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首肯
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うなず
ふりがな文庫
“
首肯
(
うなず
)” の例文
この雪は先年劒へ登った時よりも
反
(
かえっ
)
て少ないように思われたが、地獄谷から室堂方面に眼を放つと今年の雪の多いことが
首肯
(
うなず
)
かれる。
黒部川奥の山旅
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
「どうも
文字
(
もじ
)
のようですな。」と、巡査が
顧
(
みかえ
)
ると、忠一は黙って
首肯
(
うなず
)
いたが、
軈
(
やが
)
て
衣兜
(
かくし
)
から手帳を
把出
(
とりだ
)
して、一々これを写し始めた。
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
すると、ボーイは
首肯
(
うなず
)
いて部屋を出て行ったが、間もなく等身大の
藁
(
わら
)
人形を
抱
(
かかえ
)
て戻って来た。藁人形には不格好に
胴衣
(
チョッキ
)
が着せてあった。
火縄銃
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
このラプンツェル物語の結びの言葉として、おあつらいむきであると長兄は、ひそかに
首肯
(
うなず
)
き、大いにもったい振って書き写した。
ろまん灯籠
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
彼女が軽く
首肯
(
うなず
)
くのが、私の胸の底まで泌み通った。その後で、あたりがしいんとなった。水の底へ沈んだような気持ちだった。
未来の天才
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
▼ もっと見る
と軍医大佐は
頻
(
しき
)
りに
首肯
(
うなず
)
いていたが、その顔面筋肉には何ともいえない
焦燥
(
いらだ
)
たしい憤懣の色が動揺するのを私は見逃さなかった。
戦場
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
間取
(
まどり
)
の関係から云って、清子の
室
(
へや
)
は津田の
後
(
うしろ
)
、二人づれの座敷は津田の前に当った。両方の中間に自分を
見出
(
みいだ
)
した彼はようやく
首肯
(
うなず
)
いた。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「ああ、胸毛の生えた、柔道二段とか云う、心臓の強そうな……」と誰かが訊くと、藤本はグッと
首肯
(
うなず
)
いて胸を張った。
十姉妹
(新字新仮名)
/
山本勝治
(著)
「これは好い、これはどう見てもチャボです」と
首肯
(
うなず
)
いているので私も案外、狆の時とは違って、立派に見える方が落第ということにまずなった。
幕末維新懐古談:57 矮鶏のモデルを探したはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
そうすると爺は恟りして、口のうちで伊之助/\と二三遍お題目でも唱えるように云っていたが、何か
首肯
(
うなず
)
きまして
根岸お行の松 因果塚の由来
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
三人 (茫然、勝負を見ていたが、おきぬの声、太郎吉の声にはッとなり、顔見合せて
首肯
(
うなず
)
き合い、討とりに向う)
沓掛時次郎 三幕十場
(新字新仮名)
/
長谷川伸
(著)
私は思わず、あんな性格の兵隊がかえって戦場では強くなるんじゃないでしょうか、と訊いて見た。若い教官は何れともつかず
首肯
(
うなず
)
いただけであった。
指導物語:或る国鉄機関士の述懐
(新字新仮名)
/
上田広
(著)
貞之進は貰うのが何か訳分らずに
首肯
(
うなず
)
いて居ると、名ざしの事なり貰えと云うからは、お馴染のことゝ婢は呑込んで、すぐに向河岸へ
箱丁
(
はこや
)
を走らせた。
油地獄
(新字新仮名)
/
斎藤緑雨
(著)
その証拠には彼等の俳句、彼等の歳時記などを見れば誰れでもそれはそうだと直ちに
首肯
(
うなず
)
かざるを得ないであろう。
植物記
(新字新仮名)
/
牧野富太郎
(著)
眼下に見下ろす半腹より以下の展望は歩一歩偉大となるのであるが、前面に見上ぐる半腹以上の形は殆んど何の変りもない。流石に大きな山だと
首肯
(
うなず
)
かれた。
富士登山
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
お照は気まりわる
気
(
げ
)
に軽く
首肯
(
うなず
)
いて見せるや否や男湯の方からは見えないズット奥の方へ行ってしまった。
雪解
