
上杉謙信
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「かかる山家へ、みかどの
御使
(
みつかい
)
とは
恐懼
(
きょうく
)
にたえません。そも、何事でございましょうか。ごらんのような、名もなき、
田舎
(
いなか
)
武門のあるじなどへ」
私本太平記:04 帝獄帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
使いは
恐懼
(
きょうく
)
して帰った。使いの者のうけた感じでは、秀吉が多少、
癇癪
(
かんしゃく
)
を起しかけているように見えたかもしれない。
新書太閤記:08 第八分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「時局、容易ならぬときにいたりましてござりまする。……そのうえに、
叡慮
(
えいりょ
)
をわずらわし奉るは、まことに、
恐懼
(
きょうく
)
にたえぬとはぞんじますなれど」
私本太平記:10 風花帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
が——やがて万太郎の口から出たことばは、常々、金吾が
恐懼
(
きょうく
)
していたような冷たいものではなかったのです。
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
で、どうも、にわかに驚き入って、
恐懼
(
きょうく
)
身
(
み
)
の措く所も知らずという有様、実以て、御処置に当惑いたしました
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「
一
(
いっ
)
ときたりと打ち捨ておかれぬ大事ではありますが、
叡慮
(
えいりょ
)
を騒がし奉るだん、なんとも
恐懼
(
きょうく
)
にたえませぬ」
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
と、立ちすくみ、
恐懼
(
きょうく
)
と共に全身は、なにか
雷気
(
らいき
)
をふくむ黒雲の中にでも立ち暮れたような茫然を見せ
私本太平記:04 帝獄帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
孔明は
恐懼
(
きょうく
)
して
病褥
(
びょうじょく
)
を出、
清衣
(
せいい
)
して、玄徳を迎えた。彼の病室へ入ってくるなり玄徳はあわてて云った。
三国志:10 出師の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
正親町天皇
(
おおぎまちてんのう
)
の皇子、
誠仁
(
さねひと
)
親王がここにおいで遊ばすのであった。——で、信忠の臣は
恐懼
(
きょうく
)
しつつも、まず御門へ事情を訴え、おゆるしを仰いでそれへ混み入った。
新書太閤記:07 第七分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
御自身、御進発ときいて、
恐懼
(
きょうく
)
しました。もとより秀長の力足らざるところから、御憂慮を煩わしたもの。自責にたえませんが、しかし、天下に面目が立ちません。
新書太閤記:11 第十一分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「——
不遜
(
ふそん
)
のつみ軽からずと
恐懼
(
きょうく
)
してはおりまする。なれど、ことは国事です。
上
(
うえ
)
つ
方
(
かた
)
のみならず
下億衆
(
しもおくしゅう
)
の地獄か楽土かのわかれ、その今を坐視してはいられませぬ」
私本太平記:10 風花帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「何事か存じませぬが、
御
(
み
)
けしきを
損
(
そこな
)
い、光秀、
恐懼
(
きょうく
)
身のおき場も
弁
(
わきま
)
えませぬ。どこが悪いと、お叱りくださいましょう。この場にて、お叱りくださるも
厭
(
いと
)
いませぬ」
新書太閤記:06 第六分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
清経は、
恐懼
(
きょうく
)
して、さらに、静を
辛辣
(
しんらつ
)
に責めた。余りに長い時間を冷たい板床にひき
据
(
す
)
えられていたせいか、静は、急に眉をひそめ、
蒼白
(
あおじろ
)
くなって苦しげに
俯
(
う
)
っ伏した。
日本名婦伝:静御前
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
“恐懼”の意味
《名詞》
恐 懼(きょうく)
恐れ入って畏まること。
候文の手紙の末尾に用い、敬意を表す語。
(出典:Wiktionary)
恐
常用漢字
中学
部首:⼼
10画
懼
漢検1級
部首:⼼
21画
“恐懼”で始まる語句
恐懼戦慄