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卑下
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ひげ
ふりがな文庫
“
卑下
(
ひげ
)” の例文
民間は官途に一
目
(
もく
)
置くものと信じているから、大谷夫人の
厭味
(
いやみ
)
を当然の
卑下
(
ひげ
)
と認めて、御機嫌よく暇を告げた。大谷夫人はこれからだ。
求婚三銃士
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
はなしが自己の仕事となると赤鶴のひとみは、壮者のような
張
(
は
)
りを持って、それまでの
卑下
(
ひげ
)
などはもうどこにもなくなっていた。
私本太平記:12 湊川帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
しかし女を
卑下
(
ひげ
)
する思想は必ずしも日本のみでなく、またシナのみに限らぬ。西洋においても多少この傾向の存在を否定することはできぬ。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
何という
卑下
(
ひげ
)
であろう、そして其処には亦生活の疲れと長い心労とがあった。然しそれはまた一層濃い色を以て壮助自身のうちに返って来た。
生あらば
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
如何
(
いか
)
にも日本婦人等を
卑下
(
ひげ
)
してここが至らぬとか、かしこが届かぬとかいう事を得意になって言い立てているが、これは誠に面白くない議論だと思う。
婦人に対する実業思想の急務
(新字新仮名)
/
大隈重信
(著)
▼ もっと見る
かわいそうだった松江、そのかわいそうさをくぐってきたことをじぶんの恥のように
卑下
(
ひげ
)
しているような松江……。
二十四の瞳
(新字新仮名)
/
壺井栄
(著)
自分は、そんな世界の意味を
云々
(
うんぬん
)
するほどたいした生きものでないことを、
渠
(
かれ
)
は、
卑下
(
ひげ
)
感をもってでなく、安らかな満足感をもって感じるようになった。
悟浄出世
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
婆やはそれをしおに
諦
(
あきら
)
めて、おぬいさんにやさしくかばわれながら三隅さんのお袋の所にいっしょになって、
相対
(
あいたい
)
よりも少し自分を
卑下
(
ひげ
)
したお
辞儀
(
じぎ
)
をした。
星座
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
その百姓に対して、彼は
一目
(
いちもく
)
も二目も置いたような
卑下
(
ひげ
)
した態度を取っている。どっちからいっても、よくよくおとなしい可愛い男だと次郎左衛門は思った。
籠釣瓶
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
二人の男は、極めて
卑下
(
ひげ
)
した言葉で屋敷の中へ申し入れましたけれども、誰も返事をする者がありませんから、そのまま怖る怖る庭の中へ入って行きました。
大菩薩峠:16 道庵と鯔八の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
女房「
貴方
(
あなた
)
そんなに御心配なさいますな、向うで嫁に欲しいと云ったら嫁においでなさいな、
卑下
(
ひげ
)
しておいでなさるからいけません、國藏にお任せなさいよ」
業平文治漂流奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
卑下
(
ひげ
)
せられるこの性質こそ、大津絵の美を保証するのである。如何なる個人的画家が、大津絵をかくまでに描き得るであろう。如何に試みるとも勝ち味はない。
民芸四十年
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
仏典を
誦
(
ず
)
し、彼の心は
卑下
(
ひげ
)
するところなく高められ、
遍在
(
へんざい
)
し、その心は香気の如く無にも帰し、岩の如くにそびえもし、滝の如くに一途に祈りもするのであった。
道鏡
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
そこで、彼は、わざと重々しい調子で、
卑下
(
ひげ
)
の辞を述べながら、
巧
(
たくみ
)
にその方向を転換しようとした。
或日の大石内蔵助
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
自分を
三下
(
さんした
)
だとしている声だ。
謙遜
(
けんそん
)
や
卑下
(
ひげ
)
ではなく、自分まで冷たく突っ放している声だった。
いやな感じ
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
極度の白きをわざと
避
(
さ
)
けて、あたたかみのある
淡黄
(
たんこう
)
に、
奥床
(
おくゆか
)
しくも
自
(
みずか
)
らを
卑下
(
ひげ
)
している。
草枕
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
源三郎は平次を迎へると、それも
卑下
(
ひげ
)
