仲働なかばたらき)” の例文
文庫ぶんこ御宅おたくのでせうね。いんでせうね」とねんして、にもらない下女げぢよどくがらしてゐるところへ、最前さいぜん仲働なかばたらき
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
無論、下女は仲働なかばたらき御飯焚おはんたきと、二人まで居たのですが、父は茶人の癖として非常に食物のやかましい人だもので、到底奉公人任せにしては置けない。
一月一日 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
くだんの次の明室あきまを越すと、取着とッつきが板戸になって、その台所を越した処に、松という仲働なかばたらき、お三と、もう一人女中が三人。
悪獣篇 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
夫の留守にはこの家のあるじとして、彼はつかふべき舅姑きゆうこいただかず、気兼すべき小姑こじうとかかへず、足手絡あしてまとひの幼きもだ有らずして、一箇ひとり仲働なかばたらき両箇ふたり下婢かひとに万般よろづわづらはしきをまか
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
仲働なかばたらきのお兼が気をきかし、其の場をはずして梯子はしごを降りる、跡には若い同士の差向さしむかい、心には一杯云いたい事はあるが、おぼこの口に出し兼ね、もじ/\して居ましたがなに思いましたか
土地がらでしょう、法被を著た人なども後から大勢附いて来ました。そしてそろって今日のよろこびをいうのでした。父がその人たちに挨拶あいさつをします。気の利いた仲働なかばたらきが、しるしばかりの酒を出したようです。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
下女げぢよは「左樣さやう御座ございましたか、どうも」と簡單かんたんれいべて、文庫ぶんこつたまゝいた仕切しきりまでつて、仲働なかばたらきらしいをんなした。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
出入りの八百屋の御用聞ごようき春公はるこうと、うち仲働なかばたらきたまと云うのが何時いつか知ら密通みっつうして居て、或夜あるよ、衣類を脊負せおい、男女手を取って、裏門の板塀いたべいを越して馳落かけおちしようとした処を
(新字新仮名) / 永井荷風(著)
期限が来ても返せん、それを何とも言はずに、後から後からと三四度も貸して置いて、もう好い時分に、内に手が無くて困るから、半月ばかり仲働なかばたらきに貸してくれと言出した。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
銑太郎、賢之助、女中の松、仲働なかばたらき、抱え車夫はいうまでもない。折から居合わせた賭博仲間ぶちなかまの漁師も四五人、別荘をひっぷるって、八方へ手を分けて、急に姿の見えなくなった浦子を捜しにけ廻る。
悪獣篇 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
下女は「そうでございましたか、どうも」と簡単に礼を述べて、文庫を持ったまま、板の間の仕切まで行って、仲働なかばたらきらしい女を呼び出した。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
女乞食の掘出しもの、恩に感じて老実まめ々々しく、陰陽かげひなたなく立働き、水もめば、米もぎ、御膳ごぜんも炊けば、お針の手も利き、仲働なかばたらきから勝手の事、拭掃除まで一人で背負しょって、いささかも骨をおしまず。
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
たちまドアくと見れば、仲働なかばたらきの命ぜし物を持来もちきたれるなり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
其所そこ小聲こごゑ説明せつめいをして、品物しなものわたすと、仲働なかばたらきはそれを受取うけとつたなり、一寸ちよつと宗助そうすけはうたがすぐおくはひつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
けれども取次に出た仲働なかばたらきの口から「ひる少し過に御出ましになりました」
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)