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雜草
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ざつさう
覗くと、
山の
根を
境にした
廣々とした
庭らしいのが、
一面の
雜草で、
遠くに
小さく、
壞れた
四阿らしいものの
屋根が
見える。
さうして
又食料を
求める
爲に
勞力を
他に
割くことによつて、
作物の
畦間を
耕すことも
雜草を
除くことも一
切が
手後れに
成る。
町立病院の
庭の
内、
牛蒡、
蕁草、
野麻などの
簇り
茂つてる
邊に、
小やかなる
別室の一
棟がある。
屋根のブリキ
板は
錆びて、
烟突は
半破れ、
玄關の
階段は
紛堊が
剥がれて、
朽ちて、
雜草さへのび/\と。
此の
時凡ての
樹木やそれから
冬季の
間にはぐつたりと
地に
附いて
居た
凡ての
雜草が
爪立して
只空へ/\と
暖かな
光を
求めて
止まぬ。
土がそれを
凝然と
曳きとめて
放さない。
兩方のふちを
挾んで、
雜草を
植込んだのが、やがて、
蚊帳つり
草になり、
露草になり、
紅蓼になつて、
夏のはじめから、
朝露、
夕露、……
夜は
姿が
隱れても、
月に
俤の
色を
宿して、
蟲の
聲さへ
季節が
暑くなれば
雨があつて三
日も
見ないうちには
雜草は
驚くべき
迅速な
發育を
遂げる。それが
著しく
作物の
勢力を
阻害する。それだけ
收穫の
減少を
來さねばならぬ
筈である。