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いとぐち
ふりがな文庫
“
緒口
(
いとぐち
)” の例文
この
緒口
(
いとぐち
)
に、お仙の話を匂わせてみようかと、治郎吉は、次のことばを喉まで出しかけたが、やっぱり、人がいては、まずい気がした。
治郎吉格子
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
話の
緒口
(
いとぐち
)
だけでも聞くと母は真っ蒼になって怒りに慄えました。「止して下さい、貧乏くたい話は」それで流石の父も口を
噤
(
つぐ
)
みました。
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
磯五郎はあんなに金に困つて居るから、三日前に手に入れた三十兩を
費
(
つか
)
はずに居る筈はないと思つたのがそも/\疑ひの
緒口
(
いとぐち
)
だつたよ。
銭形平次捕物控:171 偽八五郎
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
「火事だ?」と口々に尋ねたが、これは
事件
(
ことがら
)
の
緒口
(
いとぐち
)
を引出そうとするに過ぎない、皆々は云うまでもなく、その間の消息を解していた。
三枚続
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
それを
見惚
(
みと
)
れて、砂塵の風のなかで立つて居る子供の彼自身が、彼の頭にはつきりと浮んで来た。それが思ひ出の
緒口
(
いとぐち
)
になつた。
田園の憂欝:或は病める薔薇
(新字旧仮名)
/
佐藤春夫
(著)
▼ もっと見る
この二つが自ら事件を暴く
緒口
(
いとぐち
)
を作ったようなもんだからなあ——
諺
(
ことわざ
)
に云わずや、それ、過ぎたるは及ばざるに
如
(
し
)
かず、とね、あははははは
亡霊ホテル
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
これだけの
緒口
(
いとぐち
)
を考えつくと僕は、急に愉快になって寝台から飛び降りた。僕の頭は梅雨期を過ぎて初夏の
陽
(
ひ
)
が輝いたかのように
爽々
(
すがすが
)
しくなった。
吊籠と月光と
(新字新仮名)
/
牧野信一
(著)
ほんとにおかしな人達やわ、と芸者は話の
緒口
(
いとぐち
)
を見つけたように、あんな変な人達と色んな話をするなんて骨が折れますな、と取りなし顔に云った。
糞尿譚
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
途中で話の
緒口
(
いとぐち
)
を忘れた余は、再びそれを取り上げて、
矢鱈
(
やたら
)
な区切から改めて読み出す勇気を鼓舞しにくかったので、つい
夫限
(
それぎり
)
に
打
(
う
)
ち
遣
(
や
)
ったようなものの
『土』に就て:長塚節著『土』序
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
と、雪之丞は、兄弟子が出世の
緒口
(
いとぐち
)
を、首尾よく掴み得たのを喜ぶというような、
極
(
ご
)
く気軽な挨拶で受けた。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
さすがの
聡明
(
そうめい
)
第一の大師も、酒の量は少かった。其が、今日は幾分いけた、と見えて、話が循環して来た。家持は、一度はぐらかされた
緒口
(
いとぐち
)
に、とりついた気で
死者の書
(新字新仮名)
/
折口信夫
(著)
しかしホセは急に黙り込んでモジモジと中腰で椅子にかけながら、クタクタの帽子を
掌
(
て
)
の中で揉んでいるだけで、なかなか話の
緒口
(
いとぐち
)
を切ろうともしないのであった。
陰獣トリステサ
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
そこで彼はふたたび新井田氏をそっちのけにして、行きづまった計算の
緒口
(
いとぐち
)
をたぐりだしにかかった。
星座
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
プラスであろうとする側のもので
緒口
(
いとぐち
)
がついた人的交渉をも、マイナスのもので潰して結局健全な部分(人間的にも文学的にも)からは全く離脱してしまう道どりは
獄中への手紙:06 一九三九年(昭和十四年)
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
彼は
対手
(
あいて
)
の訪問理由を臆測するのに苦しみながら、無理にも話の
緒口
(
いとぐち
)
を見つけた。
正義
(新字新仮名)
/
浜尾四郎
(著)
そこで
此奴
(
こやつ
)
は疑わしいという話を仕掛けられて花に花が咲いては困る事が起るであろうからと気遣って、私はじきに話の
緒口
(
いとぐち
)
を開きました。それはゲロン・リンボチェの事を言いました。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
自分たちはみんな同じような気持で同じことを考えていて、誰れかが話しの
緒口
(
いとぐち
)
