何一なにひと)” の例文
顏中かほぢゅうのどこも/\釣合つりあひれて、何一なにひと不足ふそくはないが、まん一にも、呑込のみこめぬ不審ふしんがあったら、傍註わきちゅうほどにもの眼附めつきや。
あとでかんがえてみたとき事件発見者じけんはっけんしゃとしてのわたしは、何一なにひとつやりそこないをしなかつたという自信じしんがありました。
金魚は死んでいた (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
ひとつのまる御神鏡ごしんきょうがキチンとえられてるばかり、ほかには何一なにひと装飾そうしょくらしいものは見当みあたりませんでした。
狡猾かうくわつ恥知はぢしらずで、齒切はぎれがわるくて何一なにひとのない人間にんげんばかりのんで土地とちだ。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
最初さいしよあいちやんはした、それから今迄いまゝでことらうとしましたが、眞暗まツくら何一なにひとえませんでした。そこあいちやんは井戸ゐどの四はうて、其處そこ蠅帳はへちやうたなで一ぱいになつてることをりました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
𤍠帶地方ねつたいちほうはこのみつつのものが、うんとそろつてゐるので植物しよくぶつ一番いちばんよくしげつてゐますが、次第しだいみなみきた兩極りようきよくちかづくにしたがつて、くさすくなくなり、何一なにひとえない不毛ふもう平原へいげんになつてしまひます。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
現世げんせ何一なにひと孝行こうこうらしいこともせず、ただ一人ひとり先立さきだってこちらの世界せかい引越ひきこしてしまったのかとかんがえますと、なんともいえずつらく、かなしく、のこしく、相済あいすまなく
我子わがこならば親友しんいうもとる、さなくばくびくゝらうと、乞食こじきをせうと、ゑて途上死のたれじにをしをらうとまゝぢゃ、誓文せいもん我子わがことはおもはぬわい、また何一なにひとつたりと、おのれにはれまいぞよ。
なにしろ竜宮界りゅうぐうかい初上はつのぼり、何一なにひとわきまえてもいない不束者ふつつかもののことでございますから、随分ずいぶんつまらぬこと申上もうしあげ、あちらではさぞ笑止しょうし思召おぼしめされたことでございましたろう。