安楽あんらく)” の例文
旧字:安樂
ほんとうに、毎日まいにちはたらいても、つまらないはなしだ。大金持おおがねもちになれはしないし、また、これという安楽あんらくもされない。ばかばかしいことだ。
天下一品 (新字新仮名) / 小川未明(著)
時としては目下の富貴ふうきに安んじて安楽あんらく豪奢ごうしゃ余念よねんなき折柄おりから、また時としては旧時の惨状さんじょうおもうて慙愧ざんきの念をもよおし、一喜一憂一哀一楽
瘠我慢の説:02 瘠我慢の説 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
そこで、仕立屋さんは、安楽あんらくいすからそっとすべりおりて、門のうしろのもとの場所ばしょにかえって、すました顔をしてすわっていました。
然うしたら社會の人として、あるひ安楽あんらく生活せいくわつるかも知れない。しかし精神てきには、まつたんで了ツたのもおなじことなんだ!
虚弱 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
にせの玉村さんは、ゆったりと安楽あんらくいすにこしかけて、さも社長さんらしい口ぶりで、さしずをしました。
超人ニコラ (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
もうチベットのラサ府で大分に安楽あんらく活計くらしに慣れて来たものですから非常に冷たく感じましたので、困難に堪えて居る時分には非常な困難でも随分辛抱しんぼうし易いが
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
そして、安楽あんらくにくらして、こわい目にあったことは、みんな忘れてしまおうとしました。
大学側からは若林学部長を初め川路かわじ安楽あんらく、太田、西久保の諸教授、田中書記等が現場に駆け付けたが、検案の結果同博士は、同海岸水族館裏手の石垣の上に帽子と葉巻きの吸いさしを置き
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
しよを山上にけながら眼下がんか群住ぐんぢうするあはれなる数万の異教徒ゐけうとめに祈願きぐわんめるも無益むえきなり、教会けうくわい復興ふくこう方策はうさくとは教導師けうだうしみづからつるにあり、家族かぞく安楽あんらく犠牲ぎせいきやうするにあり
問答二三 (新字旧仮名) / 内村鑑三(著)
しごく安楽あんらく御隠居ごいんきょ身分みぶんにしてげるがどうだね。
文福茶がま (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
後世ごせ安楽あんらくの願かけてめぐ比丘びくらが
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
主人はこういって、むしゃくしゃして大きな安楽あんらくいすにこしをおろしました。ところがこしをおろしたとたん、いきなりとびあがって
そして、すこしでもたくさん、かねをためて、故郷こきょうかえって、うち人々ひとびとよろこばし、安楽あんらくおくりたいとおもったのであります。
砂漠の町とサフラン酒 (新字新仮名) / 小川未明(著)
部屋の正面には、大きな安楽あんらくイスがあって、そこにきみょうな人物が、ゆったりと腰かけていました。
大金塊 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
望なき回復をはかるがためいたずらに病苦びょうくを長くするよりも、モルヒネなど与えて臨終りんじゅう安楽あんらくにするこそ智なるがごとくなれども、子とりて考うれば、億万中の一を僥倖ぎょうこうしても
瘠我慢の説:02 瘠我慢の説 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
ほとけさま、わたしは、もう人間にんげんになってなかるのはまっぴらでございます。もっと、のんきな安楽あんらくなものにしてくださいまし。」とねがいました。
ものぐさじじいの来世 (新字新仮名) / 小川未明(著)
とうとう、仕立屋さんはがまんができなくなって、上へあがって、その安楽あんらくいすにすっぽりこしをおろしました。すると、地上でおこっていることが、なんでも見えました。
欧州にて和蘭オランダ白耳義ベルギーのごとき小国が、仏独の間に介在かいざいして小政府を維持するよりも、大国に合併がっぺいするこそ安楽あんらくなるべけれども、なおその独立をはりて動かざるは小国の瘠我慢にして
瘠我慢の説:02 瘠我慢の説 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
わしは、ここにあるいすも、こしかけも、安楽あんらくいすも、いや、暖炉だんろの火かきさえも、つぎつぎとつみあるものになげつけて、ここにはとっくになにひとつなくなっておったろう。
みなといっしょにうちかえっていたら、いまごろは、安楽あんらくにいろりのそばではなしをしていられるのだろうとおもいました。けれど、いくら後悔こうかいしても、なんのやくにもたちませんでした。
おおかみと人 (新字新仮名) / 小川未明(著)
テーブルにかって、ひげのしろいじいさんが安楽あんらくいすにこしかけています。
青い時計台 (新字新仮名) / 小川未明(著)
この川をわたりますと、いよいよ地獄じごくの入り口が見つかりました。地獄のなかはまっ黒で、すすけていました。おにはちょうどるすでしたが、鬼のおかあさんが大きな安楽あんらくいすにこしかけていました。