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幽冥
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ゆうめい
ふりがな文庫
“
幽冥
(
ゆうめい
)” の例文
死んで後までもこんな重い物をかぶせて、魂を
幽冥
(
ゆうめい
)
の下までも
咽
(
むせ
)
び泣かしむる人間というものの
仕様
(
しわざ
)
の、愚劣にして残忍なることよ。
大菩薩峠:22 白骨の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
近世となっては、
幽冥
(
ゆうめい
)
に関しては青衣の者多く、死神なども青衣婦人のように書いてあるが、紅衣女子の幽霊、白衣婦人の幽霊なぞもある。
迷信と宗教
(新字新仮名)
/
井上円了
(著)
これは
単
(
たん
)
なる
偶然
(
ぐうぜん
)
か、それとも
幽冥
(
ゆうめい
)
の
世界
(
せかい
)
からのとりなしか、
神
(
かみ
)
ならぬ
身
(
み
)
には
容易
(
ようい
)
に
判断
(
はんだん
)
し
得
(
う
)
る
限
(
かぎ
)
りではありません。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
最後に、その唇の、
幽冥
(
ゆうめい
)
の境より霞一重に暖かいように
莞爾
(
にっこり
)
した時、
小児
(
こども
)
はわなわなと手足が震えた。同時である。
夫人利生記
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
特に私の私事に関するわかりきった愚劣な批評をきく前に諸君と
幽冥
(
ゆうめい
)
境を異にしていたいからでもあるのだ。
秘密
(新字新仮名)
/
平林初之輔
(著)
▼ もっと見る
太玄
(
たいげん
)
の
閽
(
もん
)
おのずから
開
(
ひら
)
けて、この
華
(
はな
)
やかなる姿を、
幽冥
(
ゆうめい
)
の
府
(
ふ
)
に吸い込まんとするとき、余はこう感じた。
草枕
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
が、たった二日の間に、どうしてあの怪しい婆を、取って抑える事が出来ましょう。たとい警察へ訴えたにしろ、
幽冥
(
ゆうめい
)
の世界で行われる犯罪には、法律の力も及びません。
妖婆
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
外の形はしきたりのものに過ぎないのですが、
一
(
ひ
)
と
度
(
たび
)
内に入れば四面の壁に
幽冥
(
ゆうめい
)
の世界が、まざまざと
丹青
(
たんせい
)
の筆に描かれているのです。それは既にこの世の絵ではありませぬ。
民芸四十年
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
空しく壮図を抱いて中途にして
幽冥
(
ゆうめい
)
に入る千秋の遺恨は死の瞬間までも
悶
(
もだ
)
えて死切れなかったろうが、
生中
(
なまなか
)
に小さい文壇の名を歌われて
枯木
(
かれき
)
の如く畳の上に朽ち果てるよりは
二葉亭四迷の一生
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
そこは、天はひくく垂れ雲が地を
這
(
は
)
い、なんと
幽冥
(
ゆうめい
)
界の荒涼たるよと叫んだバイロンの地獄さながらの景である。氷河は、いく筋も氷の滝をたらし、その末端は鏡のような断崖をなしている。
人外魔境:03 天母峰
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
何
(
なん
)
と
御覽
(
ごらん
)
じて
何
(
なん
)
とお
恨
(
うら
)
みなさるべきにや
過
(
す
)
ぎし
雪
(
ゆき
)
の
夜
(
よ
)
の
邂逅
(
かいごう
)
に
二
(
ふた
)
つなき
貞心
(
ていしん
)
嬉
(
うれ
)
しきぞとてホロリとし
給
(
たま
)
ひし
涙
(
なみだ
)
の
顏
(
かほ
)
今
(
いま
)
も
眼
(
め
)
の
前
(
さき
)
に
存
(
のこ
)
るやうなりさりながら
思
(
おも
)
ふ
心
(
こゝろ
)
は
幽冥
(
ゆうめい
)
の
境
(
さかひ
)
にまでは
通
(
つう
)
ずまじきにや
無情
(
つれな
)
く
悲
(
かな
)
しく
引止
(
ひきと
)
められし
命
(
いのち
)
を
別れ霜
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
「なかなか、
幽冥
(
ゆうめい
)
に通じて、餓鬼畜生まで耳を傾けて微妙の音楽を聞くという音調だ、妙なことがあるものでございますな、そして、やはりお心持は。」
湯島詣
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
隔
(
へだて
)
の
襖
(
ふすま
)
だけは明けてある。片輪車の
友禅
(
ゆうぜん
)
の
裾
(
すそ
)
だけが見える。あとは
芭蕉布
(
ばしょうふ
)
の
唐紙
(
からかみ
)
で万事を隠す。
幽冥
(
ゆうめい
)
を仕切る
縁
(
ふち
)
は黒である。一寸幅に
鴨居
(
かもい
)
から
敷居
(
しきい
)
まで
真直
(
まっすぐ
)
に貫いている。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
幽冥
(
ゆうめい
)
の力の怪しさに驚かないではいられませんでしたが、たちまちまた自分はあの雷雨の日以来、どうしていたのだろうと思い出しましたから、「じゃ僕は。」と尋ねますと
妖婆
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
神巫
(
いちこ
)
たちは、
数々
(
しばしば
)
、顕霊を示し、
幽冥
(
ゆうめい
)
を通じて、俗人を驚かし、郷土に一種の権力をさえ
把持
(
はじ
)
すること、今も昔に、そんなにかわりなく、奥羽地方は、特に多い、と聞く。
神鷺之巻
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
男は
真先
(
まっさき
)
に
世間外
(
せけんがい
)
に、はた世間のあるのを知って、空想をして実現せしめんがために、身を
以
(
も
)
って
直
(
ただ
)
ちに
幽冥
(
ゆうめい
)
に
趣
(
おもむ
)
いたもののようであるが、
婦人
(
おんな
)
はまだ半信半疑でいるのは
春昼後刻
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
母はもとより天道の
大御心
(
おおみこころ
)
には
協
(
かな
)
わぬ
生立
(
おいたち
)
、自分の体を
牲
(
にえ
)
にして、そして
神仏
(
かみほとけ
)
の手で、つまり
幽冥
(
ゆうめい
)
の間に蝶吉の身を救ってやろう、いずれ
母娘
(
おやこ
)
が、揃って泥水稼業というは
湯島詣
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
その他咒詛、
禁厭
(
きんえん
)
等、
苟
(
いやしく
)
も
幽冥
(
ゆうめい
)
の力を
仮
(
か
)
りて為すべきを知らざるはなし。
黒壁
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
声々に、
可哀
(
あわれ
)
に、寂しく、
遠方
(
おちかた
)
を
幽
(
かすか
)
に、——そして
幽冥
(
ゆうめい
)
の
界
(
さかい
)
を
暗
(
やみ
)
から闇へ
捜廻
(
さがしまわ
)
ると言った、厄年十九の娘の名は、お稲と云ったのを鋭く聞いた——
仔細
(
しさい
)
あって忘れられぬ人の名なのであるから。——
陽炎座
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
“幽冥”の意味
《名詞》
薄暗いこと。
あの世。冥土。
(出典:Wiktionary)
幽
常用漢字
中学
部首:⼳
9画
冥
常用漢字
中学
部首:⼍
10画
“幽冥”で始まる語句
幽冥界
幽冥説
幽冥道
幽冥果報