二三日にさんち)” の例文
わたくしやうなものには到底たうていさとりひらかれさうにりません」とおもめたやう宜道ぎだうつらまへてつた。それはかへ二三日にさんちまへことであつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
今まで御嬢さんにはあんなに優しかった老先生がこの二三日にさんちはちょっとしたことにも大きな声をして怒鳴るようにならしゃっただ
富岡先生 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
二三日にさんちあと一寸ちょいと行ったが、彼女あれには悪い情夫おとこが付いている。初め大学生の処に嫁に行っていたなんて言っていたが、まさか其様そんな事は無いだろうと思っていたが、その通りだった。
別れたる妻に送る手紙 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
重「どうかそんな事を云わねえで死ぬのは事の分るまで待って下さい、あとで成程と思う事がありますから、どうか二三日にさんち待って下さい、久しくるのも親の位牌いはいに済みませんから」
「いいえ、轢かれてしまってからも、夢の中ではちゃんと生きているの。ただ体は滅茶滅茶めちゃめちゃになって眉毛だけ線路に残っているのだけれども、……やっぱりこの二三日にさんち洋食の食べかたばかり気にしていたせいね。」
たね子の憂鬱 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
こんぢや二三日にさんちぎたら勘次かんじさんはまたけべえよ
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
二三日にさんちもう手はかかりませんから、そこに、」
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それから二三日にさんちは、代助も門野も平岡の消息を聞かずに過ごした。四日目の午過に代助は麻布あざぶのあるいえへ園遊会に呼ばれて行った。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
おい山上やまかみ武は二三日にさんち前、石井翁をうて、口をきわめてその無為主義を攻撃したのである。武を石井老人はいつも徳と呼ぶ。
二老人 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
すると丁度其のくれの十四日の事で、春見は娘が病気で二三日にさんち食が少しもいかないから、種々いろ/\心配いたし、名人の西洋医、佐藤先生や橋本先生を頼んで見て貰ってもなんだかさっぱり病症が分らず
「まあ二三日にさんち考えさしてくれと、可い加減なことを言って帰って来た。……ですから、何うしたら好いか、あなたに智慧を借りれば好いの。……」と、其の事に種々心を砕いている所為せいかそれとも
別れたる妻に送る手紙 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
「じゃ二三日にさんちうちに三沢の所へ行って三沢からでも話して貰うかまた様子によったら僕がじかに行って話すか、どっちかにしましょう」
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
しかしお蔭さまで命には別条ねえで、大きに有難うがんした 国の方へは仔細を書いて二三日にさんちおくれて帰ると書面を出しやんしたから、安心もしべいが、此方こちらで危ねえ事、金を取られようとしたが
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
徳の姿を見ると二三日にさんち前の徳の言葉を老人は思い出した。
二老人 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
「私のようなものにはとうていさとりは開かれそうに有りません」と思いつめたように宜道をつらまえて云った。それは帰る二三日にさんち前の事であった。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
此の二三日にさんちは何うにもうにも仕様がねえから、ちっばかり質を取って貰いてえと思って、此方様こちらさまは質屋さんで、価値ねうちだけの物を借りるのは当然あたりまえだが、些とくどいから上手を遣わなければならねえが
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
それから二三日にさんちしても兄の事がまだ気にかかったなり、頭がどうしても自分と調和してくれなかった。自分はとうとう番町へ出かけて行った。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
二三日にさんちは事もなく過ぎたが、或る日の午後二時頃また迷亭先生は例のごとく空々くうくうとして偶然童子のごとく舞い込んで来た。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「ここが阿蘇なら、あした六時に起きるがものはない。もう二三日にさんち逗留とうりゅうして、すぐ熊本へ引き返そうじゃないか」
二百十日 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
我からと惜気おしげもなく咲いた彼岸桜ひがんざくらに、いよいよ春が来たなと浮かれ出したのもわずか二三日にさんちの間である。今では桜自身さえ早待はやまったと後悔しているだろう。
琴のそら音 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
二三日にさんちは何の音沙汰おとさたもなく過ぎたが、御面会をするから明日みょうにち三時頃来て貰いたいと云う返事がようやくの事来たよと同僚が告げてくれた時はおおいうれしかった。
趣味の遺伝 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
彼の頭は彼の乗っている電車のように、自分自身の軌道レールの上を走って前へ進むだけであった。彼は二三日にさんち前ある友達から聞いたポアンカレーの話を思い出した。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
二三日にさんちの雨で、こけの色がすっかり出た事」と平生に似合わぬ観察をして、もとの席に返った。そうして
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
切って「何、そんなにご心配には及びませんよ。金田でも私の珠ばかり磨ってる事はよく承知しています。実は二三日にさんち前行った時にもよく事情を話して来ました」
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
せんだって○○は朝飯あさめしを廃すると胃がよくなると云うたから二三日にさんち朝飯をやめて見たが腹がぐうぐう鳴るばかりで功能はない。△△は是非こうものてと忠告した。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
その時彼女はうちの近況について何にも語らずに、「この頃は方々で風邪かぜ流行はやるから気をおつけ。お父さんも二三日にさんち前から咽喉のどが痛いって、湿布しっぷをしてお出でだよ」
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
代助は不図二三日にさんち前新聞で見た、ある文学者の劇評を思い出した。それには、日本の脚本が、あまりに突飛な筋に富んでいるので、楽に見物が出来ないと書いてあった。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ただ麗々と蕎麦の名前をかいて張り付けたねだん付けだけは全く新しい。何でも古いうちを買って二三日にさんち前から開業したにちがいなかろう。ねだん付の第一号に天麩羅てんぷらとある。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
母が病気で死ぬ二三日にさんち前台所で宙返りをしてへっついの角で肋骨あばらぼねって大いに痛かった。母が大層おこって、お前のようなものの顔は見たくないと云うから、親類へとまりに行っていた。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
久しぶりに父母ちちははの顔を見に帰ったお延は、着いてから二三日にさんちして、父に使を頼まれた。一通の封書と一帙いっちつ唐本とうほんを持って、彼女は五六町へだたった津田のうちまで行かなければならなかった。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
せっかくの好意で調ととのえてくれる金も、二三日にさんち木賃宿きちんやどで夜露をしのげば、すぐ無くなって、無くなった暁には、また当途あてどもなく流れ出さなければならないと、冥々めいめいのうちに自覚したからである。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
その通りは二三日にさんち前の晩、酒場バーを出た津田と小林とが、二人の境遇や性格の差違から来るもつった感情を互に抱きながら、朝鮮行きだの、お金さんだのを問題にして歩いた往来であった。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
生きてる人間が銅臭くなっちゃ大変だ。いや、どんな決心でどんな目的を持って来ても駄目だ。決心も目的もたった二三日にさんちで突ッつき殺されてしまう。それが気の毒だ。いかにも可哀想かわいそうだ。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
二三日にさんち一睡もせんので勤務中坑内仮寝かしん。郵便局で逢った女の夢を見る」
趣味の遺伝 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
二三日にさんち前来たばかりさ」
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
二三日にさんちうちに立ちます」
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)