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落魄
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おちぶ
ふりがな文庫
“
落魄
(
おちぶ
)” の例文
源も
万更
(
まんざら
)
憐
(
あわれ
)
みを知らん男でもない。いや、大知りで、随分
落魄
(
おちぶ
)
れた友人を助けたことも有るし、難渋した旅人に恵んでやった例もある。
藁草履
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
ああまで人間も
落魄
(
おちぶ
)
れるものかと思う。金銭の貧富ではない、心の落魄れようである。何か、涙が
睫毛
(
まつげ
)
につきあげて来てならなかった。
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「俺の身元は
巷
(
ちまた
)
のベッガーでね、」すると賢夫人も気さくに笑って「えゝ/\また
落魄
(
おちぶ
)
れたらいつでも二人でお
菰
(
こも
)
を着て門に立ちますよ」
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
壱岐殿坂の中途を左へ
真砂町
(
まさごちょう
)
へ上るダラダラ坂を登り切った左側の路次裏の何とかいう下宿へ移ってから緑雨は
俄
(
にわか
)
に
落魄
(
おちぶ
)
れた。
斎藤緑雨
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
勝四郎
熟
(
つらつら
)
思ふに、かく
落魄
(
おちぶ
)
れてなす事もなき身の何をたのみとて遠き国に
逗
(
とど
)
まり、
六八
由縁
(
ゆゑ
)
なき人の
恵
(
めぐみ
)
をうけて、いつまで生くべき命なるぞ。
雨月物語:02 現代語訳 雨月物語
(新字新仮名)
/
上田秋成
(著)
▼ もっと見る
下
(
さ
)
げての
詫
(
わび
)
ごと
何
(
なん
)
としてするべきならずよしや
膝
(
ひざ
)
を
屈
(
ま
)
げればとて
我親
(
わがおや
)
決
(
けつ
)
して
肯
(
きゝい
)
れはなすまじく
乞食
(
こつじき
)
非人
(
ひにん
)
と
落魄
(
おちぶ
)
るとも
新田如
(
につたごと
)
きに
此口
(
このくち
)
腐
(
くさ
)
れても
助
(
たす
)
けを
別れ霜
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
「老人の首」というのは、此処へ乞食のようにして造花を売りに来る爺さんの顔が大変いいので、段々
訊
(
き
)
いてみると昔の旗本が
落魄
(
おちぶ
)
れたのであった。
回想録
(新字新仮名)
/
高村光太郎
(著)
その幼時のあまい記憶が大きくなつて
落魄
(
おちぶ
)
れた私に
蘇
(
よみがへ
)
つて來る
故
(
せゐ
)
だらうか、全くあの味には幽かな
爽
(
さはや
)
かな何となく詩美と云つたやうな味覺が漂つてゐる。
檸檬
(旧字旧仮名)
/
梶井基次郎
(著)
「ところで、あの足音だ、——
後金
(
あとがね
)
の
緩
(
ゆる
)
んだ
雪駄
(
せつた
)
を引摺り加減に歩くところは、女や武家や職人ぢやねえ、
落魄
(
おちぶ
)
れた能役者でなきア先づ思案に餘つたお
店者
(
たなもの
)
だ」
銭形平次捕物控:038 一枚の文銭
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
どんなに
落魄
(
おちぶ
)
れても、盗人だけはしずに来たが、今夜という今夜あどたん場だ。ええ! どうなるものか。
お美津簪
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
「どうして、あなた様ほどのお方が、これほどまでに
落魄
(
おちぶ
)
れあそばしたのでございましょう」
大菩薩峠:18 安房の国の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
落魄
(
おちぶ
)
れた華族のお姫様じゃと言うのもあれば、分散した
大所
(
おおどこ
)
の
娘御
(
むすめご
)
だと申すのもあります。
春昼
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
私の隣りの部屋には四十を少し越したばかりの関西生れの
落魄
(
おちぶ
)
れた相場師が住んでいたが、その次ぎの室——それは奥の暗い物置に続いていた——には六十近い一人の老人が住んでいた。
運命について
(新字新仮名)
/
尾崎士郎