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
とくに二人の食事を、そうした場所へもっていったことも
首肯
(
うなず
)
かれた。そして何かもっと大きな事件を期待して行った自分の、軽々しい恋情を見返って苦笑した。
須磨寺附近
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
田舎への
土産
(
みやげ
)
にとて、小供の
玩具
(
おもちゃ
)
を入れ置きたるに、車の揺れの余りに
烈
(
はげ
)
しかりしため、かく
壊
(
こわ
)
されしことの口惜しさよと、わざわざ振り試みるに、駅夫も
首肯
(
うなず
)
きて
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
私はこの有様を見て、何故この家の人達が姿を隠したかが朧気ながら
首肯
(
うなず
)
かれるように思った。この仏蘭西人はこの家の歓迎されない不意の訪問客であったに違いない。
日蔭の街
(新字新仮名)
/
松本泰
(著)
私は「うむ!」と、唯一口、
首肯
(
うなず
)
くのやら、
頭振
(
かぶり
)
を
掉
(
ふ
)
るのやら自分でも分らないように言った。
別れたる妻に送る手紙
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
彼は感心したように
首肯
(
うなず
)
いて警部の話を聞いていたが、だん/\と、この男がやはり、自分のことをもその鉄の鎖で縛った気で居るのではないか知らという気がされて来て
子をつれて
(新字新仮名)
/
葛西善蔵
(著)
デその途中私は
独
(
ひと
)
り
首肯
(
うなず
)
き、この下駄と傘が又役に立つ、駕籠に
乗
(
のっ
)
たって何も後に残るものはない、こんな処が
慎
(
つつし
)
むべきことだと
思
(
おもっ
)
たことがあります、マアその
位
(
くらい
)
に注意して居たから
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
伯爵は
首肯
(
うなず
)
いた。またしても少年は勝った。判事はますます感心してしまった。
奇巌城:アルセーヌ・ルパン
(新字新仮名)
/
モーリス・ルブラン
(著)
下見用の特等券が羽根の生えたように売れたのも、さこそと
首肯
(
うなず
)
けるのである。
魔都
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
アリスは、
月経
(
げっけい
)
の数日前には、何日もこの程度の軽い頭痛に襲われるのが常だったので、そのことを話すと、ビリング医師も
首肯
(
うなず
)
いて、なにか簡単な
鎮痛剤
(
ちんつうざい
)
のような物をくれて、診察を終った。
浴槽の花嫁
(新字新仮名)
/
牧逸馬
(著)
真に
首肯
(
うなず
)
きたもうお方の果して幾人を数え得ることやら、実は少々心細き限りではあるが、こうでもない、ああでもないの食道楽の末、いよいよという時が来たら山谷にここの板前を吟味したまえ。
残されたる江戸
(新字新仮名)
/
柴田流星
(著)
弱気
(
よわき
)
で、人間と自然とを愛せずにいられなかったドヴォルシャークは、「新世界交響曲」その他の作曲において、「人類の原始生活へのあこがれ」を描いたものとしても
首肯
(
うなず
)
けるものがあると思う。
楽聖物語
(新字新仮名)
/
野村胡堂
、
野村あらえびす
(著)
一番
上手
(
かみて
)
の分を右手に提げて重みを試み、次に一番
下手
(
しもて
)
の分を試み、終に下手より二番目の首の入りし分を提げて見て
首肯
(
うなず
)
き、そのまま提げて花道附際まで来て、左の脇に抱へ、右の手にて桶を押へ
いがみの権太:(明治二十九年一月、明治座)
(新字旧仮名)
/
三木竹二
(著)
冬子はただ
首肯
(
うなず
)
いて見せた。自分を道具に見ている老獪で卑しい市長を悲しく思わぬでもなかった。が、わけを聴いてみれば「自分の今の境遇と今の世間」では、
寧
(
むし
)
ろ「光栄」であるのかも知れない。
地上:地に潜むもの
(新字新仮名)
/
島田清次郎
(著)
彼女は黙って
首肯
(
うなず
)
いた。しばらくすると大きな溜息を
吐
(
つ
)
いて
青い風呂敷包
(新字新仮名)
/
大倉燁子
(著)
岡本はただ、
黙言
(
だまっ
)
て
首肯
(
うなず
)
いたばかりであった。
牛肉と馬鈴薯
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
黙った花ちゃんは
首肯
(
うなず
)
いたのである。
百合の花
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
「うむ。」藤吉は
首肯
(
うなず
)
いて初太郎へ
釘抜藤吉捕物覚書:13 宙に浮く屍骸
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
私はただ
首肯
(
うなず
)
いて見せた。
幼年時代
