つゐ)” の例文
旧字:
雪をはらふは落花らくくわをはらふにつゐして風雅ふうがの一ツとし、和漢わかん吟咏ぎんえいあまた見えたれども、かゝる大雪をはらふは風雅ふうがすがたにあらず。
つゐしまあかしか何かの着物にやはりつゐの帯をしめ、当時流行の網をかけた対のパラソルをした所を見ると、或はねえさんに妹かも知れない。
鷺と鴛鴦 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
もとより一ぷくつゐの中に育ちて他人交ぜずの穏かなる家の内なれば、さしてこのを陰気ものに仕立あげる種は無けれども
たけくらべ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
信玄死してはあめが下に一四三つゐなし。不幸にして一四四はやみまかりぬ。信長の器量人にすぐれたれども、信玄の智にかず、謙信の勇に劣れり。
詩人の声 (朗唱する)夫婦、繋がれた一つゐの男女、朝は夫の仏頂面ぶつちやうづら、夜は妻の溜息、十年一日の如く、これも自業自得、互に見あきた顔と顔。
世帯休業 (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
するとだ世帯の持ち立ての、晴れてつゐで歩くのが嬉しい頃、明治座を見物した時のこと、中幕の「毛抜」がすんで、食堂で西洋料理を食べるまでは可かつたが
のらもの (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
花樹はなきさんお飲みなさいよと云つてあの茶碗の水はがれたのであらうと私は想像をするのです。一番上の人形ばかりの段を見ますと、二つづヽあつたのが皆つゐをなくして居るのです。
遺書 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
うもさう一時いちどきまとめてかれるとわからぬね、このぷくつゐぢくおれ祖父そふ拝領はいりやうをしたものぢやがね、かまなにかはみなおれが買つたんだ、しか貴様きさま見込みこみくらゐものがあるぢやらう、此四品このよしなで。
士族の商法 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
としごろもつゐくらゐ、わたし二人ふたり夫婦ふうふのやうでじつ抱合だきあかたちえて、……あやしいをんなと、ぐにで、暖炉ストーブはいにされましたが、外面そともからひた/\る……むかひのゆきけむりつゝんで、つきした
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
鶯鳴けば、ちらちらとつゐたもと
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
が、唐織寄縞からおりよせじまの帯を前でむすんだ所と云ひ、投島田なげしまだ平元結ひらもとゆひをかけてつゐのさしぐしをした所と云ひ、素人しろうととは思はれない位な、なまめかしさだ。
世之助の話 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
箱を出る顔忘れめやひなつゐ 蕪村
(新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)