そり)” の例文
其方そちらおもよりもあらばつてれとてくる/\とそりたるつむりでゝ思案しあんあたはぬ風情ふぜい、はあ/\ときゝひとことばくて諸共もろとも溜息ためいきなり。
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
此上のねがひには此くろかみをそりこぼして玉はれかし、あな悲哉かなしやとて、かほに袖をあてゝさめ/″\となきけり。
ヂヂッ毛とおやっこさんをつけていた(ヂヂッ毛はえりのボンノクボに少々ばかりそり残してある愛敬毛あいきょうけ、おやっこさんは耳の前のところに剃り残したこれも愛敬毛)
旧聞日本橋:02 町の構成 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
これが手前の改心の証拠、何うか恐入りまするが、明日みょうにち夕景、手前隠家かくれがまで御尊来下さりますれば有難いことで、申すまでもなく頭髪あたまそりこぼち、墨の法衣ころもを着て
そりは安全髪剃かみそりだからまつがいい。大工がかんなをかけるようにスースーとひげをそる。いい心持だ。
倫敦消息 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
決し在所ざいしよの永正寺と云尼寺あまでらへ入みどり黒髮くろかみそり念佛ねんぶつまい生涯しやうがいおくりし事こそ殊勝しゆしようなれされば長庵を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
すこしむっとして顔をあかくしてけて通って行く加奈子の横顔から断髪の頸筋の青いそりあとを珍らしそうに見詰め何かはやり唄をうたいながら、腰で唄の調子を取りながら暫く立止まっている。
豆腐買い (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
其方そちらに思ひよりも有あらば言つて見てくれとてくるくるとそりたるつむりを撫でて思案にあたはぬ風情、はあはあと聞ゐる人も詞は無くて諸共もろとも溜息ためいきなり。
うつせみ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
の時に斯ういう事をしたから其の報いだと諦め、漸々よう/\改心をしましたのさ、仕方がないから頭髪あたまそりこかし破れ衣を古着屋で買ってね、方々托鉢して歩いて居るうち
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
座敷はまだ掃除が出来ているか、いないかであったが、自分で飛び出す必要もないと思ったから、急ぎもせずに、いつもの通り、髪を分けてそりあてて、悠々と茶の間へ帰った。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
少しくおぼえ殊に遊ぶひまなければ給金其他病家びやうか代脈だいみやくともなどに行し時もらひたる金を少しくたまりたるより武田にいとまもらすぐ天窓あたまそり坊主ばうずとなり麹町三丁目の裏店うらだなを借て世帶せたいをもち醫師渡世とせい
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
何うもたってわしは忘れはせんぜ、お前此処こゝへ来るとぐ知れた、若いうち惚れたから知れるも道理、私は頭アそりこかして此の宗慈寺へ直って、住職してう九年じゃアが
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
座敷はまだ掃除が出来てゐるか、ゐないかであつたが、自分で飛びす必要もないと思つたから、急ぎもせずに、いつもの通り、かみを分けてそりあてて、悠々と茶の間へかへつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「よく痛くなるひげだね。髭が硬過こわすぎるからだ。旦那の髭じゃ、三日に一度は是非そりを当てなくっちゃ駄目ですぜ。わっしの剃で痛けりゃ、どこへ行ったって、我慢出来っこねえ」
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
頭を刈る時にも厭がって年をった人などが「何うか切りたく無い、切るくらいなら、いっそぐり/\とそりこぽって坊主になった方がかろう」それを取ッつかまえて無理に切るなぞという
松と藤芸妓の替紋 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
昨夜さくや粥河圖書御面会後立帰りまして承わりました、実に貴公さまのような義侠のお心掛のお方はない、実に何うもかたじけない御教訓であったと粥河圖書感涙を流してな、今日こんにち頭髪あたまそりこぼち
此処なれば決して知れる気遣いは有るまい、てまえそりたて頭では青過ぎて目に立つから、少し毛の生えるまでは此処にいよう、只少し足溜あしだまりの手当さえすれば宜い、しかし此処には食い物が無いが
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
□□□□私の云う事をいてくだされば、衣も棄て珠数じゅずを切り、生えかゝった月代さかやきを幸いに一つべッついとやらに前をそりこぼって、お前の供をして美作国みまさかのくにまで送って上げ、かたきを討つような話も聞いたが
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)