(著)
落魄
(
おちぶ
)
れても白い物を顔へは塗りませぬとポンと突き退け二の矢を継がんとするお霜を
尻目
(
しりめ
)
にかけて俊雄はそこを立ち出で供待ちに
欠伸
(
あくび
)
にもまた節奏ありと研究中の金太を先へ帰らせおのれは顔を
かくれんぼ
(新字新仮名)
/
斎藤緑雨
(著)
ブルゴスで料理屋の給仕人として働いたこともあれば、ヴァリヤドリード付近の村で小学校の教師を勤めたこともあり、一時はアルマデンで墓地の掃除人にまで
落魄
(
おちぶ
)
れたこともあったらしい様子です。
陰獣トリステサ
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
おい、
介
(
すけ
)
、
公卿
(
くげ
)
奉公もよいが、
選
(
よ
)
りに選ってお牛場の
落魄
(
おちぶ
)
れ
藤家
(
とうけ
)
などへ、なんで、物好きに住みこんだのだ。おれの主人の
邸
(
やしき
)
へ来い、
厩
(
うまや
)
掃除を
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「ところで、あの足音だ、——
後金
(
あとがね
)
の緩んだ
雪駄
(
せった
)
を引摺り加減に歩くところは、女や武家や職人じゃねえ、
落魄
(
おちぶ
)
れた能役者でなきゃアまず思案に余ったお
店者
(
たなもの
)
だ」
銭形平次捕物控:038 一枚の文銭
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
作意で
略
(
ほぼ
)
その人となりも知れよう、うまれは
向嶋小梅
(
むこうじまこうめ
)
業平橋
(
なりひらばし
)
辺の
家持
(
いえもち
)
の若旦那が、心がらとて俳三昧に
落魄
(
おちぶ
)
れて、牛込山吹町の割長屋、薄暗く戸を
鎖
(
とざ
)
し、夜なか洋燈をつける
処
(
どころ
)
か
遺稿:02 遺稿
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
このお
住居
(
すまい
)
とても、決して三千石の殿様の御別荘とは受取れない。ほんの仮小屋のようなものとしかお見受け申すことはできない。僅かの間に、どうしてこうも
落魄
(
おちぶ
)
れなさったのだろう。
大菩薩峠:18 安房の国の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
あ、あ、身にしみ/″\と染み入る、この平野と川のなつかしさよ。先生の言葉は
伊達
(
だて
)
ではなかった。ひょっとかしたらわたくしはこのまゝ
落魄
(
おちぶ
)
れて、川のほとりに乞食女となってしまおうかしらん。
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
そんな
落魄
(
おちぶ
)
れた
恰好
(
かっこう
)
を見せたら、お嬢さんはきっとまた
初午試合討ち
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
「この馬鹿、貴さまは一体、
幾歳
(
いくつ
)
になるのか。こんなにまで、世の中から落伍して、
落魄
(
おちぶ
)
れ果てた目をみながら、まだ
醒
(
さ
)
めないのか、
性
(
しょう
)
なしめ」
宮本武蔵:04 火の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
お冬は武家の出で、本所に
落魄
(
おちぶ
)
れた旗本か、ごけにんの血を引いている。
雪柳
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
僻
(
ひが
)
んで取れば、この巡礼の返答ぶりも
癪
(
しゃく
)
にさわる。おれの
今日
(
こんにち
)
の運命は自ら求めたもので、おれは
落魄
(
おちぶ
)
れても
気儘
(
きまま
)
の道を歩いているのだ、まだ神仏におすがり申して
後生
(
ごしょう
)
願うような心は起さぬ。
大菩薩峠:03 壬生と島原の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
落魄
(
おちぶ
)
れた館へ帰って行った
富士
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
佐渡は
怪訝
(
いぶか
)
ったが、まったく大坂城からの
貢
(
みつ
)
ぎがないとすれば、
落魄
(
おちぶ
)
れた大名の末路はこうもあろうかと思わぬでもない。
宮本武蔵:08 円明の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
こうして
落魄