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
「そうか。そうか。」青扇は、せかせかした調子でなんども
首肯
(
うなず
)
きながら、眉をひそめ、何か遠いものを見ているようであった。
彼は昔の彼ならず
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
柳 (渋々ながら
首肯
(
うなず
)
く。)まったくこんな人を相手にしているのは暇潰しだ。まあ、仕方がないから、私ひとりで仕事に出ましょうよ。
青蛙神
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
満足げに
首肯
(
うなず
)
き首肯き小高い土盛りの中央に月の光を背にして立った。今一度、勢よく軍刀の
欛
(
つか
)
を背後に押しやって
咳一咳
(
がいいちがい
)
した。
戦場
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
周平は機械的に
首肯
(
うなず
)
いた。どうしようという意志もなければ、どうしていいかも分らなかった。また、それを考えもしなかった。
反抗
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
それが間接ながらやはり今度の結婚問題に関係しているので、お延は叔母の手前
殊勝
(
しゅしょう
)
らしい顔をしてなるほどと
首肯
(
うなず
)
かなければならなかった。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
例えば田舎の駅から都会のプラットホームへ
這入
(
はい
)
り、盛装した女などを見かけ、やっぱり綺麗だね、と何気なく機関助士が
呟
(
つぶや
)
くと、佐川二等兵は一応は
首肯
(
うなず
)
いても
指導物語:或る国鉄機関士の述懐
(新字新仮名)
/
上田広
(著)
中禅寺湖畔では秋が未だ
闌
(
たけなわ
)
でないのに、尾瀬沼では既に冬の領となっている訳が成程と
首肯
(
うなず
)
かれる。
尾瀬雑談
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
それゆえ文部省から贈られた教員免許状でも七、八科程も持っていられた。かく氏の各方面に学問の深いことは高知に於て県立病院の薬局長を兼任していられた一事でも
首肯
(
うなず
)
かれる。
植物記
(新字新仮名)
/
牧野富太郎
(著)
好
(
よ
)
し
他
(
た
)
の人にはさも答えよ、妾は磯山が
股肱
(
ここう
)
の者なり、この家に磯山のあるを知り、急用ありて来れるものを、磯山にして妾と知らば、必ず
匿
(
かく
)
れざるべしと
重
(
かさ
)
ねて述べしに、女将
首肯
(
うなず
)
きて
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
兼太郎は唯
首肯
(
うなず
)
くばかり、いよいよ嬉しくて返事も出来ず涙ぐんだ目にじっとお照の様子を
見詰
(
みつめ
)
るばかりである。お照が二合罎を銅壺の中に入れる手付きにはどうやら扱い
馴
(
な
)
れた処が見えた。
雪解
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
ほとんど蘇生った心持でたゞうんと
首肯
(
うなず
)
いた。
油地獄
(新字新仮名)
/
斎藤緑雨
(著)
軽く
首肯
(
うなず
)
きながら言った。
別れたる妻に送る手紙
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
「うん」と勇は
首肯
(
うなず
)
く。
百合の花
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
セリヌンティウスは、すべてを察した様子で
首肯
(
うなず
)
き、刑場一ぱいに鳴り響くほど音高くメロスの右頬を殴った。殴ってから優しく
微笑
(
ほほえ
)
み
走れメロス
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
福太郎はその時にちょっと
首肯
(
うなず
)
きたいような気持になった。しかし依然として全身が硬直しているために、
瞬
(
またたき
)
一つ出来なかった。
斜坑
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
一日や二日の断食は
此母子
(
このおやこ
)
に珍しくもないらしい。お杉は
唯
(
ただ
)
首肯
(
うなず
)
いて
其処
(
そこ
)
に坐ったが、
俄
(
にわか
)
に思い出したように少しく
詞
(
ことば
)
を改めた。
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
首
常用漢字
小2
部首:⾸
9画
肯
常用漢字
中学
部首:⾁
8画
“首肯”で始まる語句
首肯点頭