しない程度に目禮して、死體の側を離れました。
銭形平次捕物控:212 妹の扱帯
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
徳之助 いえ、いくら
卑下
(
ひげ
)
しても、政さんは男気で、わたし達を助けてくれたんです。
中山七里 二幕五場
(新字新仮名)
/
長谷川伸
(著)
喚
(
よ
)
び起す
媒介
(
ばいかい
)
としたのであるから対等の関係になることを
避
(
さ
)
けて主従の礼儀を守ったのみならず前よりも一層
己
(
おの
)
れを
卑下
(
ひげ
)
し奉公の誠を
尽
(
つく
)
して少しでも早く春琴が不幸を忘れ去り昔の自信を
春琴抄
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
まさに塵に帰らんとする人にふさわしい
卑下
(
ひげ
)
とも思えるものがそこにあった。
レ・ミゼラブル:04 第一部 ファンテーヌ
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
那
(
あれ
)
も
造物者
(
ざうぶつしや
)
が作ツた一個の
生物
(
せいぶつ
)
だ………だから立派に存在している………とすりや俺だツて、何
卑下
(
ひげ
)
することあ有りやしない。然うよ、此うしてゐるのが
既
(
も
)
う立派に存在の資格があるんだ。
平民の娘
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
と言っても、決して、ことさらに
卑下
(
ひげ
)
しているわけではございません。
風の便り
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
卑下
(
ひげ
)
して、あの方たちのお氣に入るやうにするのが、當り前ですわ。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
ありしならば、予はみずから
卑下
(
ひげ
)
の色を
面
(
おもて
)
に
ジャン・クリストフ:10 第八巻 女友達
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
農の仕事は、いやしい仕事と、自分で自分の天職を
卑下
(
ひげ
)
していたものが、彼らのそれは誇りとなってきた。幸福感と張合いにみちてきた。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
それは
品川
(
しながわ
)
の遊女
某
(
ぼう
)
が外人に
落籍
(
らくせき
)
せられんとしたことで、当時は
邦人
(
ほうじん
)
にして外人の
妾
(
めかけ
)
となれるをラシャメンと呼び、すこぶる
卑下
(
ひげ
)
したものである。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
辰夫は何事にも諦めよく深く自らを
卑下
(
ひげ
)
していたが、自分の家族に就てだけは
温
(
あたたか
)
い愛を信頼していた。
母
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
近づきが終ってから市五郎は
卑下
(
ひげ
)
と自慢とをこき交ぜて、自分がこの土地に長くいることだの、折助や人足、それらの間における自分の勢力が大したものであること
大菩薩峠:13 如法闇夜の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
免許か目録の
書付
(
かきつけ
)
を握って来る気だろう、それに違いない、あゝ感服、自分を
卑下
(
ひげ
)
した所が偉いねえ
怪談牡丹灯籠:04 怪談牡丹灯籠
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
そこにはよき
卑下
(
ひげ
)
がなければならぬ。「心の貧しき者は幸である」と聖書は記した。そうして天国は彼らのものであると約束してある。同じ福音が工藝の書にも書いてある。
民芸四十年
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
営んでいる商家が兎角自ら
卑下
(
ひげ
)
する傾向のあったのは僕の腑に落ちないところだった。
ぐうたら道中記
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
一方に傾くと彼の自信が壊しに来た。他方に寄ると幻滅の半鐘が耳元に鳴り響いた。不思議にも彼の自信、
卑下
(
ひげ
)
して用いる彼自身の言葉でいうと彼の
己惚
(
おのぼれ
)
は、胸の
中
(
うち
)
にあるような気がした。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
だが、それは——少し
卑下
(
ひげ
)
し過ぎるにしても、愛嬌のある取りなしでした。
銭形平次捕物控:167 毒酒
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
けれども
面皮
(
めんぴ
)
の厚くなつた今はさほど
卑下
(
ひげ
)
する気もちにもなれない。——
続野人生計事
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
愛の名に於いて為さるることは、如何なる
卑下
(
ひげ
)
も
惨
(
みじ
)
めではない!