をきるのを待遠しく思っていたかのように見えた。そこへ、この言葉が落ちてきたんだ。勿論それは
反響
(
こだま
)
した。
涸沢の岩小屋のある夜のこと
(新字新仮名)
/
大島亮吉
(著)
「大きな礁じゃ、そう早くもいくまいが、
緒口
(
いとぐち
)
が立てば大丈夫じゃ」
海神に祈る
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
余の心が他の女に移る
緒口
(
いとぐち
)
だと見たのでも有ろう、唯機嫌の好いのは余一人だ、三人三色の心持で、
卓子
(
ていぶる
)
に附いて居ると、松谷秀子は、真に美人で無くては歩み得ぬ
娜々
(
なよなよ
)
とした歩み振りで遣って来た
幽霊塔
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
龍之介は話の
緒口
(
いとぐち
)
をきってみた。
謎の女
(新字新仮名)
/
平林初之輔
(著)
とは、
強
(
し
)
いて訊いてみる気がしなかった。そんな
緒口
(
いとぐち
)
から、佐渡とのあいだに、武蔵の名が話に出ることは、好ましくない。
宮本武蔵:08 円明の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「あなた方内地の女性に向って、ふだん考え
溜
(
た
)
めていたことを、話し出せそうな
緒口
(
いとぐち
)
が見つかったようになって、お
訣
(
わか
)
れするのは惜しいものです」
河明り
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
この馬鹿馬鹿しい幽霊退治が、どんな大事件の
緒口
(
いとぐち
)
になるか、ガラッ八は素より、平次も知る由はなかったのです。
銭形平次捕物控:026 綾吉殺し
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
荷物も無し人もいないのに、吃水はまるで貨物満載の船ほど深くなっているんです、——それが発見の
緒口
(
いとぐち
)
でした。
流血船西へ行く
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
彼女の性質は嫂とは全く反対なので、こう云う場合には大変都合が好かった。いったん
緒口
(
いとぐち
)
さえ見出せば、あとはこっちで水を向ける必要も何もなかった。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
隠居は、それからそれへと、闇太郎から、これまでの、冒険的な生活の、告白を聴きたがって、話の
緒口
(
いとぐち
)
を、
手繰
(
たぐ
)
り続けていたが、ふと、平馬の存在を思い出したように
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
これに色んな
聯想
(
れんそう
)
もつき添うとすれば、奇蹟談の
緒口
(
いとぐち
)
にもなりそうなことである。
山越しの阿弥陀像の画因
(新字新仮名)
/
折口信夫
(著)
私の発展させていくべき仕事の
緒口
(
いとぐち
)
をここに定めておくつもりであり、また私たち兄弟の中に、不幸に遭遇して身動きのできなくなったものができたら、この農場にころがり込むことによって
小作人への告別
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
「暫くの別れは互の希望の門出で、幸福の
緒口
(
いとぐち
)
なのだ。」
喜びと悲しみの熱涙
(新字旧仮名)
/
牧野信一
(著)
こう
呟
(
つぶや
)
いたら、向うでそれを
緒口
(
いとぐち
)
にして、なんとか声をかけて下さりはしまいか——というはかない頼みの
溜息
(
ためいき
)
なのである。
鳴門秘帖:01 上方の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
と彼はここでひと言、ひとりごとをいつた。彼は元通りきちんと
坐
(
すわ
)
つて、考への
緒口
(
いとぐち
)
に前の考への
糸尻
(
いとじり
)
を結びつけた。
上田秋成の晩年
(新字旧仮名)
/
岡本かの子
(著)
東京から釣りに来た客達が寒そうに舟の中で
慄
(
ふる
)
え
乍
(
なが
)
ら沖へ沖へと出て行った。「田沼」を三度書き直した。今度はどうやらうまく
緒口
(
いとぐち
)
をみつけたらしい。
青べか日記:――吾が生活 し・さ
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
これが娘お菊の出世の
緒口
(
いとぐち
)
になって、思いも寄らぬ玉の輿に乗るかも知れないというのは、娘に力を落させないための口実で、実は世間の評判通り、一年の
奉行
(
ほうこう
)
の後
奇談クラブ〔戦後版〕:10 暴君の死
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
自分は三沢との間に
緒口
(
いとぐち
)
のつきかけた談話はこれでまた流れてしまった。二人は彼に導かれて喫煙室に
這入
(
はい
)
った。煙と男子に占領された比較的狭いその
室
(
へや
)
は思ったより
賑
(
にぎや
)
かであった。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
