こおり)” の例文
この人間ども、叩ッ斬ったる者は江州阪田のこおり番場ばんばの生れ忠太郎。(繰返していいつつ、書かせて貰い、次第にほろりとなり、落涙する)
瞼の母 (新字新仮名) / 長谷川伸(著)
大岡越前守の手の紀州調べの使つかいとして、同心平田三五郎ひらたさんごろうほか一人の者が、平沢村へきた。そして、第一番に、こおり奉行の所へくると
大岡越前の独立 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
上から見下ろすからでもあろうが、どの家もみんな、地平じべたに食い付いているように見えた。信州伊那のこおり川路の郷なのである。
鸚鵡蔵代首伝説 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
伝馬てんまで旅をするなんて洒落しゃれたことは、これが初めてでしょう。まして行先は、名にし負う美濃の国、不破ふわこおり、関ヶ原——
大菩薩峠:33 不破の関の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
遅ればせに馬で駈けつけてきた加東郡のこおり奉行吉田忠左衛門が、汗まみれな額にほこりをつけたまま、用部屋の入口に姿を見せ
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
根井ねのいの小弥太、滋野行親始め、上野国からは田子たごこおりの兵などがはせ集って、義仲の謀叛に参加する事を約束した。
御身おみたちもよく覚えて、お社近やしろぢか村里むらざとの、嫁、嬶々かか、娘の見せしめにもし、かつはこおりへも町へも触れい。布気田ふげた
多神教 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ここは出羽でわの国最上もがみこおりから、牡鹿おがの郡へぬける裏山道のうち、もっともけわしいといわれるやぐら峠である。
峠の手毬唄 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「奥州名取のこおりに入りて中将実方の塚はいづくにやと尋ねはべれば、道より一里半ばかり左の方笠島といふ処にありと教ふ。降り続きたる五月雨さみだれいとわりなく打過ぐるに。」
俳句はかく解しかく味う (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
弟子でしどもに言い、明石の邸宅を寺にし、近くの領地は寺領に付けて以前から播磨はりまの奥のこおりに人も通いがたい深い山のある所を選定して、最後のこもり場所としてあったものの
源氏物語:34 若菜(上) (新字新仮名) / 紫式部(著)
時に竹内柳右衛門というこおり奉行があって、大いにその撲滅に苦心し、種々工夫の末、新令を発して、全く賭博の禁を解き、ただ負けた者から訴え出た時には、相手方を呼出して対審の上
法窓夜話:02 法窓夜話 (新字新仮名) / 穂積陳重(著)
御老中は勿論将軍家も年に二度ぐらいはおなりになるという定例じょうれいでございます、すなわち正面の高座敷たかざしきが将軍家の御座所でございまして、御老中、若年寄わかどしより、寺社奉行、大目附おおめつけ御勘定ごかんじょう奉行、こおり奉行
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
北豊島のこおりといへば、何となう『江戸名所図会』などみる心地して昔めかしく、寒梅、寒菊、福寿草その他春待つ花樹をひさぐ植木屋のいと多きも、寂しきこのごろの我がこゝろには、いたく和みぬ
滝野川貧寒 (新字旧仮名) / 正岡容(著)
吉備きびくに賀夜かやこおり庭妹にいせさとに、井沢庄太夫という人がいた。
真先まっさきに、布、紙を弁えずひるがえした、旗のおもてに、何と、武州、こおりの名、村の名、人の名——(ともにはばかると註してある)——歴々ありありと記したるが矢よりも早く飛過ぐる。
雪柳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
こおり玄一郎はちょっとあたりを見まわしたが、向うに昌光寺の塔があるのをみつけてそっちへ急いだ。
山だち問答 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
笠島のこおりに入ると、実方さねかた中将の遺跡、道祖神の祠をたずねなければ、奥州路の手形が不渡りになる。
大菩薩峠:34 白雲の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「あの婦人おんなが——いや、あの婦人の歌が、秩父行きの原因でな。……秩父のこおり小川村逸見様庭の桧の根、昔は在ったということじゃ。——と云うあの婦人のうたう歌が」
剣侠 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
籠彦 かよう土足裾取どそくすそとりましてご挨拶失礼さんでござんすがご免なさんせ、向いましてうえさんとこんど初めてのお目通りでござんす、自分は総州葛飾のこおり柴崎は波一里儀十若い者
一本刀土俵入 二幕五場 (新字新仮名) / 長谷川伸(著)
外に証拠を求める必要はない、この寺建立の願主天武天皇いまだ東宮であらせられる時、大友皇子に襲われて芳野よしのから大和国宇多うだこおりを通られた際の兵、わずかに十七騎であった。
任地の話などをしだすので、湯のこおりの温泉話も聞きたい気はあったが、何ゆえとなしにこの人を見るときまりが悪くなって、源氏の心に浮かんでくることは数々の罪の思い出であった。
源氏物語:04 夕顔 (新字新仮名) / 紫式部(著)
庄屋は、不意ふいこおり奉行の訪問に、心臓をしめつけられながら、炉べりで平伏した。
大岡越前の独立 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
信州諏訪のこおり高島の城下(今日の上諏訪町)そこへ一行がついたのは、三月上旬のことであった。
血煙天明陣 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
信濃の国は安曇あずみこおりの山また山——雪におおわれた番所ヶ原を、たったひとりで踏み越えて白骨谷に行くと広言した弁信法師、ふと或る地点で足を踏みとどめてしまいました。
大菩薩峠:29 年魚市の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
従って——こおり多津吉も、これに不意を打たれたのだと、さぞ一驚をきっしたであろうと思う。
「はっ、村役人、庄屋、近くの者共、こおり奉行所へもまいりまして御座りまする」
大岡越前の独立 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
功兵衛は二十一歳のとき、斧島嘉助おのしまかすけの娘さくらと結婚した。そのときの仲人なこうどは矢沢金右衛門、さくらは十八歳であった。斧島は三十石あまりの馬廻りであり、矢沢はこおり奉行職付き記録方を勤めていた。
醜聞 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
嘉伝次 村、こおりのためじゃ、是非がない。これ、はい、気の毒なものじゃわい。
夜叉ヶ池 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ここは信州諏訪のこおり、神宮寺村に神寂かんさび立つ日本第一大軍神、建御名方命たけみなかたのみことまつった社、諏訪明神の境内けいだいで、秋とは云っても杉やひのき常磐木ときわぎの葉に蔽われて、昼なお暗い四方あたりの様子に旅人と見えて三
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「下総の国、印旛いんばこおり、成田山ではお手長お手長」
大菩薩峠:41 椰子林の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「姓はこおりです……職人近常の。……私はそのせがれの多津吉というんだよ。」
信州諏訪のこおり高島の城下は、祭礼のように賑わっていた。
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
ふもと連下つれくだつた木樵が、やがて庄屋しょうやに通じ、陣屋に知らせ、こおりの医師を呼ぶ騒ぎ。精神にも身体からだにも、見事異状がない。——鹿児島まで、及ぶべきやうもないから、江戸の薩摩屋敷まで送り届けた。
妖魔の辻占 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
それと申すも諏訪のこおりの諏訪明神の境内で危ういところを
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
〽秩父のこおり、小川村
剣侠 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
〽秩父のこおり
剣侠 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)