古河こが)” の例文
一人は古河こがの裁判所の書記で、年はもう三十四五、家には女房も子供もあるのだが、根が道楽の酒好きで三日とかかずにやって来る。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
致して見ん夫に就て急々きふ/\古河こが相談さうだんなしたきものなれども外の人をつかはしては事のわかるまじければ詮方せんかたなし我古河へ行きて吉右衞門殿に面談めんだん
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
あくる日は利根川のわたしをこして、古河こがまで八里の道を、人間の堤をこさえて家光を守護し、夕方までに本多大内記ほんだだいないき五万石の城に入りました。
幻術天魔太郎 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
「おせんちゃん、このひとは下総しもうさ古河こがからみえた方でね、お常さんの実の兄さんに当るんですってよ」
柳橋物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
ほどなく古河こがへ嫁入りしたが、間もなく身重になり、その翌年の秋虫気むしけづいて、玉のような男子を産み落したが、無残や、産後の日だちが悪く、十九歳を一期として
初恋 (新字新仮名) / 矢崎嵯峨の舎(著)
『雪華図説』は、天保三年(西暦一八三二年)下総古河こがの城主土井利位としつらによって刊行されたもので、その中には八十六箇の雪の結晶の虫眼鏡による摸写図が載せてある。
『雪華図説』の研究 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
……うかがうところどうやら下総しもおさなまり。それに名札の紙が、古河こがで出来る粘土ねんどのはいった間似合紙まにあいがみということになると、あらためて武鑑をひっくりかえすまでのことはない。
顎十郎捕物帳:10 野伏大名 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
これは家康の落胤らくいんだと言われた土井大炊頭どいおおいのかみの如きは、ある年、その居城、下総の古河こがへ帰った時、前年までは見る影もなかった農民の家が、今は目に立つようになって来たとあって
大菩薩峠:38 農奴の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
もっと積荷つみにが多いゆえ、はかきませんから、井生森は船中で一泊して、翌日はさかいから栗橋くりはし古河こがへ着いたのは昼の十二時頃で、古河の船渡ふなとへ荷をげて、其処そこ井上いのうえと申す出船宿でふねやど
城代土井は下総しもふさ古河こがの城主である。其下に居る定番ぢやうばん二人ににんのうち、まだ着任しない京橋口定番米倉よねくらは武蔵金沢の城主で、現に京橋口をも兼ね預かつてゐる玉造口定番遠藤は近江あふみ三上みかみの城主である。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
関東方面では下総の古河こが、滸我などとも書いて古い地名であり、また利根川の渡津としんの衝で空閑の地では決してなかった。しかもその附近には今でも後閑と書いて、ゴカと呼んでいる村が幾つかある。
地名の研究 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
幸手さつて栗橋くりばし古河こが間々田まゝだ……のむかし語呂合ごろあはせおもす。
銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「下総の古河こがの奴で、松若というんだそうです」
半七捕物帳:17 三河万歳 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
古河こがへ帰えるのさ』
篝火の女 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
父の商売の得意先もこのごろでは熊谷くまがや妻沼めぬま方面よりむしろ加須かぞ大越おおごえ古河こがに多くなった。離れていて、土曜日に来るのを待つのもつらい。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
こゝに享保年間下總國しもふさのくに古河こがの城下に穀物屋吉右衞門こくものやきちゑもん云者いふものあり所にならびなき豪家がうかにて江戸表えどおもてにも出店でみせ十三げんありて何れも地面ぢめん土藏共どざうども十三ヶ所を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
そこで煎餅屋せんべいやをしていたのであるが、あの夜の火で焼けだされた。そのとき妻の妹を死なせたそうであるが、その始末もせずに勘さんは下総しもうさ古河こがへとんでいった。
柳橋物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
今宵こよい始めて聞いた,娘は今度逗留中かねて世話をする人があッて、そのころわが郷里に滞在していた当国古河こがの城主土井大炊頭おおいのかみの藩士なにがしと、年ごろといい、家柄といい
初恋 (新字新仮名) / 矢崎嵯峨の舎(著)
下総しもうさ古河こがへ下男の権八を追わせたのは、三輪の万七の指図ですが、本当に主人を殺して金を取ったのなら、自分の故郷へノメノメ帰るかどうか、それも怪しいものです。
しかし雪華の研究をした人としては唯一人、今より百余年前即ち西暦一八三二年に『雪華図説』なる一書を著した、下総しもうさ古河こがの城主土井大炊頭利位どいおおいのかみとしつらに指を屈するばかりである。
(新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
わたくしは麻布十番の者でごぜえます、古河こがに伯父がごぜえまして、道具屋に奉公して居りましたが、つい道楽だもんでげすから、おふくろが死ぬとぐれ出し、伯父の金え持逃げをしたのが始まりで
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
常の烏より小にして羽翼端半白し。声鶉に似たり。一に徒烏いたづらがらすと名づく。此辺往々ありといへり。形状全く喜鵲きじやくと覚。一里半佐賀城下。古河こが新内の家に宿す。晩餐の肴にあげまきといふ貝を供す。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
古河こがの重兵衛よ」
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ひそかまねき吉之助は古河こが一番の大盡だいじん息子むすこにて江戸のみせ遊藝稽古いうげいけいこの爲に參られ此處へは始めての事なれば隨分ずゐぶん宜敷よろしくはからひくれよ此後も度々連參つれまゐらんと内證を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
清三の家では、その日父親が古河こがに行ってまだ帰って来なかったので、母親は一人でさびしそうに入り口にうずくまって、がらを集めて形ばかりの迎え火をした。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
「権八といって、二十九になる男でございます。下総しもうさ古河こがの者で、十年前から奉公し、まことに実直に勤めておりました。主人をあやめるような、そんな男ではございません」
いえ私の産れは下総の古河こがの土井さまの藩中の娘で、親父おやじは百二十石のたかを戴いた柴田勘六しばたかんろくと申して、少々ばかりはい役を勤めた事もある身分でございましたからお嬢様育ちで居たのですが
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
伴「これは掘出して明日あした古河こがの旦那に売るんだ、なんだか雨がポツ/\降って来たようだな、向うの渡し口の所からなんだか人が二人ばかり段々こっちの方へ来るような塩梅あんべいだから、見ていてくんねえ」