彼も容易に
糾問
(
きゅうもん
)
の
緒口
(
いとぐち
)
を逃がさなかった。御方は新九郎がやや嫉妬めいて、ここまで口を
衝
(
つ
)
いて来たのを、思う壺まで手繰り得たものとして
剣難女難
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
蔭ながら誓ったことも
徒
(
あだ
)
となり、薬も満足に与えられぬ貧苦の中で、衰え果てたままそなたは死んだ、——そして今日になって、出世の
緒口
(
いとぐち
)
、そなた亡き今となって
おもかげ抄
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
これが世にも不思議な事件の
緒口
(
いとぐち
)
にならうとは、もとより平次も八五郎も知る由はありません。
銭形平次捕物控:173 若様の死
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
だから、離れ座敷の娘が私に親しみ
度
(
た
)
い素振りを見せるに気が付いても一向珍らしいことには思わなかった。仕事でも片付いたらゆっくり口が利ける
緒口
(
いとぐち
)
でもつけてやろう。
健康三題
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
いよいよ事始める
緒口
(
いとぐち
)
を開くように事がきまった時は、長い間
抑
(
おさ
)
えられたものが伸びる時の
楽
(
たのしみ
)
よりは、背中に
背負
(
しょわ
)
された義務を片づける時機が来たという意味でまず何よりも
嬉
(
うれ
)
しかった。
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「何かと、お世話でござった。それでは早速、拙者もその奈良井の大蔵とかを、尋ねて参ろう。——お蔭で
微
(
かす
)
かながら、
緒口
(
いとぐち
)
の
解
(
ほぐ
)
れて来た心地がする」
宮本武蔵:06 空の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
会ったらなにか事情がわかりはしないか、精しいことはべつとして
緒口
(
いとぐち
)
だけでも……そう考えて来たのだが、平太夫はなにも云わず、硬い表情でむっと黙ってしまった。
日本婦道記:藪の蔭
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
話は全く豫想外ですが、平次の胸には始めてこの恐ろしい疑問を解く
緒口
(
いとぐち
)
が見付かりました。
銭形平次捕物控:160 二つの刺青
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
葛岡は、胸に溜まっていた誰にも話せない鬱積を漸く吐き出す
緒口
(
いとぐち
)
がついて来たので、とても元気が出たらしく、出た最初の皿をいかにも
美味
(
おい
)
しそうに食べながら話し続けます。
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
もっとも、それには実は、彼を十七歳の頃から知っている或る女に出会ったのが、手がかりの
緒口
(
いとぐち
)
となったのですが
宮本武蔵:05 風の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そしていま笛を吹きながら、かれの胸裡にはすでに、その
緒口
(
いとぐち
)
がひらけかかってさえいた。
新潮記
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
八五郎は
雀躍
(
こをど
)
りしました。秘密の
緒口
(
いとぐち
)
はこゝからほぐれて來さうです。
銭形平次捕物控:128 月の隈
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
彼が迫れば蛇の如く
忌
(
い
)
んで逃げていたお蝶が、自分からここへ来てから真向きに坐る気持は、何としても、唐突で、にわかに言葉の
緒口
(
いとぐち
)
が見つからない。
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
八五郎は
雀躍
(
こおど
)
りしました。秘密の
緒口
(
いとぐち
)
はここからほぐれて来そうです。
銭形平次捕物控:128 月の隈
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
「そろそろ
緒口
(
いとぐち
)
がみつかるぞ!」
幽霊屋敷の殺人
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
話は、こんな
緒口
(
いとぐち
)
から始まったのである。いやむしろ外記がこんな緒口を自分でつくって、自分の話したい本心を
披
(
ひら
)
き出したといったほうが適切かも知れない。
宮本武蔵:06 空の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
緒
常用漢字
中学
部首:⽷
14画
口
常用漢字
小1
部首:⼝
3画
“緒”で始まる語句
緒
緒締
緒方
緒言
緒琴
緒〆
緒合
緒方洪庵
緒方先生
緒書