げん)” の例文
旧字:
もし久兵衛がまぐろの選択をさらにさらにげんにし、切り方を大様おおように現在の倍くらいに切ったとしたら、それこそ天下無敵であろう。
握り寿司の名人 (新字新仮名) / 北大路魯山人(著)
苛烈なげんをもって彼らの汗を強要すれば、彼らにはまた特有な彼らの怠ける戦法は幾らでもある。さすがの官兵衛も、手を焼いた。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
吾人ごじんに許されたるは、ピストルに非ず、機関銃に非ず、猟銃も制限いたずらにげんにして駄目、空気銃だけが許されている。
白銅貨の効用 (新字新仮名) / 海野十三佐野昌一(著)
これを政治上より見れば各国共に領域がげんに区画せられてあることは言うまでもないが、貿易上の見地に立って観察すれば、各国相互に有無うむ相通あいつう
世界平和の趨勢 (新字新仮名) / 大隈重信(著)
禁ずることは、お山止やまどめと言って、これは先例のとおりです。各所に関所を設けて、この見張りをげんにせねばならぬ
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
ただしその品行のげん風致ふうち正雅せいがとにいたりては、いま昔日せきじつの上士に及ばざるものすくなからずといえども、概してこれを見れば品行の上進といわざるを得ず。
旧藩情 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
鷹は絶壁のはるかに黒く、しかも確実に二個の点としてげんとしている。小さく小さくなる。一個は消えても、一羽の英姿はいつまでもいつまでも残ってみえる。
木曾川 (新字新仮名) / 北原白秋(著)
「人の悪をむるははなはげんなるなかれ、その受くるにうるをおもうを要す。人に教うるに善を以てするは、高きに過ぐるなかれ、それをして従うべからしむべし」
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
殊に、私たちと水兵との間には、上下の区別と云ふものが、げんとして、——軍人になつて見なければ、わからない程、厳としてありますから、それが、非常な強みです。
(新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
僕の考えでは小児を育てるにむしろげんに失するもかんに失してはならん。干渉に過ぎても放任に過ぎてはならんと思う。今の世の社会に立って何のなにがしといわれる人物をただしてみ給え。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
燕王こゝにおいて、太息たいそくして曰く、頻年ひんねん兵を用い、何の時かけん、まさに江に臨みて一決し、また返顧せざらんと。時に京師けいしの内臣等、帝のげんなるをうらみて、燕王をいただくに意ある者あり。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
僕は不審でたまらなんだけれど、その時のRの口調が、妙にげんしゅくに聞えたのと、それに当時僕は、Rのいうことには、何でもハイハイと従う習慣になっていたものだから、それからまたRの家まで
百面相役者 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
げんとして輝やかしい存在である。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
てきびしされども空に冬日げん
六百句 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
「一箇の荷ぐらいは、どうにでもなる。それよりは全体の士気をげんに保って行くほうが肝腎かんじんだ。老人は、黙ッていなさい」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
二人は、まるで舷門げんもんから上って来た司令官を迎えるように、きわめてげんたる礼をもって金博士に敬意をひょうした。
「善く身をしょする者は、必らず世に処す。善く世に処せざるは、身をぞくする者なり。善く世に処する者は、必らずげんに身を修む。げんに身を修めざるは世にぶる者なり」
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
鉦鼓淵しょうこえん盗人ぬすと谷、その天上の風格は亭々ていてい聳立しょうりつする将軍台、またげんとしてたいらなる金床台きんしょうだい
木曾川 (新字新仮名) / 北原白秋(著)
しかし、その態度の中には、何か、げんとしてをかすべからざるところがあつた。
日本の女 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
これに反して日本においては士人の去就はなはだげんなり。「忠臣二君に仕えず、貞婦両夫にまみえず」とは、ほとんど下等社会にまで通用の教にして、特別の理由あるに非ざればこの教にそむくを許さず。
徳育如何 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
と、いう微妙な立場をとって、しかも、げんとして、威を守り、かりそめにも、みだりに動かない態勢たいせいを取っていた。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すこしげんとした声で
三人の双生児 (新字新仮名) / 海野十三(著)
かくて、一月、二月、三月——警固おさおさ怠りなく、げんみつに、山川草木さんせんそうもく、およそ中国の土にあるものはすべてを動員して来るべきものを待ちうけていた。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「きさまらは、そも、どこの何奴だ。かりそめにも、悪事濫行らんぎょうにおよぶは首斬るぞと、辻々にも、足利殿の御教書みぎょうしょ(軍の政令)を以て、げん布令ふれてあるを知らぬはずはあるまい」
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
なぜならば、伊丹亘が、その便宜べんぎを与えてやっても、城門の守りは、彼の一手だけではない。まして、伊丹城はいまや、四六時中、警固けいごに警固をげんにされている非常時中の城だった。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
官兵衛はげんとしていい渡すと、更に一歩迫って、政職の前へすすみ
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「心して参れよ。陣中は、何よりも軍律をげんに。賞罰をあきらかに」
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
足利以前から、この信濃の山間、小諸在こもろざいの赤岩村に、十何代も続いて来ている旧家の——たくましいはりや、黒光りな柱などと共に、——それは今でもげんとして、失われていない山浦家の家風なのであった。
山浦清麿 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
『法規が大事でないとは云えないじゃないか。考えれば考えるほど、——国法はげんとして犯し難いものだ。それをみだしたら、社会の秩序がゆるむ。たとえ、情に於ては、どんな正しい理由があろうとも』
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
むしろ一そうげんにはしてある。
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
孔明はすこしげんを示して
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)