地面ぢべた)” の例文
その折ある地方で、皮膚はだの赤茶けた土人が、地面ぢべた蹲踞はひつくばつて玉蜀黍たうもろこし煙管パイプやにくさい煙草をすぱすぱやつてゐるのを見かけた。
謂ふ心は、両足を地面ぢべたけてゐて歌ふ詩といふ事である。実人生と何等の間隔なき心持を以て歌ふ詩といふ事である。
弓町より (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
はちはそれにとまつてしばらをつと氣配けはいうかゞつてゐるらしかつたが、それが身動みうごきもしないのをると、死骸しがいはなれてすぐちかくの地面ぢべたりた。
画家とセリセリス (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
地面ぢべたを掘りさげた土窖つちむろ——それが人の住ひなのぢや! ただ立ちのぼる煙を見て、そこにも神の子の住んでゐることが頷かれるといつたていたらく。
良久しばらくしてのぞいてるとうを歩兵ほへい姿すがたはなくて、モ一人ひとりはうそば地面ぢべたうへすわつて、茫然ぼんやりそら凝視みつめてゐました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
謔語じやうだんのつもりで言つたことは眞實ほんたうに成つて來た。實際、菜の花が咲いて居た。青草は地面ぢべたから頭を持上げて居た。
伊豆の旅 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
君の感情は蛮人のやうに新鮮で、君の魂はいつも鵞鳥の卵のやうに牧草まきくさ地面ぢべたの間に転がつてゐた。君の感覚も神経も其処そこで自然のままに曝されためされ鋭く削られて来た。
君の感情は蛮人のやうに新鮮で、君の魂はいつも鵞鳥の卵のやうに牧草まきくさ地面ぢべたの間に転がつてゐた。君の感覚も神経も其処そこで自然のままに曝されためされ鋭く削られて来た。
愛の詩集:03 愛の詩集 (新字旧仮名) / 室生犀星(著)
天を仰ぎ、真実に地面ぢべたに生きてゐるものは悲しい。
ぐつたりと、精も根も尽き果てて彼は自分の荒ら屋へ駈けこむなり、藁束のやうに地面ぢべたへぶつ倒れてしまつた。そのまま死のやうな睡魔が彼を捉へてしまつた。
応募兵は自分が螽斯ばつたのやうにつよい脚を持つてゐるのを見せるために、二三度靴のかゞと地面ぢべたを蹴つてみせた。
見返みかへると、くろ黄色きいろしまのある大柄おほがらはちで、一たかあがつたのがまたたけ根元ねもとりてた。と、地面ぢべたから一しやくほどのたかさのたけかはあひだ蜘蛛くも死骸しがいはさんである。
画家とセリセリス (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
地面ぢべた踏めばかぶらみどりの葉をみだすいつくしきかもわが足の上
雲母集 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
『おめえこそ早えなツす。』と言つて、桶を地面ぢべたに下した。
天鵞絨 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
北満洲の秋の野にはいなごや蛙が飛んだり、跳ねたりしてゐたが、新調の軍服を見ると、急に地面ぢべたかゞんでしまつた。軍服は大手をつて、その前を通り過ぎた。
地面ぢべたよりころげ出でたる玉キヤベツいつくしきかも皆玉のごと
雲母集 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
両足を地面ぢべたに着ける事を忘れてはゐないか。
弓町より (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
何でもその説によると、地面ぢべたに起きる事も、海の上で持上る事も何一つ神様の摂理で無いものはない。
春雨の地面ぢべたのつばきひたあかしいくらかは濡れて動きたるらし
海阪 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
外套の隠しに両手を突込むで、停車場前のひろを歩きながら、大きな靴のかゞとやけ地面ぢべたを蹴散らしてみたが、地面ぢべたを蹴つたところで、急行列車がとまる訳でもなかつた。
憤る裸の子なれ地面ぢべたに寝て陽にはまぶしき眼をほそめ居り
風隠集 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
蹠が地面ぢべたにくつ附いてゐるうちは、どんな事があつても他人ひとに力負けはしなかつたといふが、さすが希臘人だけに蹠と地面ぢべたとを結びつけた解釈は偉いと言はなければならぬ。
大きなる足が地面ぢべたを踏みつけゆく力あふるる人間の足が
雲母集 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
「この寒さぢや、私は誰よりも先きに風邪を引くだらうと思つてゐたのです、何だつて貴方、こんな大きな脚でせう、地面ぢべたにくつ着いてる所が人並よりずつと多いんですからね。」
天を仰ぎ、真実に地面ぢべたに生きてゐるものは悲しい。
月に吠える:01 序 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
内田博士は弾機ばね細工のやうに一あし後へ飛んだ。そしてどこへ持物をおいたものかと、狼狽うろたへ気味にそこらを見廻してゐたが、思ひきつてわきに抱へた書物をそのまゝそつと地面ぢべたに置いた。
地面ぢべたにしつかり足をつける、うんと踏んばろ、——
畑の祭 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
それを見た福田博士は、自分も何か知ら地面ぢべたに置かないでは済まないやうな気がしたが、あいにくラツセルもマルクスも手に持つてゐなかつたので、申し訳だけにくつの爪先を踏み揃へた。
石臼のほとりに飛べやかんすずめ地面ぢべたの雪にあなうらつけて
雀の卵 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
毎月まいげつ二十五日には北野の天神へ怠らず参詣まゐつてゐたが、或日雨の降るなかを弟子が訪ねてくと、五雲は仰向あふむけに寝て、両手を組んで枕に当てがひ、両足をあげて地面ぢべたを踏むやうな真似をしてゐる。
黒い繻子の服の寂しさ……タアシヤーは地面ぢべた
緑の種子 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
なぎだね、まるで海がならした地面ぢべたのやうだ。
畑の祭 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
何んでも、はあ、地面ぢべたにかぢりついて
畑の祭 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)