みんな)” の例文
「さうねえ、だけれどみんながあの人を目のかたきにして乱暴するので気の毒だつたわ。隣合つてゐたもんだから私までひどい目にあはされてよ」
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
下宿ではみんなが寝静まっていた。長い廊下を伝うて、自分の部屋へ入ると、戸を閉めきった室内には、まだ晩方の余熱ほとぼりが籠っていた。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
思ふ事は何でも言ふといつた樣な淡白きさくな質で、時々間違つた事を喋つてはみんなに笑はれて、ケロリとしてゐる兒であつた。
札幌 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
弱虫だ弱虫だってみんなが云うけれど、おいらだって男の児だもの、いじめられてばかりいたかあ無いや。
雁坂越 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
なんでも耶路撒冷イエルサレムとほところだ、さうしてしゆきみは、われわれのごとくそばにお出遊いであそばすのだ。みんな耶路撒冷イエルサレムまでかれまい。耶路撒冷イエルサレムみんなのとこへるだらう。丁度ちやうど自分じぶんにもるやうに。
みんな見ろ、ひげから取ったこの百円を、若様が大勢に分けてやるとおっしゃる。」
金時計 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「何様功徳があるか知らないけど、みんながお参詣なさるんですの。」
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
盃をする間際まぎわに、近所の飲み屋で酒をあおっていたのも、みんな揶揄からかっていたように、きまりの悪いせいばかりとも思えなかった。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
思ふ事は何でも言ふといつた様な淡白きさくたちで、時々間違つた事を喋つてはみんなに笑はれて、ケロリとしてゐる児であつた。
札幌 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
それはそれに違無いのだけれど、みんなみんなそんな了簡りようけんを起して御覧な、世界中御寺ばかりになつてしまふ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
おそれあたりて、わがにくあらたなるべし。」みんなあとから、かみあかい、血色けつしよく一人ひとりとほる。こいつにけていたのだから、きふ飛付とびついてやつた。この気味きみわるで、そのくちおさへた。
鉱蔵 世迷言よまいごと饒舌しゃべるな二才。村は今既にひでりの焔に焼けておる。それがために雨乞するのじゃ。やあみんな、手ぬるい、遣れ遣れ。(いずれも猶予するを見て)らちかんな、伝吉ども来い。(とわめく。)
夜叉ヶ池 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
みんなツて何様人さ。」
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
「そうですかね」お島は白々しいような返辞をして、「でもいじゃありませんか。お秀さんは好い身分だって、みんながそう言っていますよ」
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
荒尾が又決してしやべる男ぢやない。それがどうして知れたのか、みんなが知つてゐて……僕は実に驚いた。四方八方から祝盃しゆくはいだ祝盃だと、十も二十も一度に猪口ちよくを差されたのだ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
入院中も時々来て見舞ってくれた。その子供は見て来た芝居の真似をしてみんなを笑わせるほど、ませて来た。お庄は子を膝に抱いてくるまに乗った。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
「病気が癒ったら、床あげに弁松べんまつからおいしいものをたくさん取って、食べましょうね。」患者は思い出したように言い出して、みんなを笑わせた。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
お島はそう言って、この商売をはじめた自分の行立ゆきたてを話して、みんなを面白がらせながら、二時間も話しこんでいた。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
懸離れた奥座敷に延べられた臥床ふしどにつくのであったが、花がはじまると、ぴちんぴちんと云う札の響が、みんなの寝静った静な屋内やうちに、いつまでも聞えていた。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
部屋が決められる間、みんなは子供を囲んで暗い廊下に立っていた。子供は火がつくようにまた便通を訴えた。勝手のわからない人たちは、そこらをまごまごした。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
「もう少しの辛抱ですよ。辛抱していさえすれば、今に歩行あんよもできるし、坊やの好きな西洋料理も食べられるし、みんなで浅草へでもどこへでも行きましょうね。」
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
お増の顔色を見て、浅井の側を離れて行ったお今は、みんなと一緒にそれに聴き入っていたが、甲高かんだかうたの声や三味線の音に、寂しい心が一層掻き乱されるだけであった。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
みんなは、宵のうちに下の座敷に集まって、このごろ取り寄せた蓄音器などに、笑い興じていた。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
お作はとにかくにみんな意嚮いこうがそうであるらしく思われた。
新世帯 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
小林はそう言いながら、みんなに送り出されて出て行った。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)