里芋さといも)” の例文
それを割ると蕎麦粉そばこの香と共に、ホクホクするような白い里芋さといもの子があらわれる。大根おろしはこれを食うになくてならないものだ。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
だいこんでも里芋さといもでもねぎでも、りたてのものばかりしか食べていませんが、この採りたてのものは、質が違うと思われるほど美味うまいものです。
日本料理の基礎観念 (新字新仮名) / 北大路魯山人(著)
むぎ一箱、いゑのいも(里芋さといも)一かご、うり一籠、はたもの、六月三日に給ひ候ひしを、今迄御返事申候はざりし事恐入おそれいりさふらふ
めづらしききやく馳走ちそう出來できねど好物かうぶつ今川燒いまがはやき里芋さといもころがしなど、澤山たくさんたべろよと言葉ことばうれし、苦勞くらうはかけまじとおもへど大晦日おほみそかせまりたるいゑ難義なんぎ
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
牛蒡ごぼうはす里芋さといもの煮つけの大皿あり、屠蘇とそはなけれど配給のなおし酒は甘く子供よろこびてなめる。
海野十三敗戦日記 (新字新仮名) / 海野十三(著)
本陣が玉菜たまな里芋さといもとしめじをもってきた。うまそうな葉を十重二十重とえはたえにかさねた玉菜と、毛むくじゃらの里芋と、まだほけない面白い形の茸が笊のなかで転り合っている。本陣は
島守 (新字新仮名) / 中勘助(著)
「可哀そうに……」と万吉、思いだしたように皿に残っていた里芋さといもはしに刺して
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
生々いきいきとして居た甘藷の蔓は、唯一夜に正しく湯煎うでられた様にしおれて、明くる日は最早真黒になり、さわればぼろ/\のこなになる。シャンとして居た里芋さといもくきも、ぐっちゃりと腐った様になる。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
里芋さといも 八一・二〇 二・〇〇 〇・二〇 一五・一〇 〇・七〇 〇・八〇
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
余の浩さんにおけるもその通り。浩さんはどこへ出しても平生の浩さんらしくなければ気が済まん。擂鉢すりばちの中にき廻される里芋さといものごとく紛然雑然とゴロゴロしていてはどうしても浩さんらしくない。
趣味の遺伝 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
蕎麥そば里芋さといもをまぜてつくつたその燒餅やきもちげたところへ大根だいこんおろしをつけて焚火たきびにあたりながらホク/\べるのは、どんなにおいしいでせう。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
里芋さといもでいっても、ゴリゴリした芋だったら、どんな煮方にかたをしたって、料理人の手に負い切れないのです。
日本料理の基礎観念 (新字新仮名) / 北大路魯山人(著)
仁左衛門さんとこ大欅おおけやきが春の空をでて淡褐色たんかっしょくに煙りそめる。雑木林のならが逸早く、くぬぎはやゝ晩れて、芽をきそめる。貯蔵かこい里芋さといもも芽を吐くので、里芋を植えねばならぬ。月の終は、若葉わかば盛季さかりだ。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
膝の上の目笊めざるから里芋さといもがころがった。
旗岡巡査 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
里芋さといも煮方にかた 春 第二十二 芋章魚いもだこ
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
その時、勝重の母親が昼食のぜんをそこへ運んで来た。莢豌豆さやえんどうふき里芋さといもなぞの田舎風いなかふうな手料理が旧家のものらしいうつわに盛られて、半蔵らの前に並んだ。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
その蕎麥そばにほひのするきたてのおもちなかからおほきな里芋さといもなぞがしろときは、どんなにうれしいでせう。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
おふきはその里芋さといもの子の白くあらわれたやつを温め直して、大根おろしを添えて、新夫婦に食べさせた。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
蕎麦粉そばこ里芋さといもの子で造る芋焼餅いもやきもちなぞを数えて見せるのも、この婆さんであるから。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
かきくり葡萄ぶどう枝豆えだまめ里芋さといもなぞと共に、大いさ三寸ぐらいの大団子おおだんご三方さんぼうに盛り、尾花おばな女郎花おみなえしたぐいを生けて、そして一夕を共に送ろうとするこんな風雅な席に招かれながら、どうして彼は滑稽こっけい
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)