生あらば
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
感謝の念で自分を
卑下
(
ひげ
)
した。
ジャン・クリストフ:08 第六巻 アントアネット
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
「はははは。豪傑にも似合わん
卑下
(
ひげ
)
を。……これ武松、わしはそちを、一箇の義士として、世話しているつもりだ。わからんか、この情けが」
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
さらに
恨
(
うら
)
むにも当たらず、また彼らに対し自分は敗北者だと
卑下
(
ひげ
)
して小さくなる必要もない。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
琉語の放棄を企てるのは、地方語に対する不必要な
卑下
(
ひげ
)
と、思慮なき
侮蔑
(
ぶべつ
)
とによるのです。
民芸四十年
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
誠にどうもお
仕立
(
したて
)
と
申
(
まう
)
し、お
落着
(
おちつき
)
のある
流石
(
さすが
)
は
松花堂
(
しようくわだう
)
はまた別でございます、あゝ
結構
(
けつこう
)
な
御品
(
おしな
)
で、
斯様
(
かやう
)
なお
道具
(
だうぐ
)
を
拝見
(
はいけん
)
致
(
いた
)
すのは
私共
(
わたくしども
)
の
眼
(
め
)
の
修業
(
しゆげふ
)
に
相成
(
あひな
)
りますと
云
(
い
)
つて、
身
(
み
)
を
卑下
(
ひげ
)
するんだ。
にゆう
(新字旧仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
卑下
(
ひげ
)
し過ぎる物腰など、主人の清兵衞は
露骨
(
ろこつ
)
にその前身を匂はせて居りますが、人間はさすがにふて/″\しく、伜を殺した相手が知れたら、本當に何をやり出すか判つたものではありません。
銭形平次捕物控:180 罠
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
「いかにもな。そのご
卑下
(
ひげ
)
はよく分る。この李応もまだそんな日蔭者の仲間におちぶれるほど身を持て余してはおりません」
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
平次は敷居際に、
卑下
(
ひげ
)
し過ぎない程度に挨拶しました。
銭形平次捕物控:195 若党の恋
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
当時、徳川内府を向うに廻して、
卑下
(
ひげ
)
を持たずに戦える気骨者は、あの男か、さもなくば、眼の前にいる石田治部、こう二人しか天下におるまい
大谷刑部
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
平次は
卑下
(
ひげ
)
しない態度に、その場を繕ろひます。
銭形平次捕物控:225 女護の島異変
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
「
卑下
(
ひげ
)
いたすな。若い時代の
過
(
あやま
)
ちは、生涯の評価にはならぬ。その
慚愧
(
ざんき
)
をなぜ有為な身に、すぐれた腕に、
鞭
(
むち
)
とせぬか」
無宿人国記
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
劉備はあえて、
卑下
(
ひげ
)
しなかったが、べつに尊大に構えもしなかった。雲長関羽の礼に対して、当り前に礼を返しながら
三国志:02 桃園の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「
盧
(
ろ
)
大員には、いくたび言っても、いつもご
卑下
(
ひげ
)
あるが、この宋江をごらんなさい。正直、私は三つの点であなたのお人柄には及びもつきません」
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
いまこそ、他家の客分となって、かく謙信の前にも
卑下
(
ひげ
)
しているが、この人の血液には正しく高貴のながれさえある。清和源氏の末流、信濃の名族だ。
上杉謙信
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
宿屋、浅見の二名は、
貢
(
みつ
)
ぎしに来た属国の臣みたいな
卑下
(
ひげ
)
を
強
(
し
)
いられる心地がした。この上、主人の口上をそのまま伝えるのは心外な気もしたが、是非なく
新書太閤記:09 第九分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
卑
常用漢字
中学
部首:⼗
9画
下
常用漢字
小1
部首:⼀
3画
“卑下”で始まる語句
卑下慢