(
おちぶ
)
れておいでなさることも夢のようだし、その殿様と自分が、こうして膝つき合わせて友達気取りでお話をしているのも疑えば際限がないし、美しい男に化けるのが上手だという三吉狐が
大菩薩峠:18 安房の国の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
「まったく経験がないんです、勤人なんてものは、
落魄
(
おちぶ
)
れると実に困りものだなあ。なかなか二度とは
雇口
(
くち
)
がないし、家族はみんなあんなだし……」
かんかん虫は唄う
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
……
良人
(
たく
)
は、
落魄
(
おちぶ
)
れてこそいますけれど、決して、
他人
(
ひと
)
様の物を盗むなんて、そんな大それた人間じゃないとお
巡査
(
まわり
)
さんにも私から言いましたけれど
かんかん虫は唄う
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
それが、武家同士の興亡となり、武家政治となり、今の平家の全盛になってからは「
落魄
(
おちぶ
)
れ
藤家
(
とうけ
)
」と
嘲
(
あざ
)
けられて、面影もない存在になってしまった。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「紀州の本山にいた頃の友だちなので、いやな顔もできぬが、ひとの顔さえ見れば無心、浪人しても心までああ
落魄
(
おちぶ
)
れてはさむらいの仕舞いじゃなあ」
梅里先生行状記
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
命じられて、おれの隊に
伴
(
ともな
)
って来た男がある。……これも、名家の子だが、いちど
落魄
(
おちぶ
)
れて出直した男だから、少々、骨ぐみができておる。会ってみるか
新書太閤記:03 第三分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「平家といえば、平家の
端
(
はし
)
くれでも嫁に来てがあるが、
落魄
(
おちぶ
)
れ藤家の、それも、御所の書記などの小役人へは、今の
女性
(
おんな
)
は、嫁にも来ないからなあ」と
喞
(
かこ
)
った。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
したがおん身達は、
落魄
(
おちぶ
)
れてこそおれ、新免伊賀守様の旧臣、藩士の上に坐りなされたお人達じゃ。
宮本武蔵:08 円明の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「下手人は辻風
典馬
(
てんま
)
だと、世間であんなにいっているのが、おまえの耳には聞えないのか。いくら野武士の後家でも、亭主のかたきの世話になるほど、心まで
落魄
(
おちぶ
)
れてはいない」
宮本武蔵:02 地の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「では、
落魄
(
おちぶ
)
れ果てて、今浜のあたりで、何か貧しい
生業
(
なりわい
)
でもしておりましたか」
新書太閤記:04 第四分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
とはいえ、今は亡びたりといえ、旧主新免家の
代々
(
よよ
)
の御恩も、忘却してはならぬ。——なおなお、われらこの地に流浪の日には、
落魄
(
おちぶ
)
れ果てていたことをも、
喉元
(
のどもと
)
すぎて、忘れては身に済まぬ。
宮本武蔵:08 円明の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
討伐した土地の所領は、すべて将軍
義昭
(
よしあき
)
に返した。すこしも私しなかった。特に——
落魄
(
おちぶ
)
れた義昭に
従
(
つ
)
いて、多年、節義を曲げなかった旧臣たちへは——その配分を重くしてやるように計らった。
新書太閤記:03 第三分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「めっそうもない。てまえは、しがない
落魄
(
おちぶ
)
れ
商人
(
あきゅうど
)
、棒術などは」
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
“落魄”の意味
《名詞》
落ちぶれること。零落
(出典:Wiktionary)
落
常用漢字
小3
部首:⾋
12画
魄
漢検1級
部首:⿁
15画
“落魄”で始まる語句
落魄居
落魄公卿
落魄流寓